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日産GT-Rのために設計したヨコハマ「アドバンA08B」

アフターでは初のR35GT-R専用設計
前後タイヤを同サイズとした意図は?

日産R35GT–Rの純正タイヤは「フロント255/40ZRF20、リヤ285/35ZRF20」という大径サイズのランフラットタイヤを装着している。
デビュー当初は、グレードによりダンロップ(以下DL)とブリヂストン(以下BS)の2銘柄が標準タイヤとして設定されていたが、現在の新車装着はDLのみ。
R35GT-R以外でこのサイズのタイヤを装着している車種はごく一部の輸入車に限られ、公道からサーキットまでをカバーできるハイグリップラジアルというと、必然的に純正タイヤを選ぶしかなかった。

そんなR35T-R用タイヤに『横浜ゴム』という選択肢がある。
サーキットを楽しく安全に走れることをコンセプトに新規開発された、「アドバンA08B(エー・ゼロ・ハチ・ビー)」がそれだ。

YOKOHAMA ADVAN A08B SIZE:285/35R20 価格:オープン

JAF公認レース「GAZOO Racing 86/BRZRace」の参戦者用に開発された横浜ゴムの「ADVAN A08B」。今年3月にリリースされたR35GT-R用サイズは、名前とトレッドパターンこそ共通だが、採用されるコンパウンドや内部構造など、トヨタ86/スバルBRZ用とは大きく異なるという。メインターゲットはサーキットだが、ストリートでの使用も可能とのこと。
グリップ重視で浅溝を採用している点は、GT-RNISMOの純正DLと同様のアプローチである。

フロントタイヤのキャパシティをアップさせる

このA08Bは、もともとナンバー付きのワンメイクレースとして盛り上がりを見せている「GAZOO Racing 86/BRZRace」のレギュレーションを満たしつつ開発されたレース用のラジアルタイヤだ。

開発を担当した『ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル』の八重樫剛氏は
「ネーミングおよびトレッドパターンは86/BRZ用の205/55R16と共通ですが、単純にサイズだけを変更したわけではなく、R35用としてかなりの部分にモディファイを加えています。純正の硬いランフラットタイヤに対して、A08BはR35GT-Rの車重やボディ剛性、パワーなども鑑みつつ、ケーシングのたわみも利用することでタイヤ全体でグリップを発揮する構造としています。ワンメイクレース用というイメージが強いかもしれませんが、R35GT-R用に関しては公道での使用も想定しています。レースなどの競技専用ではなく、弊社のフラッグシップラジアルであるアドバン・ネオバAD08R同様、ハイグリップのストリートラジアルと考えていただいて結構です」と語る。

ちなみに、R35GT-R用にリリースされたサイズは純正リヤタイヤと同様の285/35R20サイズのみ。これには理由があるという。

設定サイズはR35GT-Rの純正リヤタイヤと同様の「285/35R20」のみ。装着するにはフロントキャンバー角の変更、もしくはワイドフェンダーへの交換が必要になる

「A08Bのターゲットユーザーは、ある程度チューニングを施してサーキット走行なども楽しまれているR35GT-Rオーナーです。現在、各チューニングショップさまのデモカーをはじめ、サーキットでタイムを追求するにはフロントにも285サイズのタイヤを装着するのがトレンドとなっています。フロントタイヤのキャパシティを上げることで、タイムはもとより乗りやすさにも繋がります」と八重樫氏は説明する。


A08Bのメリットは軽量。ラジアル最速のパフォーマンス

富士スピードウェイを舞台に、アドバンA08B、GT–Rニスモ用の純正DL、MY14(2014年モデル)用の純正DLという3種類のタイヤのラップタイムと特性を比較。
テスト車は純正タービンのブーストアップ仕様で約630psを発生する『HKSテクニカルファクトリー』のR35GT–Rを使用した。

インプレを担当するのはA08Bの開発ドライバーも務める谷口信輝選手だ。まずはA08Bを履いてタイムアタック。計測1周目にいきなり「1分47秒846」という好タイムをマーク。
ブーストアップのラジアルタイヤ仕様では、最速といってもいいタイムだ。

ADVAN A08Bのベストタイムは1分47秒846

「A08Bが純正のランフラットタイヤと大きく異なるのは、まずタイヤ自体が非常に軽量という点です。バネ下重量が軽くなることでハンドリングも軽快になりますし、サーキットだけではなく、普段の街乗りでも確実に乗り心地が良くなります。アタック中にほかのクルマに引っかかったため、あと0.5秒くらい更新できそうですが、富士で47秒台というのは恐らくブーストアップ仕様のR35としてはラジアルで最速の部類に入ると思います」と谷口選手は語る。

「A08Bが優れているのは、冷えていてもある程度グリップしてくれるという点。純正タイヤはコースイン直後の1コーナーやAコーナーなど、かなり気を使わないとまったくグリップしてくれません。気温の低い時期には念入りにウォームアップしないとポテンシャルを発揮してくれないのです。
一方、A08Bはアウトラップ翌周にはしっかりとタイヤの作動温度域に入ってくれるため、安心してアタックすることができます。発熱してからのグリップ感も高く、100Rなどの高速コーナーの安定感も抜群です。また、1周だけではなく連続周回でもタレが少ない点も特筆すべき特性です。富士なら10周くらい走り続けても、ベストタイムの1秒落ちくらいでラップを並べることが可能です」とコメントする。

その言葉どおり、A08Bは計測1周目のベストタイムに対し2周目=1分48秒052、3周目=1分47秒943と0.2秒落ち程度での周回が可能だった。

ケース剛性の高さがトレッドへの負担を増やす

対して、後述するR35GT-Rの純正タイヤは、計測2周目のタイムがニスモ純正およびMY14純正ともに約0.6秒落ちとなり、タイムアタックでの美味しい領域が少ないことがわかる。

DUNLOP SP Sport Maxx GT 600(NISMO用)

DUNLOP SP Sport Maxx GT 600(NISMO用)ベストタイム1分48秒359

GT-R NISMOが装着するDLSP Sport Maxx GT 600の印象を谷口選手に聞くと
「さすがに日産がGT-R NISMO専用として開発しているだけに、グリップ力が高くてフィーリングも良好。ただし、ケーシング剛性が強過ぎる印象で、サーキットでは顔(トレッド面)への攻撃性が強い。ポテンシャルはあるけど、連続周回ではかなり磨耗が進行しそう。
一発のタイムを狙うことはできるけど、失敗すると次の周回でのリカバリーは難しいかもしれない。スポーツ走行などでかなり周回を重ねると、半日くらいでタイヤがなくなってしまいそう」とコメントした。

DUNLOP SP Sport Maxx GT 600(MY14用)

DUNLOP SP Sport Maxx GT 600(MY14用)ベストタイム1分50秒272

「NISMO用に比べると、2ランク、いや3ランクくらい差がある。サーキットではグリップ力が足りず、ドライビング中はかなり神経を使わなければならない。1コーナーのフルブレーキングでも、A08BやNISMO用に比べるとABSが介入するタイミングも早く、コーナリングでの横方向のみならず、縦方向のグリップも足りない。
とにかくアンダー/オーバーが顔を出すので、サーキット走行にはハッキリ言って不向きだと思う。街乗り専用と考えたほうがいいかも」と谷口選手。

「ニスモ純正タイヤは一発のタイムはかなりいいレベルにあるのですが、ランフラットということもあって、サイドのケーシング剛性が異様に高く、トレッド面のゴムだけでグリップを稼いでいるような印象があります。その分、グリップのタレが早く、連続でのアタックはちょっと厳しいです。
A08Bは、トレッドだけではなくサイドウォールもうまくたわませることで、タイヤ全体で仕事ができるのです。だからタレにくいし、磨耗も少ない。一発はもちろん、安定してラップタイムを揃える」と総評する。

タイムだけですべては語れないが、A08Bのタレと磨耗の少なさは、サーキットでR35の走りを楽しみたいというオーナーにとって、非常に興味をそそられるメリットといっていいだろう。

右からA08B/NISMO用/MY14用。走行後のトレッド面のダメージはNISMO用が最も大きく、A08Bの磨耗状態は良好。MY14用も減りは少ないが、その分グリップ力は低い。純正に比べ、A08Bのトレッドがラウンド形状であることがわかる

横浜ゴム http://yokohamatire.jp/yrc/japan/index.html

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