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なぜ「ラウンドアバウト」は日本で普及が進まない? 本当は安全で環境にも優しい環状交差点の「癒やしポイント」とは

スペイン・バルセロナのラウンドアバウト

安全な移動にはクルマ自体の性能とともに道路も重要

 今回から海外と日本の交通事情をめぐるコラムを、いくつか書かせていただくことになった。出張に出るとクルマそのものだけでなく道路や公共交通も気になり、写真を含めていろいろ記録していることから、お声が掛かったようだ。1回目は「ラウンドアバウト」を取り上げる。

日本でも2014年から本格的に導入がスタート

 ラウンドアバウトは、和訳すると「環状交差点」となる。ヨーロッパでよく見かける方式で、信号の代わりに環状の道路を配置し、一般的には中で回っている車両が優先というルール。逆に進入する車両が優先の場合は「ロータリー」と呼ばれる。

 パリなどの大都市では交通量が多いので、一部を除けば日本と同じ信号交差点が主流だが、交通量が少ない郊外や地方ではラウンドアバウトが多い。

 日本では2014年9月に、環状交差点の通行方法などを記した改正道路交通法が施行され、本格的に導入されることになった。警察庁では地域別の導入状況を定期的に発表しており、2022年3月末現在でもっとも多いのは宮城県の25カ所、続いて愛知県の11カ所、大阪府の8カ所となっている。

 僕も国内では愛知県豊田市と長野県飯田市でラウンドアバウトに出会ったことがある。このうち飯田市は、以前からあった吾妻町のロータリーでラウンドアバウトの社会実験を行ったあと、東和町の信号交差点をラウンドアバウトに作り変えた。

 東和町がラウンドアバウトになったのは2013年で、次の年に改正道路交通法が施行されたので、日本のラウンドアバウトのルール作りに飯田市が貢献したとも言えるし、日本初のラウンドアバウトは東和町交差点ということになる。

まだ全国で140カ所、普及が進まない理由は?

 それでも前に紹介した警察庁の統計では、日本全体でもラウンドアバウトは140カ所。郊外に行けば当たり前のように出会うヨーロッパに比べて、はるかに少ない。

 法律ができてからまだ10年経ってないこと、信号交差点より場所を取ることなども関係していると思うが、最近の日本人に多く見られる、新しいモノやコトに対してまず否定から入るマインドも影響しているのではないかと思う。

 なかには信号交差点より事故が多くなると思っている人がいるかもしれない。しかし実際は逆で、欧米や日本のデータでは事故が減ったという数字がいくつも出ている。

 理由として考えられるのは、交差点の通過速度が遅くなり、速度差が小さくなること。そして信号がない分、ドライバーが他車や歩行者、自転車の状況に注意しながら進むことがあるだろう。

 ただし後者については、ほかの交通に気をつけながら走るのは、交通安全の基本中の基本だ。逆に言えば信号交差点では、信号の色に頼ってドライバーの判断がおろそかになっているとも言える。

燃費や景観といった面でもメリットが大きい

 またヨーロッパでは、交通量が少なければ発進停止が不要で、信号という電気設備に頼らないことから、環境に優しい交差点という評価も受けている。たしかにクルマがもっともエネルギーを消費するのは発進の瞬間なので、ラウンドアバウトが増えれば燃費も良くなりそうだ。

 もうひとつ景観についても触れておきたい。ヨーロッパのラウンドアバウトは、中心の空き地に花などを植えていることが多い。僕などは運転していると、これだけで気分がやわらぐ。それが事故防止につながるかもしれない。

 ラウンドアバウトが海外で普及しているのは、電気自動車のような戦略めいたものではなく、安全や環境といった面でしっかり結果が出ているからだ。日本でも、すでに導入されている交差点はスムースにクルマの流れをさばいているようだし、もっと広まってほしいと思っている。

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