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独特のサウンドはチューニングカーの証? よく耳にする「音」の正体とは

音でチューニングを主張した平成の時代

 街なかを走るチューニングカーが注目されるのは、エアロパーツや車高といった外観だけじゃない。フツーならば聞こえるはずがない、イジった証ともいうべきサウンドも理由のひとつだろう。パッシューン、シュルルル、バキバキ、シャラシャラ……。ノーマルのクルマならば決してあり得ない、様々なサウンドを発するチューニングカー。独特の音はいったいどこで発生しているのか、その理由は何なのかを探ってみよう。

 まずはアクセルをオフにしたとき、エンジンルームから聞こえる『パッシューン』って音。タービンが過給した圧縮空気を開放する「ブローオフバルブ」が音の出どころで、バルブが開いて空気が抜けるときに放たれるサウンドとなるワケだ。昔からターボ車ならではのサウンドとして人気だったが、拍車をかけたのは25年ほど前にブリッツが発売した『スーパーサウンドブローオフバルブ』。性能はもとよりサウンドにこだわった製品で、当時はライバルを寄せ付けない絶大な人気だったと記憶している。
*下写真は現行型ジムニー用の参考出品モデル

 続いてはキノコ型をした剥き出しタイプのエアクリーナー。アクセルを全開しているときは「シュゴー」や「キュイーン」といった吸気音、そしてアクセルをオフにすれば「シュルルル」という、ブローオフバルブに似た音が聞こえる。これはブローオフバルブで逃がし切れなかった圧力が、タービンに戻って来るときの”バックタービン”といわれる音。同じタイミングで起きるので混同しやすいが、似て非なるサウンドなのである。

 次は駆動系。ステアリングを切ってゆっくり進むとき、下まわりから『バキバキ』といった感じの音を出すチューニングカーを見たことはないだろうか。何だか不安になってしまう音だけど、決して壊れているワケではなく、音の源は機械式LSDのチャタリングと呼ばれる作動音だ。LSDとは内輪の駆動ロスをなくすのが基本的な役割で、機械式は駆動トルクでクラッチを圧着して両輪の動きを制御する仕組み。低速のときは駆動トルクが少ないためクラッチの作動が断続的に行なわれ、その際に発生するのがチャタリングによる振動だ。使用オイルで多少は軽減できるが、効きを強めた機械式LSDは音や振動が大きくなる傾向がある。

 最後は同じ駆動系で強化クラッチ。クラッチペダルを踏んだとき「シャラシャラ」と音の出る製品があり、かつては”強化クラッチ=ハイパワー=イジっている”、とチューンニングカーの代名詞ともいえるサウンドだった。この音はラグドライブ方式と呼ばれるクラッチだけの特徴で、ペダルを踏み解放されたクラッチプレートが、プレッシャープレートやコネクトシャフトに接触した際に発生する。ただし、最近は静かな強化クラッチを望む人も多く、純正と同じストラップドライブ方式を採用した製品も少なくない。

 そういえば、最近はこういったチューニングカー特有の異音をめっきりと聞かなくなった。いまやEVやエコカーなどの普及で”音”で主張する時代ではないかもしれないが、なんだか少し寂しい気もするような。

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