サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

スバル「クロストレックS:HEV」で東京〜大阪往復1045kmを無給油走破!もう燃費が……なんて心配はいらない

クロストレック プレミアム S:HEV EXのフロントスタイル

待望のストロングハイブリッドは高速道路でも好燃費

2024年12月、スバル車に待望のストロングハイブリッドを搭載したクロストレックS:HEVが追加されました。2.5Lエンジンに2個モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、一体どれくらいの実燃費を発揮するのでしょうか。マイルドハイブリッドシステムを搭載した元XVハイブリッドオーナーがロングドライブを行い、その違いと実燃費を検証しました。

XVマイルドハイブリッドの実用燃費は約14km/L

スバルのシンメトリカルAWDによる高い走行性能。そしてアイサイトによる安全性能の高さは魅力だが、燃費性能が……、とスバル車購入に躊躇していたユーザーにとって朗報となったのが、2024年12月に登場したクロストレックに搭載されたe-BOXER ストロングハイブリッドだ。

元XVハイブリッド(マイルドハイブリッド)オーナーだった筆者が、このスバルが満を持して導入したストロングハイブリッドで東京~大阪1000km無給油走破に挑戦した。

スバルが初めて「ハイブリッドシステム」を搭載したのが、2013年6月に登場したコンパクトSUVのXV。つまりクロストレックのルーツとなるモデルだ。ハイブリッド専用の2L水平対向4気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、モーターでエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムで、モーターのみで走行できるのは定速領域など限定的だった。

燃費性能はXVデビュー時JC08モード燃費20.0km/L。2015年のマイナーチェンジ後は20.4km/Lへと延びている。筆者は初期のXVハイブリッドを5年間所有していたが、平均速度60km/hぐらいの郊外路などでアイサイトを使用して、インテリジェンスモードで走行すると18km/Lまで延びることはあったが、高速道路と一般道を半々で走行した実燃費は約14~15km/Lだった。

このマイルドハイブリッドシステムはe-POWERと呼ばれ、2代目XVそして3代目に相当する現行型クロストやインプレッサにも搭載されている。クロストレックのe-POWER搭載車の燃費性能がWLTCモードで15.8~16.4km/Lなので、自分が所有していたXVハイブリッドからの大きな進歩は見られない。だからこそ、今回登場したS:HEV(以下ストロングハイブリッド)には期待しているのだ。

S:HEVは燃料タンクが63Lになりカタログ値での航続距離は1190km

クロストレックに搭載されているストロングハイブリッドシステムをおさらいしておく。最高出力160ps、最大トルク209Nmを発生する2.5L水平対向4気筒エンジンに、最高出力119.6ps、最大トルク270Nmを発生する駆動用モーターと発電用モーターを組み合わせた2モーターシステムとなっている。

高出力な駆動モーターを採用したことで、EV走行の領域が拡大。モーターが苦手とする領域をカバーすることで、燃費性能はWLTCモードで18.9km/Lを実現している。駆動方式はスバルらしく、プロペラシャフトで後輪をつなぐ機械式4WDを採用。電気制御トランスファーで後輪への駆動力を瞬時に伝え、前後輪のトルクを適切にコントロールすることで、スバルらしい優れた走行安定性を発揮する。

また、ストロングハイブリッドのパワーコントロールユニットを、これまでのフロア下からエンジン上部に移動することで、燃料タンク周辺の省スペース化に成功。燃料タンク容量をマイルドハイブリッド車の43Lから通常ガソリン車と同じ63Lまで増やすことができた。これによってカタログ燃費上での航続走行距離は約1190kmとなっている。

マイルドHVよりモーター走行の領域が明らかに広い

試乗したのは、最上級グレードのクロストレックプレミアム S:HEV EX。最新鋭の運転支援システムであるアイサイトXを標準装備しているモデルだ。有料色のボディカラー、クリスタルホワイト・パール(3万3000円)。そして本革シート、アクセサリーコンセント(15万4000円)のオプションを装着し424万500円という仕様だ。

先代モデルとなるXVは、全幅1800mm、全高1550mm(ルーフレールなし)という都市部に多い立体駐車場に対応していた優れたパッケージのボディサイズだった。現行型のクロストレックは全長4480mm×全幅1800mm×全高1575mmとなり、個人的にはXVの美点のひとつだった全高1550mmを超えてしまったのは残念だ。

注目のストロングハイブリッドシステムは、モーターとエンジンの切替時に段付きを感じたマイルドハイブリッドシステムとは違い非常にスムースに切り替わる。エンジンが掛かる際の振動や音もかなり気を遣っていることもわかる。そしてエネルギーフローを見ていると、モーターだけで走行する領域がワイドになっている。これは燃費テストへの期待も高まる。

ひどい渋滞区間でも18km/L台をキープして平均燃費は19km/L超

ハイブリッド車はカタログ燃費と実燃費の乖離が大きいことは、日本自動車工業会も認めている。しかもロングドライブを行ったのは真夏でエアコンの使用電力が多いタイミングだったので、カタログ燃費の10~20%ダウンなら及第点と考えていた。

今回のロングドライブは、往路は中央道を経由して東京から大阪へ。新大阪駅で折り返し復路は新名神から新東名を軽油して東京に向かった。果たしてストロングハイブリッドは東京〜大阪を無給油で往復できるのだろうか?

渋滞は往路では、高井戸ICから上野原ICまで実質45kmの渋滞で停まることはほとんどなかったが、低速でのダラダラ走行が続く。復路の厚木~横浜町田間で渋滞に捕まったが、停止することなく、30分ほどだらだらと進んだ。

中央道は最高点のある中央道 原ICまではアップダウンしながら登りが続き、その後は下りがメインとなる。出発して約45kmの渋滞に遭遇したものの、約2時間掛かって甲府の手前にある境川PAに到着。酷い渋滞に巻き込まれても燃費計は18.0km/Lを示していた。

その後下り区間が多い中央道を19.1km/Lで走破。アダプティブクルーズコントロールを作動させ走行したが、エンジンを止めてモーターのみで走行する領域が多いので燃費がグングンと伸びていく。そして名神高速を経由して新大阪駅に到着したときの走行距離が551km、平均燃費19.3km/L。メーター上の残走行距離は530kmとなった。

渋滞で走行可能距離が激減して東京まで無給油で帰れるか?

新大阪駅から東京までのナビの距離は495kmなのでギリギリ無給油で走行できる。しかし新大阪駅から名神高速の吹田ICまでの一般道が渋滞。さらに車内の外気温計が43℃でエアコンがフル稼働。高速道路に乗るまでに燃費は18.5km/Lまで低下。走行可能距離も300kmまで減り、東京まで無給油が厳しくなった。

しかし、クロストレックのストロングハイブリッドは実力を発揮。法定速度に設定したアダプティブクルーズコントロールで走行すると、残走行可能距離はぐんぐん延び無事東京に到着。トータル1045kmを走行した燃費は19.0km/LとWLTCモードとほぼ同じ数値だった。ちなみに残走行距離は40kmだった。

今回のロングドライブでの検証でわかったことは、クロストレックの搭載しているストロングハイブリッドは、高速走行時にエンジンを止めてモーターのみで走行できる領域が広いこと。その結果、ストロングハイブリッドでも高速道路での燃費悪化が少ないという点のは、これまでのハイブリッドの常識を覆しているといえるだろう。

一方残念な点は、アダプティブクルーズコントロール使用時に速度差の大きな先行車と近づくと、早いタイミングでブレーキを掛けて減速してしまうこと。一旦減速すると設定速度まで回復しようとエンジン回転数を上げて加速するので、できるだけ減速させないように走行する必要がある(早めの車線変更やクルコンを一時的にOFFにする)。

全高が1550mmを超えてしまうなど個人的には残念な部分はあるが、マイルドハイブリッドからの走行性能、燃費性能の進化は大きく、非常に魅力的なクルマであるのは間違いない。

モバイルバージョンを終了