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「健常者」も「障害者も」参加できる! 車いすレーサー青木拓磨選手が主催する「HDRS」は超手厚いマンツーマン指導だった

障がい者と健常者が一緒に走行をしている、このシーンこそがHDRSが目標とする姿だ

障がい者も健常者も参加して楽しめるHDRS

 2022年8月10日(水)、HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)が千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。このHDRSは、車いすドライバーの青木拓磨選手が理事長を務める「一般社団法人 国際スポーツアビリティ協会」が主催するイベントである。

 元2輪ロードレース世界選手権(WGP)ライダーである青木拓磨選手は、WGP参戦開始翌年となる1998年シーズン直前にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、以後下半身不随となってしまった。現在はレース・フィールドを4輪に移し、アジアクロスカントリーラリーを中心に積極的にレース活動を行っている。また、レース以外にも、ミニバイクレースを主催するなど、さまざまな活動を展開中だ。

 このスクールもそんな青木拓磨選手が企画して進めているイベントのひとつ。クルマというデバイスを使えば、健常者も障がい者も一緒に同じ競技を楽しめることができるという趣旨で、健常者・障がい者が分け隔てなくサーキット走行を楽しもうという思いが込められている。レーシングスクールというワードが入っているが、とくにレース参戦だけを目標にしているのではない。

レンタルではなく自身のクルマで走ることに意味がある

 サーキット走行には、持ち込み車両での参加が可能。障がい者の方々の場合、普段一般公道で使用している運転補助システムを移植することなく、自身のクルマの性能をもっと引き出してドライブすることができるという点を重視している。愛車の性能を確認したり、自分の車両操作の限界を確認することもできる。とくに脊椎損傷の障がい者の場合、乗車姿勢も重要なので、その部分のレクチャーもしっかり行われているのが特徴のひとつとなる。

 スクールのネーミングにもあるとおり、障がい者については75%オフという破格の受講料というのもあって障がい者の方の参加が多いが、健常者でももちろん参加は可能。広場を使ってのステアリング操作やブレーキ操作のチェックができ、周回もまずは先導走行から、とサーキット初心者にもやさしい内容である。

 サーキット周回についてもほかのレーシングスクールや走行会と同じく、しっかりと走行時間は設けられている。講師には、青木拓磨選手以外にS耐など参戦している山田 遼選手も同席し、それぞれからのレクチャーも受けることができる。

プロドライバーによる同乗走行も設定されている

 2022年8月10日、真夏の開催となった。この日は、非常にいい天気となったわけだが、かえって参加者からはキャンセルが相次ぐという事態になってしまった。というのも脊椎損傷の場合、自律神経の調整も難しくなることから体温調節が困難になることもあるからだ。

 それでも参加の決断をした今回の参加者にとっては、ほぼ青木・山田の両講師からのマンツーマン指導となった。1台ずつの先導走行から走行のチェックまで微に入り細に入りきちんと指導も行われた。

 今回参加した細野さんは胸椎Th5から下の半身不随。今回はHDRSのホンダN-ONE(N-ONEオーナーズカップ仕様車)を使用して走行を重ねた。レースカーということで「身体が固定されて運転に集中できるのがいい。N-ONEのレースなら出られるからって言われているんですよね。参加してみようかどうしようかな~」と思っているところだという。

 また、このスクールでは、同乗走行(2000円/人)も設定しており、これに参加した荻野さんは、進行性の網膜色素変性症による弱視。まだ視覚があった時代は自動車整備なども行っていたが、現在はクルマから離れてしまっている。だが、今回サーキット同乗走行が実現した。

「昔は自分でもクルマを運転していたのでなんとなくイメージは出来ていたけれど、こんなにGが掛かるのかってすごかったです。プロのレーシングドライバーのドライブをすぐ横で実感できて、すごく刺激的な体験でした」とコメントしてくれた。

 HDRS、次回の開催は2022年11月30日(水)に同じくこの袖ケ浦フォレストレースウェイで開催の予定となっている。

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