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クルマのエンジンを制御するコンピュータは劣化する!電機部品が液漏れしている可能性も

突然のエンジン不調は電気系不良の可能性大

 一般財団法人 自動車検査登録情報協会によると、平成30年3月末の乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.24年とのこと。乗用車の使用年数は徐々に伸びつつあるというがその一方で、年間360万台のクルマが廃車になっている……。

 廃車になる理由はいろいろあるだろうが、一番辛いのは「ずっと乗り続けたい」と思っているのに、クルマが動かない=不動車になって廃車にせざるを得ないパターンだ。とくに最近目立ってきているのが、スターターは回るのにエンジンがかからない、アイドリングが安定しないなどの症状が出て、各部をいろいろ点検した結果、エンジン制御用のコンピュータ=ECU(Electronic Control Unit)に原因があると言われるケースだ。

コンピュータの製廃で修理不能というケースも

 現代車の多くは、なかばコンピュータで動いているようなものだ。これをつかさどっているECUのトラブルは厄介で、症状が出たり出なかったりと気まぐれであったりする。車両診断機をコンピュータにつなぎ、自己診断機能でエラーコードをスキャンしようとしても、コンピュータ自体が壊れてしまうと、そのエラーコードは示されないので、原因の特定が難しいとされる。

 最近は家電製品でもこの手のトラブルが多く、例えば冷蔵庫が冷えなくなって修理を頼むと「コンピュータ基盤が壊れていました。でも、補修部品が製造廃止なので直せません」といった類の話は珍しくない。

 パソコンや家電製品だって10年以上も使えることは稀なのに、高温多湿+絶えず振動にさらされる劣悪な環境にあるクルマのコンピュータ=ECUが、経年劣化でトラブルを起こしても何ら不思議ではない。そして、実際にECUのトラブルは多く、新品に交換しようとしても純正ECUが製造廃止になっているクルマが増えてきている……。

 それではもし、愛車のECUが壊れてしまったら修理を諦めるしかないのだろうか。実はまったく心配はいらないのだ。

 ECUのことはECU専門店に相談すればOKだ。今回は、国内唯一のECU修理専門会社「キャニーエクイップ」を取材し、ECUトラブルの現状や原因、そして点検やリフレッシュ、修理について伺ってみた。まずは、どのような症状が出たときにECUが壊れた可能性があるのかを、湯浅竣介代表に聞いてみた。

「よくある例は、セルは回るのにエンジンがかからないとかエンジンストールですね。それから、ハンチング・ラフアイドルといったアイドリングの不安定。AT車ならギアが2速、3速に固定されたり変速時にもたつくなどの変速不良。O/D(オーバードライブ)ランプ点滅やエンジンチェックランプ不灯(キーON時)などがあります。こうなると車検も通らなくなります。一例ですがご依頼の多い第二世代の(日産BNR32、BCNR33、BNR34)スカイラインGT-Rでいえば、エアコンのコンプレッサーのマグネットスイッチが入らないというのもECU起因のトラブルであります。また、パワートランジスター(点火系統)に点火の指示を出す部分が壊れて、点火コイルがパンクする場合があり、これもECUが原因です」と語る。

 では具体的にECUが壊れるというのはどういうことなのか? そして修理の内容について伺ってみた。

「ECUの内部には、電解コンデンサという部品があり、この電解コンデンサが経年劣化で液漏れを起こし、その漏れ出した電解液が基板やほかの電子部品を腐食し、プリント回路にダメージを与えたり、基板上のICやトランジスタ、ダイオードなどまでやられてしまうことがECU故障の大きな原因です。修理の際は、その寿命が来た電解コンデンサを新品に交換し、電解液がついた基盤を洗浄、メッキ処理を行い、損傷を受けた基盤を復元、ハンダのクラックなどの点検、劣化補修などを行います」

「国産車のECUでいえば、最近はボッシュ製が増えてきましたが、ひと昔前のクルマだと、トヨタ系はデンソー製、日産は日立製、三菱などは三菱電機製のECUを採用していて、同じ年式のクルマでも、日立のECUの部品より、デンソー、三菱電機のECUの部品の方が、耐久性が劣る傾向があります」

「その他、エンジンから漏れたオイルがハーネスを伝ってECUまで垂れてきたり、ダッシュボードの上にこぼしたコーヒーや飲み物が、ECUにかかってしまったり、雨漏りでフロアに溜まった水にECUが浸かってしまったといった例もいくつかあります」と湯浅代表。

 コンピュータは“ブラックボックス”といわれる通り、中身が見えづらく、エンジンその他にトラブルが出たときにも、その症状の原因がコンピュータにあることを見極めるのも難しい。

故障して大事になる前の点検が重要

 キャニーエクイップが行う「点検サービス」の場合、ECU本体を同社に送り、専用機器によってECUを総チェックするメニュー(1000~5000円)となっている。第2世代スカイラインGT-Rをはじめ、1990年代の名車をいまでも大事に乗っている人は、とくにトラブルの予兆がなくても、いまのうちにECUのコンディションをチェックしてもらうといいだろう。もっとベターなのは、リフレッシュサービス(2万円)。これは各部の点検に加え、経年劣化している部品の全交換とハンダの劣化などを補修するもの。

「当社のモットーは『Long Life is beauty』と『ひとつのものを愛し続ける美しさ』にこだわっているのですが、ECUも壊れてからの修理となると、なかには基板に穴が空くほど焼損している酷いECUもありまして……。こうなると私たちでも修理できなくなってしまいますので、故障する前のリフレッシュを奨励しております。故障する前なら工程も少なく、時間的にも費用的にも低コストで済むので、お客様にはメリットしかありません」

「なお、リフレッシュサービス、修理サービス(3万円)ともに、当社では10年間のロング保証をご提供してお客様にお届けしています。また自動車用のECU専門の会社なので、ECU以外のトラブルが生じている可能性などについても、症状からアドバイスできるのも強みです」と田村元臣取締役。

 国産車ならほとんどの車種を取り扱っており、輸入車でもポルシェやミニ、ジャガーなど各社に対応。ROMチューンをしてあるECUでもリフレッシュや修理可能。ただ、すでに修復履歴があるようなECUは、ハンダ不良や純正部品以外の部品を使っていることもあるので、要相談(追加作業費がかかる)となる。

【詳しくはこちら】

取材協力:キャニーエクイップ

http://cannyequip.com/

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