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「無法自転車」のために失われるクルマのデザイン性

国土交通省が2021年を目処に
自転車保護性能を追加すると発表

2016年8月29日の新聞等で、「車に自転車保護性能、衝撃軽減…国が基準追加へ」というニュースが紹介されていた。
たしかに、警察庁の調べによると2015年に自転車乗車中にクルマとぶつかって死亡した人は、572人(死亡事故全体の14%)もいて、それを少しでも減らしたいのはよくわかる。
しかし、その対策をクルマのハードに託すのは、ちょっと待て!と言いたいところ。
野放しになっている無法自転車の取り締まりのほうが先ではないか!

読売新聞2016年8月26日刊より

覚えている人は多いだろうが、日本では、2005年から「歩行者保護法規制」が導入され、その結果、どのクルマもボンネットが分厚くなり(高くなり)、かなりスタイリングに悪影響を与えてきた。

先代スカイライン(V36型)は2006年に登場

そこへきて、今度は「自転車保護性能」を盛り込むとなると、クルマのデザインはどうなってしまうのか……。
安全より、デザインを優先しろとまでは言わないが、その前にやることがあるのでは?

無法自転車でも自動車との事故では
自転車は交通弱者で被害者扱い

夜間の無灯火、逆走、信号無視、後方確認ナシの道路横断etc.と、近年、自転車利用者のマナーの悪さは、大きな社会問題となっている。
しかも、正しい場所を走行していた自動車が不注意で自転車が接触して事故が発生した場合、交通弱者となっている自転車側が被害者で、自動車は加害者となるケールが多々ある。

 

2015年6月から、制動装置(ブレーキ)不良自転車運転や信号無視、一時不停止など、自転車の「危険行為」を繰り返した人に自転車運転者講習(有料講習)を義務づける改正道路交通法の施行されたのはご存じの通り。

自転車マナーとルールの徹底が先決

警察庁によると、今年4月末までに講習の対象になった危険行為は全国で1万3455件だったそうだ。
しかし、法改正後、取り締まりが厳しくなったといっても、自転車利用者のマナーが向上したという実感は、正直ドライバーにはないのでは?

こうした無法自転車が後を絶たない現状で、「自転車保護性能」を盛り込むといっても、理解は広がらないと思うがどうだろう。

向かってくる方向の道のみが青信号。左右の道路は赤信号ながらも、自転車は信号無視して横断中

国土交通省は、来年度から「自転車保護性能」の基準を定めるための調査をはじめ、2021年には新基準を追加する方針とのこと。
クルマのスタイリングは、昔から、車体が低く、先端が尖っていて、居住スペースが小さいほどカッコいいと相場が決まっている。
しかし、当今のクルマは、ことごとくこのセオリーに反するクルマばかりで、デザインに惚れるクルマは非常に稀だ。

F1やルマンなどのスポーツプロトタイプカーといったレーシングカーですらその例外でなく、カッコよさでいえば、ひと昔前のレーシングカーの方が、はるかに上。

1987年第27回東京モーターショーに出展された日産MID4-II

その原因は、主として、安全基準優先、空力優先、居住性優先といった三つの思想で、いずれもエンジニアリングの領域の問題。
つまり、現代のクルマのスタイリングは、デザイナーではなく、エンジニアが主導権を握っているからカッコ悪いともいえる。

1968年登場のマツダ・コスモスポーツ

「自転車保護性能」の話から少々脱線してしまったが、安全基準優先の流れは、今後、強まることがあっても弱まることがないはず。
カッコいいクルマが復権するためにも、ここはカーデザイナー各位に一層奮起をしていただいて、基準を満たしながら、エンジニア優位の体制をぜひとも覆してもらいたい。
そうしないと、カッコいいクルマは、そう遠くない日に、レッドリスト(絶滅危惧種)入りしてしまうかも知れない……。

(レポート:藤田竜太)

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