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F1チームが逆指名。伝統と性能の高さを誇る「OZレーシング」本国リポート

OZレーシング ホイール 工場 OZ RACING WHEEL

“レーシング”のDNAを市販モデルに宿す、
イタリア名門の歴史と工程に迫る

数多くの名作ホイールを生み出してきたイタリアンブランド、OZは北イタリアの地から全世界80以上の国へ向けて、高品質の製品を送り出している。
そんな彼らのホイール製造に対する真摯な姿勢を現地で垣間見た。

 
チームから逆指名を受けるレーシング用ホイール

イタリア北部ヴェネト州の街、サン・マルティーノ・ディ・ルーパリに『OZレーシング』は根を下ろす。
シルバノ・オゼッラドーレとピエトロ・ゼンというふたりのイタリア人が、隣町のロッサーノ・ヴェネートに小さなホイール工房を立ち上げたのは、1971年1月4日のこと。ふたりの名前の頭文字”O”と”Z”を取って、オーゼッタ。英語読みで”オーゼット”と名付けられたブランドは、ミニ・クーパー用に製作した10インチのホイールで一躍有名になっていく。レースとの関わり合いは当初から深かったが、レーシングディビジョンがスタートしたのは1984年のことだ。現社長のクラウディオ・ベルノーニ氏がリーダーとなって、本格的なレース用ホイール製作の幕が上がることになる。
一番最初に装着されたのは、F1の「アルファロメオ・ユーロレーシング」。そこからの快進撃はレースファンならばよくご存じだろう。F1を始め、WRC、INDY、ルマン、WTCC、DTMといった、名だたるレースで勝利を獲得するレーシングマシンの足元を支え続けているのが『OZ』のホイールであった。

「OZを履けば勝てる」と、チーム関係者が口にするのにはワケがある。レーシングカーの出力や重量、動き、タイヤなど、ホイールに関係するすべてのデータを解析し、車両ごとに最適なレーシングホイールを提供しているからだ。つまり、ワンメイク以外のレースは、すべてのチームで使用しているホイールが異なる。
例えば、F1の世界。メルセデスAMGペトロナスとスクーデリア・フェラーリでは、まったく違う仕様であり、仮にメルセデスF1用のホイールをフェラーリが履いたとしても、100%の能力を発揮することはできない。究極のオーダーメイドとも言うべき、レーシングホイールなのだ。
ちなみに、フェラーリのF1チーム用は塗装されていないという。もちろん軽量化のためだが、高度なメンテナンスが必要となる。チームの求めるスペックと、それを引き出すことを担う”OZLAB”のエンジニアだ。

「チームと共に戦っている」と彼らは言う。複数のチームを担当するが、それぞれのチーム間で技術的なやりとりは一切ない。秘守義務によって守られるが、それ以上に担当するチームを勝利に導くためのホイールを造るというプライドがあるからだ。
F1とWRCで通算150勝以上を獲得しているという事実。4輪のみならず、モトGPを始めとする2輪のモータースポーツシーンにおいても、『OZ』のシェアは伸び続けている。
OZが製造するホイールのごく一部分と思っていたレーシング部門は、実は彼らを根底から支える太く大きな屋台骨。あらゆるコンペティションシーンで鍛えられた技術は、アフターマーケット向けのホイールにフィードバックされていくことになる。

 

 

製作現場がもの語る、高度な技術で生まれる”OZ”の作品たち。
次ページでは、その全貌について探ってみる。

【↓次ページに続く↓】

 

高度な技術と徹底した管理下で
生まれる”OZ”の市販モデル

現在、”OZ”が最も売れている国は、ドイツ。「TÜV」という厳格な検査機関をクリアしなければならず、その基準はヨーロッパの各国で採用される。
ホイールは、デザインが同じであってもサイズが異なれば別の商品と見なされるため、各サイズごとに検査申請を行う必要がある。OZは、”OZレーシング”、”Xライン”、”MSW”、”スパルコ”という4ブランドを展開。総デザインは合計で70種類にもおよぶ。サイズレンジも14〜22インチと幅広く、商品数は約30000点を数えるという。

『OZ』のアフターマーケット向けは、すべて”TÜV”認証を取得済み。彼らのリリースするホイールが確かなものであり、200km/h以上のハイスピードな領域を常とするアウトバーンという過酷な状況でも、安全で安心に使用できるという保証がある。
欧州のユーザーとしては、TÜVを取得していないパーツ装着は危険であることを認識し、違法であることも理解している。そんな環境下の厚く支持を受けるには、品質の高さが必要とされるのは言うまでもない。

また、低圧鋳造とフローフォーミングを行う『OZ』の工場では、切削前に1本ずつX線を使った検査を実施。クラックなどの不良を発見するためだが、完成最後のチェックも怠らない。
また、1本1本熟練のスタッフが丁寧に磨きを掛けるなど、機械と人間による二重三重のチェックが製品のクオリティを高く保っているというわけだ。

また「R&D」でも興味深いものを見ることができた。ドイツ・ニュルブルクリンクの走行状況を再現できるというシミュレーションマシンだ。
ホイールとタイヤを装着し、車両の重量やサスペンションなどの数値を入れると、ニュルブルクリンクを実際に走っているような動きが作り出せるというもの。ホイール内側に取り付けたさまざまなセンサーから、コース上でどのような荷重が加わるかを読み取るのだ。

ここでは、ホイールに加わる衝撃やホイールが歪んでいく過程を測定。市販品はもちろん、レース用ホイールを製作する際にも、ある程度スペックを実測した上でチームに提案できるので、プロジェクトの進み方が早いのだそうだ。
ちなみにテスト走行距離は3万5000㎞にも及ぶという。

 

「TÜV」を100%取得する”OZ”の製作現場へ

インゴットの状態で積まれた大量のアルミ材。ここからOZのホイール作りが始まる。
そして、巨大な溶解炉が3基。熱量は強烈でありドアを開けた状態では近寄れないほど。その温度管理は重要な要素となり、鋳造工程前にも温度を保つための炉が備わる。下の写真は、低圧鋳造を行う巨大なマシン。溶けたアルミ材の圧入から成型、冷却までがコンピュータによって制御されている。冷却する部位や温度が重要という。

こちらは、低圧鋳造に用いる金型のカットモデル。湯口から入ったアルミがどのように流れていくかが分かるようになっていた。

広大な工場には、現行モデルから懐かしいモデルまで、ホイールの金型が整然と保管される。その数は膨大な量で、46年の歴史を感じさせる。鋳造の工程を終えたホイールが向かうのは、X線を使ったチェック。1本ずつマシンにセットし、”す”が入っていないかどうか検査を行なっていく。
製品のクオリティを高く保つためには必要な工程なのだ。

そして、検査が終わったホイールはマシニングセンタによって細部を加工。5軸マシンの刃先を動かすプログラミングの技術は、レーシングホイールの製造工程で鍛えられたもので、複雑な形状を削り出すことができる。
また、圧延工程でも温度やローラーの当て具合を細かく管理。長年の蓄積が優れたホイールを生むわけだ 。

ストレステストやインパクトテストなど、TüVはもちろん日本のホイール規格であるJWLやVIAに準拠したテストマシンが並ぶ。品質に対する姿勢は揺るぎなく、顕微鏡下でも製品のチェックが行われるなど、微細なクラックも見逃すことはない。

 

 

逸品は熟練の手によって創り出される

OZ JAPAN CEO/Akihiro Uchiyama氏とBusiness Development Manager/Andrea Bernoni氏

 

圧巻の歴史と次世代への施策

OZの最初の作品であるミニ・クーパー用の10インチホイール。ここからすべての歴史が始まった。

なお、本社には、製造のすべてを行なうファクトリーとともに、46年に渡るホイール製造の歴史を記録したミュージアムを併設。処女作である10インチのミニ用ホイールを皮切りに、懐かしの名作もあれば、これが履きたかったという憧れのモデルがズラリと並ぶ。もちとん、レーシングホイールも歴代のものが多数陳列されており、OZはレースとともに歩んでいるということを実感する。
積み上げてきた過去も偉大だが、未来に向けた研究も抜かりなし。例えば、”フォーミュラーE”向けの18インチを開発して供給したことによる次世代レーシングホイールでのアドバンテージや、学生フォーミュラへのホイール供給など、人材面への方策も怠っていない。

今から34年前にスタートしたF1用ホイール。
鍛造材こそ日本メーカーから購入しているが、高い性能を生み出せるのは加工の技術があってこそ。チームから逆指名を受けるのは、勝つことができるホイールだからだ。

FIA-GT3やWRCでもそのシェアは高い。競技用としてメーカーやチームが欲するスペックを実現できるノウハウをもつ。

フォーミュラー・スチューデント向けのホイールも供給。これからの自動車産業を支えるエンジニアに”OZ”を知ってもらう活動でもある。

多種多様なデザインを手掛けてきたことがわかる陳列。名作や記憶に残るモデルが多いのも、46年間アフターマーケットに注力してきた証拠。

一般的なホイールメーカーは、市販量産車へのOEMが会社の大きな収益になっている場合が多い。
しかし『OZ』は2000年頃を境に、一部のスペシャルなモデル向け以外のOEMを停止している。これは自らのブランドとしてコントロールすることが難しかったからというが、アフターマーケットとレーシングで十分にビジネスを行なうことができているという背景がある。
他のホイールメーカーとは真逆であり、それだけ我々カスタマーに近いとも言えるだろう。

【詳しくはこちら】

OZジャパン
http://www.oz-japan.com

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