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自動車用バッテリーはリチウムへシフトする

リチウムバッテリーの本音を
3メーカー担当にインタビュー

ハイブリッド車やEV、あるいはスマホやパソコンの電源として普及しているリチウムイオンバッテリー。従来の鉛バッテリーに比べ、エネルギー密度が濃く、小型・軽量で、長寿命。自己放電が少なく、長寿命(8~10年。ただし価格も鉛バッテリーのおよそ10倍)ということで、次世代のバッテリーとして、鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーに買い替える動きも出てきている。

まだまだ高価で、電圧管理がシビアなため専用充電器が必要だったり(ブースターケーブルでジャンプすることは厳禁)、バッテリーのマウントもワンオフ(?)といった課題もある

原理的には、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う。

また鉛バッテリーは、電解質の溶媒が水溶液(ドライバッテリーはジェル)だが、リチウムイオンバッテリーの電解質は、有機触媒というのが大きな違い。

自動車用リチウムイオンバッテリーは、極端にいえば、乾電池のようなセルを組み合わせた組電池。最近出回っている補機類用リチウムイオンバッテリーの多くは、一つ3・3Vのセルを4つ直列繋ぎして13・2Vを確保し、4つ1組のペアをいくつ並列繋ぎするかで、容量を決めている。充電しながら使うことができるリチウムイオンのセルが開発され、爆発的に普及した。

エネルギー密度が高い、電圧が高い(4V級)、小型軽量、メモリー効果がない、自己放電が少ない、寿命が長い、高速充電が可能、大電流放電が可能、etc.などメリット多数で、注目のリチウムイオンバッテリー

ケースの中にリチウムイオンのセルが詰まっている。現在流通するタイプはマネージメント機構が同梱されている形式が主流

セルの形状により「シリンドリカルセル」と「プラズマティックセル」と名称が異なるが、これはセルの形が「乾電池」状か「板チョコ」状かの違いを説明している。

そんな注目のリチウムイオンバッテリーをリリースする3社(アリアント、ブリッツ、スーパーB)に、リチウムイオンバッテリーのメリット、デメリットについてインタビューした。

 

二輪、四輪のスーパーGT選手権で
実績をもつブランド

ALIANT(アリアント) http://www.jp-aliant.com/

アリアントを輸入販売する原田 朗ALIANT TOKYO BRANCH代表に同社のバッテリーについてインタビューした。

X4(写真左)は13.2V/9.2Ah/480Aでサイズは148mm×67mm×140mm。税込みで4万6224円。 X6(写真右)は13.2V/13.8Ah/720Aでサイズ148mm×134mm×133mm(X8のサイズと同じ)。重量は2.5kgで価格は税込みで9万2880円。

原田 朗ALIANT TOKYO BRANCH代表

リチウムイオンバッテリーの性能を左右するのは、使用されているセルの性能と、それを制御するバッテリーマネージメントシステムです。前者に関しては現在入手できる中で最高の性能を持つリチウムフェライトシリンドリカルセルを使用しています。後者はバッテリーの維持&管理をするための装置で、弊社はマイクロプロセッサーでコントロールしており、セル一つずつを監視し、個別に充電を制御するアクティブタイプBMSを採用しています。

4輪用としてX/XPシリーズをラインアップしており、スカイラインGT–RならばX4から使用可能で、重量は1.62㎏ととても軽量です。

ただ、価格が高い故に誤解されているユーザーが多いのですが、リチウムイオンバッテリーは万能ではありません。電圧管理が非常にシビアで、14.6Vを超える過充電や、8Vを下回る過放電をさせるとセルが損傷し、使用することができなくなります。

純正オプションのプロテクションシステム。設定電圧を下回る場合カットオフする

条件にもよりますが、暗電流を使用する部品を装着していて、2週間以上乗らないような場合、8Vを下回る可能性が高いです。そのような使用をする場合、純正オプションのプロテクションシステムの装着を推奨します。
これは、下限電圧を下回る場合、自動的にカットオフする機構です。リチウムイオンバッテリーは、注意すべきところはありますが、それを補って余りあるメリットがあると確信しています。

乗用車向けのリチウムバッテリーを開発

ブリッツ TEL0422-60-2277 http://www.blitz.co.jp/

ブリッツ企画部 小林潤一氏に聞く、リチウムイオンバッテリーのメリットとは?

製品は15Aタイプと30Aタイプの2種類だが、ケースはどちらもB19サイズ。38B19サイズの鉛バッテリーに比べ重量は1/3以下の約2.8kg

ブリッツ企画部・小林潤一氏

開発に際し、留意したのは安全性と安定した性能です。現在自動車に広く採用されている鉛バッテリーは非常に安定しており、性能としてはとてもバランスが取れているのです。一方、リチウムイオンバッテリーは軽量であることや電圧出力が鉛バッテリーより優れていますが、万が一バッテリーを上げてしまうと、クルマが動かなくなってしまう恐れがあるのです。

そこでまず安全性に関しては、セルとリン酸鉄リチウムと呼ばれる発火や爆発をしないタイプを採用しております。安定した性能に関しては、フェイルセーフ機能を充実させることでクリアしました。
フェイルセーフ機能について詳しく述べると「オートシャットダウン機能」と「リカバリースタート機能」が備わっています。バッテリーの状況をインジケータで表示しており、静電スイッチに触るだけでバッテリーの状態を、インジケータの発光色でコンディションを確認できるようにしました。

コンサルトスイッチを備えることが特徴

最大の特徴は、電圧が11.6Vまで下がると基盤側で電力消費をカットオフしそれ以上放電しないようにキープすることです。最低限エンジンを始動できる電圧は確保してくれます。
また、リチウムイオンバッテリーの利点として、90%充電するまで約1時間と充電時間大変短いことが挙げられます。つまり一度エンジンを始動できれば、バッテリーが復活する可能性が高いのです。

使い方を間違えなければリチウムは安全

SUPER B レーステックジャパン http://www.racetech.jp/

 

リチウムバッテリー「SUPER B」を扱うG-CLIMB&CO.,Racetech Japan事業部 渋江昇一代表にリチウムイオンバッテリーについてインタビューした。

サイズは3種類。左から10P、15P、20P。容量は、15Pで13.2V/13.8Ah/900A。
サイズは180mm×120mm×82mm。重量2.5㎏。価格税込み12万744円

G-CLIMB&CO.,Racetech Japan事業部 渋江昇一代表

リチウムバッテリーの最大のメリットは小型・軽量化と高出力の両立です。R32~34スカイラインGT–R用ですと10P、15Pが適合します。10Pの場合自重が1.7㎏しかないため、純正バッテリーに比べ約8割以上の軽量化ができる計算となります。大きさも1/4〜1/3とコンパクトになり、液式やドライバッテリーと異なり搭載方法に方向性に制限がないため、縦横斜めご自由にレイアウトすることが可能です。

ただし、チューニングカーといえどセキュリティやイモビライザー等の普及・装着により暗電流が多く流れている場合が多いため、街乗りをするナンバー付車両への装着する場合、メーカー推奨値よりも1ランク大きいサイズのバッテリーを推奨しています。

注意していただきたいのは、満充電状態を超える電力を加えるとバッテリー本体が壊れてしまうということです。使用する前に、車両側のオルタネーター発電・蓄電システムがリチウムイオンバッテリーにとって過充電になってしまわないか、確認作業が必要です。

)スーパーBを充電する場合、専用チャージャーを使用してほしい

また、スーパーBバッテリーは鉛バッテリー用充電器を使用した再充電作業はできません。リチウム専用品チャージャーを推奨しています。電圧管理の大切さは、他メーカーのリチウムイオンバッテリーでも同じでしょう。

基本的にはレーシングカーがターゲットの商品で、バッテリーの交換だけで、14psもパワーアップした例がありました。何故パワーアップに貢献するのかというと、リチウムイオンバッテリーは常に安定した電流値を点火プラグやコイルに送れるからだと分析しています。

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