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マニュアルシフト派が絶賛!ドイツ『CAEレーシング』に潜入

官能を刺激する絶品ショートシフター

削り出しのソリッドな質感と節度ある動きが生む得も言われぬ快感を、一度でも味わってしまえばこのアイテムなしではもう運転したくない。そんな思いすら覚えてしまう逸品が日本に上陸。ドイツ・エッセンで製作者の思いを聞いた。

わずかな手首の動きだけでシフトチェンジする心地よさ

デュアルクラッチトランスミッションを備えるスポーツカーが増えてきている昨今、純粋なマニュアルトランスミッションの車両を探す方が難しくなってきているのは皆さんも肌で感じているだろう。
ドライバーがクラッチを切り、シフトノブを動かしてギアを変更し、再びクラッチを繋ぐという一連の動作よりも、機械で行った方が圧倒的に速く、そして正確なシフトチェンジができるのだから。駆動力を途切れさせることなくギアを変更していくには、人力を排することが必須だったのだ。

サーキット用の車両はやはりオペル・カデット。徹底的な軽量化とパワーアップが施されたレーシングマシン。チンスポイラーからワイドフェンダーまで繋がるラインがなんともシブい!

減少の一途を辿るマニュアルギアだが、ポルシェでは一度は廃止したマニュアルモデルを911GT3で復活させるなど、時代の流れとは逆行する商品が世に送り出されている。
0〜100㎞/h加速もPDKの方が全然速いというのに、マニュアルモデルが存在するのには理由がある。シンプルに楽しいからだ。ギアボックスを操作するという行為は、自分の手足を使ってスポーツカーを操っているという感覚に直結する。脳みそに、ダイレクトに訴えかけてくる感覚は指先だけで操るパドルシフトでは得られないものだ。

カデットにももちろんショートシフターが装着されている。基本的な構造は現在販売されているものと同じというから、最初のコンセプトが完全に正解だったというわけだ。

そんなオールドスクールなマニュアルシフト用のパーツを作るのが、ドイツ北西部の街エッセンに居を構える「CAEレーシング」だ。日本へは昨年から本格的な導入が始まっており、すでにBMWのMモデルやVWゴルフGTIといったスポーツモデルへのアイテムが輸入されている。

CAE代表:Christian Au(クリスチャン・アウ)
エンジニアであり、サーキット好きでもある代表のクリスチャン・アウ氏。社名は名前のイニシャル+拠点であるエッセンの頭文字から。緻密で妥協のないモノ作りが信条だ。

 

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精緻極まる金属加工が走りの本能を呼び覚ます

クルマが好き、メカが好き、走るのが好き

エンジニアでありCAE代表でもあるクリスチャン・アウ氏は根っからの走り好きであり、メカ好き。エッセンに生まれ育った彼が、免許を取って最初に乗ったのはオペル・カデット・クーペ。
近くにオペルの工場があり、もっとも身近な存在だったからだ。そのクルマはわずか半年で事故で潰れてしまったが、またすぐに買い直したという。マニュアルギアボックスの操作性を改善すれば、もっと気持ちよく走ることができると考えたのはその頃のことだ。

ひとつのシフターを組み立てるのに必要な部材はなんと70個。作業スペースのツールボックスを開くと、各パートに分類されたパーツがずらりと並んでいた。整理整頓された仕事場から優れた商品は生まれる。

熟練した作業者によってひとつひとつ丁寧に組み上げられていくシフター。緻密な手作業が高いクオリティを生む。ドイツの正確なモノ作りの現場がここにある。

「気持ちいいと感じさせるのは、ハンドルとシフト。このふたつのインターフェイスこそが大事です。シフトノブが動く距離を縦と横で揃え、正方形の中に収まる動きにすることが一番気持ちいい。すべてのウルトラシフターはそのように設計されています」。
秘密は縦軸と横軸の作用点を分けてあること。こうすることで、前後左右の移動距離を揃えることができるのだ。トラス状のボディを組んでハイマウントにしているのは、もちろんその距離を短くするため。
このコンセプト自体は、友人の乗るVWタイプ1用にショートシフターを作った20年前から今に至るまで変わっていないという。

4回作り直したというM2のショートシフターを操るクリスチャン氏。すべてはユーザーの心地よさのため。妥協しない姿勢が製品に現れている。

やがてサンデーレーサーたちの間で話題となり、口コミで評判は広がっていった。早い時期からウェブサイトを立ち上げたことで、海外からの注文も入るようになったが、独立したのは2013年のこと。それまでは本業の傍らシフターを作り続けてきた。
「20万キロ走った友人のE46の320dに装着しましたが、そのクルマはそこからさらに20万キロ故障せずに走っています。耐久性でも問題ありませんね」。CNCで丁寧に削り出された70ものパーツを組み上げていく。必要な部材はすべてCAEが拠点を置くエッセン近郊で加工されたもの。顔を突き合わせて部品ひとつひとつを検討し、作り上げていくさまはまさにマイスターそのものだ。

完成品やパーツが並ぶストックヤード。手狭になってこの場所に移ってきて2年。すでにここもスペースが足らなくなってきているようで、ガレージに駐まっていたカデットは売却されてしまうようだ……。

「M2用のウルトラシフターは製品化までに4回作り直しました。今は納得の出来映えです」。改善すべきところを見つけたら、それを解決しなければ気が済まない。そんな職人気質のクリスチャン氏。
使うヒトのことを常に考え、モノにヒトが合わせるのではなく、モノを徹底的にヒトに合わせていく。使うヒトのことを無視しない彼らのモノ作りの姿勢こそがCAEの真髄。ほんのわずか手首を動かしただけで変わるギア。この快感をぜひとも味わって欲しい。

現在のデモカーであり開発車両でもあるM2。HREのホイールやアクラポビッチのエキゾーストなどでスポーティにカスタマイズされている。もちろんウルトラシフター導入済みだ。

 

CAE RACING
https://cae-racing.com

[リポート:オートファッションimp編集部]

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