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【SUPER GT Rd.5 富士500マイル】上位3位にトヨタ、ホンダ、日産そろい踏み! 勝負行方を分けたピットタイミング

長丁場レースでミスをしない重要性

 通常は300km以下のレース距離で争われるSUPER GTだが、富士スピードウェイ(静岡県)での2戦はレース距離が長い。特に今回の第5戦は500マイル(約800km)とシリーズ屈指の長丁場。気温、路面温度、そして湿度も高く、ドライバーやマシン、チームスタッフ全員にとってタフなレースとなった。

 公式サイトやモータースポーツ専門サイトで報じられているように、GT500クラスは、「No.6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/山下健太組)」が前戦のタイに続いて2連勝を飾った。

 そしてGT300クラスでは、「No.87 T-DASH ランボルギーニ GT3(高橋翼/アンドレ・クート/藤波清斗組)」が嬉しい今季初優勝を飾っている。

 詳しく結果を見てみると、GT500は6号車に続いてNo.1 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組とNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組が2~3位で表彰台を獲得。

 LEXUS LC500が勢いを持続させて連勝記録を4に伸ばす一方で、3メイクスが表彰台を分け合い、Honda NSX勢とNissan GT-R勢の後半戦にかけての反撃も期待できる。まるでシナリオ通り、予定調和を絵に描いたような結果となった。

 一方のGT300クラスは本命と目されたチームが様々なハプニングで後退するなか、2位が開幕戦の3位以来2度目の表彰台となるNo.52 埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪薫一/吉田広樹組、3位には昨年から参戦を開始、今回がチームベストを更新したNo.34 Modulo KENWOOD NSX GT3の道上龍/大津弘樹組が続いた。

 メーカー系のトップチームが名を連ねたGT500にくらべると、GT300で表彰台に上ったメンバーの顔触れは新鮮そのもの。しかし上位から外国製のFIA-GT3、日本固有のマザーシャシー、そして外国製だが国内ブランドのFIA-GT3と、こちらも予定調和のように見ることもできる。だが、これはあくまでも偶然の産物でしかない。

 

運とチームの判断が合致してレクサス2連勝

 優勝するため、表彰台に勝ち残るために“運”は必要だが、前提条件としてチームとドライバーがミスなく速く走らせることが必須。今回は、まさにそんなことが証明されたレースとなった、と言えるだろう。

 6号車の“運”は、4度目のピットイン。そもそも予定通りだったようだが、直前のアクシデントでセーフティカー(SC)が導入され、レースを大きく左右する。アクシデントの発生を知ったピットはSCの導入を予想、ドライブしていた山下に「ピットイン!」と指示。山下も予定通りピットに向かった後でSCの導入が発表されている。

 ピット作業を素早く終え大嶋に代わってピットアウトしていった6号車は、ピットロードエンドでコースインの禁止を告げる赤信号が点灯される前にコースに出ており、これは唯一最高のタイミングだった。SCが除外された後に一斉にピットインしたライバルたちとは大きな差ができてしまい、これによりレース後半を快走したことは言うまでもない。

 SC導入明けに一斉にピットインした各車。日産陣営では写真のようにピットが大混雑で、タイムロスも少なくなかった。この間に、優勝した6号車はSC導入の直前でピットインを済ませて悠々トップを奪ったのだった。

No.87 T-DASH ランボルギーニ GT3が後半戦トップで折り返し

 一方のGT300ウィナー、87号車の場合の“運”は、奇策がズバリ的中したこと。39周目に最初のピットインを行ない、クートから藤波に交替、ピットアウトすると翌40周目に再度ピットインして藤波から高橋に交替した。これでピットイン義務を2回消化すると同時に、多くのライバルがひしめきあう渋滞個所を避けて走ることになり、彼ら本来のペースで周回を重ねることができたのだ。

 もっとも、彼ら本来のペースは決してライバルを上回るものではなく、No.25 HOPPY 86 MCの松井孝允がマークしたレースのベストラップに比べると1秒以上も遅いタイム。しかし、3人が揃って1分40秒台前半でタイムを刻んでおり、これが13番手からの逆転に繋がった。

 奇策と言えば、GT300クラスの優勝候補だったNo.25 HOPPY 86 MCも、タイヤを左サイドの2本交換という奇策に出たのもひとつ。チームに確認はできてないが、ポールからスタートした52号車がソフト目のタイヤでスタートしたことで判断したのかもしれないが、52号車は最初のスティントでもタイヤ無交換。最後の3スティントを何と1セットで走りきるという離れ業も見せている。

 これにはブリヂストンタイヤのパフォーマンスも見逃せないが25号車の敗因は、何よりもハプニングが多すぎたことだろう。他車と絡むアクシデントも多く、最終的にもコースアウトさせられてしまいレースを終えている。

 予期せぬアクシデントも優勝にはたどり着けない要件だが、ミスのない勝負を続けアクシデントを避けてゆくしかない。38号車のアクシデントではリプレイのスロー映像では外れて転がるホイールナットが確認できている。勝利に向け厳しいながらも要因究明を極めてゆくばかりだろう。

 奇策がピタリとはまる“運”ももちろん必要なのだが、勝つための前提としては、言い古されたことだが『チームとドライバーがマシンをミスなく速く走らせることが必須』ということ。その大原則を、改めて思い知らされたSUPER GT第5戦の富士500マイル。本当に意義深い1戦だった。

 

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