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【工場見学】ハンドメイドが活きる3ピースホイール製造の裏側

3ピース構造ゆえの手作業による工程
『レオンハルト』製造現場に迫ってみた

 

国内唯一の3ピースホイール専用メーカー「スーパースター」。3ピース構造のホイールとは、ディスク、アウターリム、インナーリムと、3つのパートから構成されるため、当然ながら工程も数多い。そんな3ピース構造のホイールを手がける「スーパースター」製の特徴は、自社生産した鋳造ディスクとスピニングリムを組み合わせて作る、まさにハンドメイドな製作過程にありき。
今回の【工場見学シリーズ】は、そんな複雑な工程とともに工芸品のような風合いを生み出す同社のオリジナルブランド『レオンハルト』開発現場に迫ってみた。

塗装以外はすべて自社工場で行なっており、ディスクの鋳造行程はもちろん、リムの成型、ディスクの表面加工なども職人がハンドメイドで製作する。各パーツを個別に製作する特性を活かし、同社ではパーツごとにオプションのプログラムを設定。ディスク形状以外は、カタログ掲載以外のオーダー(色やブラッシュド加工など)にも応じている。

つまり、オーダーメイドに近く、ユーザーと一緒になってホイールをワンオフする現場は、まさに工房の雰囲気そのもの。近代化した設備ではマネのできない小ロット生産は、ユーザーのワガママをカタチにするための武器であり、高品位な3ピースホイールを作るために欠かせない要素といえる。
*紹介サイトによっては写真が正しく表示されないことがあります。その場合は本サイトでご覧ください。

 

01 デザイン

ブランド担当者とデザイナーで考えたデザイン案を設計部門に送り、強度計算を経て図面に起こしていく。
よりクリーンなシルエットが求められる現状ではスポークも細くなり、いかにデザインと強度のバランスを取るかがカギとなる。

 

02 鋳造

「スーパースター」では3ピースホイールのみを製造するため、鋳造するのはディスク部のみ。
まずはアルミのインゴットを溶解して金型に流し込んで成型するのだが、ほとんどの作業は熟練のスタッフによる手作業だ。
品質重視の重力鋳造(重力を利用して金型に流し込む方法。時間は掛かるが、複雑な形状にも対応しやすく、気泡の発生を抑えることが可能)を採用。アルミを注ぎ込んで鋳造が終わるまでの時間は、1枚あたり約4分ほどである。

 

03 仕上げ

鋳造で出た余分なバリを取り除いた後に焼入れ加工して強度を高めると、鋳造ディスクの原型が完成。
ステンレス製の細かな粒を当てる「ショットピーニング加工」を施し、表面の強度をさらに高めてやる。
*写真下(右がショットピーニング処理前/左がショットピーニング処理後)

 

04 ディスク加工

ショットピーニングによってホイール表面が整えられたら、次はディスク加工に移動。
ピアスボルトの取り付け穴を空け、さらにオーダーに従って個別のP.C.D.(車体に装着する際のボルト取り付け穴)穴あけ加工し、ナットホールまわりを加工する。

 

05 1次塗装(社外)

ディスク加工の後は、ホイールごとに指示された図面通りに塗装する。
近年、鮮やかな発色にこだわる「スーパースター」では溶剤塗装と粉体塗装をカラーによって使い分け、手の込んだツートンペイントなどにも対応している。

 

06 表面加工

ブラポリ系やブラッシュドなどディスクに切削加工する場合は、再度ファクトリーに戻し、表面の切削加工を実施。
写真はブラック×ポリッシュの加工。機械で表面を削った後で、スタッフが1本ずつ手作業で仕上げを行なっていく。

 

 

07 クリア塗装

表面の加工が終わるともう一度塗装工場に送られ、クリア塗装をしてディスクが完成。
このようにディスクが完成するまでには何度も工場を移し、ほとんどの行程をハンドメイドで行なっているのだ。

 

次のページではリム製作から組み付け、そして完成へ……

リムは延伸して成型する製法に
組み付けはすべてがハンドメイドだった

08 リム製作

「スーパースター」では先ほどのデイスクだけでなく、リムも自社生産している。
その行程だが、サークル材と呼ばれるアルミ板をロクロのようにローラーでスピニング。スピニングとは、圧力を加えながら徐々に延伸させることでリムのカタチに成型する製法。金属組織が密になることで強度がアップできるうえ、軽量化にも繋がりやすい。

インナーとアウターにリムが別れる3ピース構造のため、同じ要領でインナーリムとアウターリムをそれぞれ製作。リムとディスクを結合させるピアスボルトの穴と中心を抜き、リムは完成となる。
そして、アウターリムはアルマイト加工をして美しい仕上がりになるのだ。

 

 

09 リムとディスクを組み立て

完成したディスクとリムは別のファクトリーに集められ、仕様書をもとにハンドメイドで組み立てられていく。
規定のトルクでリムとディスクをピアスボルトで接合。その後、精度の検査をしてタイヤの空気漏れを防ぐシーリング処理を行なう。溶接ではなくシーリングなのは、修繕やリム変更が前提の欧州からの要請だったとか。

リムとディスクの接合はピアスボルトのみ。
キチンとした精度を出すには高い技術が求められるが、リム交換やサイズ変更への対応が可能となる。溶接に頼らないのはワケがあるのだ。

 

10 振れの検査

組み付けられたホイールは1本ずつ振れがないかを徹底的にチェック。
ハンドクラフトで各パーツを製作し、ピアスボルトのみで接合される3ピースホイールは、極めて高い精度を有することになる。

 

11 検品&出荷

組み付け&シーリング、振れの検査が終わり、ホイールが完成したら検品場にまわされる。
傷などがないかの最終確認と同時に、オーダー時の仕様書に沿って間違いなく組み上げているかを確認。徹底的な管理のもと、めでたく出荷されることになる。

仕様書にはオーダー内容が記載してあり、この通りに製作されていれば合格。
検品時に製造ロットナンバーを貼付け、ナンバーを管理することでホイールの仕様が後からでも分かる仕組みとなっている。

シーリング式で分解が可能な「スーパースター」製ホイールは、リムの交換にも対応。
さきほどのロットナンバーから新しいリムを製作して組み付ける。リムを縁石にヒットして破損させても修復できるというわけだ。

 

オートメーション化が進むホイール生産だが、3ピースという構造や高い精度と性能を得るには職人による手作業は不可欠。
こうやって生まれる『レオンハルト』の逸品たちは、私たちの足元で永遠に輝き続けることができるのだ。

 

レオンハルトのホイールラインアップ

取材協力:スーパースター
TEL072-975-3600
http://www.superstar-wheel.com

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