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懐かしの「トミカ シェブロン」が走った! 潜望鏡がついた「アバルト」も富士スピードウェイに集結した眼福のイベントとは

秋晴れの富士をF2が快走

 残暑が少し和らいできた8月27日、富士スピードウェイでは「Fuji SPEED FESTIVAL FOR ENTHUSIAST 2022」と銘打ったクルマ関連イベントが開催され、多くのファンが詰めかけていました。さまざまな参加型コンテンツに交じって目を引いた観戦型コンテンツが『伝説のF2マシンが走る!』です。これは1978年に全日本F2選手権でタイトル争いを繰り広げた、2台のトップフォーミュラのデモランでした。

 またアバルトのクラシックモデル「CLASSICHE」が20台展示されたコーナーもあり、クルマファンには堪えられない1日となっていました。

全日本F2選手権の歴史に残る名バトルを再現

 国内トップフォーミュラは、スーパーフォーミュラ(SF)として開催されています。現在ではイタリア、ダラーラ製のワンメイク・シャシーですが、かつてSFの前身であるフォーミュラ・ニッポン(FN)が始まった当初までは、複数コンストラクターがシャシーを供給していました。さらに全日本F3000、全日本F2と遡っていくと、国産シャシーが挑戦していた時期もあったのです。

 今回、デモランを行った2台は国産のノバ532・BMWと英国製のシェブロンB42・BMW。1978年のシーズン中には前者を星野一義選手、後者を長谷見昌弘選手、日産ワークスのトップドライバーふたりがドライブして激しいチャンピオン争いを展開。シーズン前半に3勝を飾った星野選手が序盤にはトップを独走していました。

 一方、前半戦で着実に上位入賞を続けてきた長谷見選手が、後半戦で1勝を挙げて猛追。最終的に総合得点ではトップに立ったものの、有効得点制で結果的には星野選手が逃げ切ることになった、歴史に残る好バトルとなったのです。この2台は、国内外の貴重なレーシングマシンを多く収蔵しているレーシングパレス(THE PALACE)が収蔵するもので、現在はレーシングパレスが休業中とあり、その意味からも注目されています。

 当日は、レーシングパレスの代表者で、かつてはル・マン24時間レースに参戦したキャリアを持つ元レーシングドライバーの原田 淳さんと、FNで4度、SUPER GTでは前身の全日本GT選手権も含めて3度のチャンピオンを獲得したレジェンドドライバーの本山 哲さんがドライブ。ファンにとっては見逃せないコンテンツとなっていました。

 当日はノバ532の開発を手掛けたエンジニアの宮坂 宏さんや、カウル製作を担当したムーンクラフトのエンジニアも顔を見せ、ピットでは旧車談義も交わされるなど和やかなムードが漂っていました。2台のF2マシンはレーシングパレスが長年かけてフルレストアを施したもので、今回が初のお披露目となりましたが、シェイクダウンもままならず、初走行でもあったようです。

 しかし2回の走行セッションでは原田さんと本山さんが接近走行を見せて当時の熱いバトルを彷彿とさせるなど、大いに盛り上げてくれました。

アバルトが生み出した多くの“サソリ”が富士に集結

「伝説のF2マシンが走る!」とともに、もうひと見逃せないコンテンツとなっていたのが『ABARTH CLASSCHE』でした。これはアバルトが生み出した歴代マシンをピット内に展示するというもの。

 世界的にも超貴重とされている1974年型のビアルベーロ(FIAT Abarth 1000 Bialbero Longnose)2台を筆頭に、1964年型のペリスコープ(FIAT Abarth OT 1300 Periscopio Sr.2)や1954年型のザガート(FIAT Abarth 750GT Zagato)、1965年型のバルケッタ(FIAT Abarth 1000 SP)など流麗なボディスタイルを見せるモデルを展示。これらに加えて、FIATアバルト595やFIATアバルト1000TCRなど、小粒なFIATをベースにしたアバルトも数多く姿を見せていました。

 またこちらはアバルトを名乗ってはいませんが、1993年型のアルファロメオ155(ALFA Romeo 155 V6 Ti)や1984年型のランチア・ラリー037(Lancia Rally 037 Evoluzione 2)といった、アバルトが手掛けてレースやラリーで活躍したFIAT系列メーカーのワークスカーも顔をそろえていました。

 展示スペースとなったのは富士スピードウェイの12番ピットから16番ピットまで、5ピット分の仕切りを払って広大なスペースとしたうえで20台の“サソリ”を並べたもので、『富士スピードウェイがアバルト色に染まる!』の惹句もオーバーではありませんでした。ここに並べられた20台のうち、何台かはABARTH Classiche Runの時間帯には富士スピードウェイの本コースを走るコンテンツも用意されていました。

 甲高いアバルト・サウンドを響かせながら富士の本コースを周回した“サソリ”たちでしたが、コース幅の広い富士ということもあり、彼らの小さなサイズがあらためて強調されることになりました。また、1972年型のアウトビアンキA112アバルトと1993年型のFIATチンクエチェント900トロフェオという、親子ほど歳の離れた2台が、まるでタイムスリップしたかのような接近戦を披露するなど、展示だけでなく走行でも、詰めかけたファンを魅了したのです。

 1970年代の全日本F2選手権に興味を持っているファンも、新旧のアバルトに親しみを感じているファンも、ともに楽しむことができたFuji SPEED FESTIVAL FOR ENTHUSIAST 2022。その両方を愛してきた熱烈なファンにとっては堪えられない1日となったことでしょう。

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