サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

スタンス系を極める「エアサス」のメリット・デメリット

走行中に車高を高めれば大丈夫?

カスタムシーンにおいて、ローダウンを極めるための必須アイテムといえるのが「エアサス(エアーサスペンション)」。取り付け法によっては路面とボディ下面が接地する「車高ゼロ=着地」の状態にすることも可能だ。
それでいてイベントが終わればシュッと車高を上げられて、自走で帰路につくこともできるだけに付けてみたいと思っている人もいるだろう。

しかし公道を走る限り、無視できないのが車高に関する法令だ。
エアサスは車高を下げるだけではなく上げることもできるので、ベタベタに低くできるようにセッティングしてあっても、上げた状態で車高の規定をクリアしているのなら「OKなんじゃない?」と思ったりもする。ところが、残念ながらそれはアウトだ。

保安基準適合には最低地上高9cmは必要

エアサスといえども基準になるのは下げた状態。
そこで最低地上高9cmをクリアするセッティングを施すことが前提となる。

それに加えて2006年1月以降にフルモデルチェンジしたクルマでは、純正フォグランプ下縁の高さが路面から25cm以上、ウインカーの下縁は路面から35cm以上となるようにしなければならない。
そしてヘッドライトもロービーム側の下縁が路面から50cm以上あることが追加されている。
つまり、2006年1月以降に登場したモデルは、エアサスを付けたときにそれらすべての規定をクリアしなければならないわけだ。
ということでエアサスを付けたとしても、ベタベタ車高と保安基準適合の両立はできないということだ。

構造変更申請時に車検はリセットされる

エアサスについてネットで調べると、装着後は陸運局で「構造変更」という申請が必要という情報が出てくるだろう。
しかし、一般的な車高調整式サスキットに変える場合はそんな申請は必要ないのだが、なぜエアサスだけ申請が必要なのか?
不思議に思う人もいるはず。そこでこの件についても触れておこう。

エアサスのコイルスプリングのかわりにエアバッグというパーツを使う。なかにはエアバッグと金属バネを組み合わせたタイプもある。
サスペンションにおいてのスプリングは「車体を支えるため」に付いているものなので、車体の構造物という区分けになっている。
そのためコイルスプリングから空気バネ(エアバッグ)に変えることは車体の構造に手を加えるという大事なので、それ相応の申請が必要になるということなのだ。

しかも、その申請は装着と同時に行うのが原則。
この構造変更というものは申請時に新規に車検を取ることになるので、車検の有効期限が残っているクルマでは残りの期間を捨てることになる。
それだけに車検残があるクルマだと次の車検まで構造変更せずに乗るケースもあるようだが、それは違法改造扱いとなるので要注意。
車検のタイミングでエアサスを装着するのが、もっとも効率的といえるだろう。

純正エアサス以外は車高調整不可という矛盾

今回は日本のエアサスメーカーであるユニバーサルジャパンに話を聞いたが、同社製品を購入したユーザーには、構造変更申請に必要な書類を発行している。その書類を元に陸運局へ提出する書類を作成するのだ。

ところが、この書類を作成するだけではまだ不足だ。
じつは自動車メーカーから発売されたクルマに「標準装備しているエアサス」以外は、エアの調整によって車高を変化させることは認められていない。

構造変更の申請時にエアタンク、バルブ、配管、スイッチなどが付いていると「原則として」検査には通らない。
それゆえ申請時は法令に合致する車高にセットした後、エアタンクなどをすべて外してから陸運局へ持ち込むケースもあるようだ。
ただし、この点については陸運局の担当者によって見解が異なる場合もあるようだ。

車高を固定できる機能があれば保安基準適合

「え~」と思うだろうが、後付けのエアサスについては「バネサスをエアサスに変えてもいいが、車高が変えられる機能を持った仕様になっているのはダメ」という決まりなのだ。
構造変更に必要な書類も揃っていても、車高調整機能を働かせられるのは純正だけというのは明らかに矛盾している。

シトロエンは、純正では油圧による車高調整機能を持っている

シトロエンのハイドラクテ ィブサスペンション

ただ「例外」はある。

それは「原点復帰装置」を付けると言う手段。これはエンジンを切っているときは車高が下がっていても、エンジンを始動して走行できる状態になったときに、自動的に保安基準適合値の車高になるような機能を持たせるものだ。この機能を持っていれば、エアタンクなどが装着されていても問題ない。
しかし、これはこれでエンジン始動後の車高が毎回自動的に法令範囲に合うように設定したりと、高い技術と費用が求められるそうだ。また、走行中に車高を変える機能は付けてはならないという。

このようにエアサスにはいろいろと難しい規制がある。
だからこそ、ユニバーサルジャパンのような信頼性のあるメーカーの製品を購入すること。
作業経験豊富で「正確な」取り付けと、構造申請についての知識があるショップであるとこ。
カスタムを楽しむには、当たり前のことかもしれないが、サスペンションという重要部品だけに信頼できる製品とショップを選ぶことが重要なのである。

(レポート:深田昌之)

【関連記事】

モバイルバージョンを終了