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「自動運転」の技術レベルは? 東京五輪で大きく進化する理由にナットク

いま日本で買える自動運転に近いモデル

 自動運転テクノロジーの進化は加速するばかり。法整備が課題とされていますが、日本でも道路交通法の改正により、自動運転作動中においてはドライバーが運転中にスマートフォン操作する「ながら運転」が認められる方向なほどの進化ぶり。日産からは、高速道路上においてハンズオフ(手放し)が可能な先進運転支援システム(ADAS)の「プロパイロット2.0」が発表され、新型スカイラインに搭載されることになりました。

 はたして、移動中に運転から解放されるレベルの自動運転車は、いつ登場するのでしょうか。それとも、じつはすでに販売されているものの、法規制で機能を封印しているようなクルマが路上を走っていたりするのでしょうか。

自動運転と呼べるのはレベル3から

 2019年5月、道路交通法が改正され、自動運転に対応した内容になったことが話題となりました。シチュエーションによって完全にクルマ側で制御を行なう自動運転で走行している際には、ドライバーは周囲の監視などをしなくてもよいという風に改正されるのです。

 具体的にいえば、通常の運転中では「ながら運転」とされ、罰則も厳しくなったスマートフォンやナビ画面の凝視が可能に。さらに、そうした「ながら運転」が許される自動運行装置についても明確に定義されることが決まっています。

 つまり道路交通法で“自動運転”の基準が明確化。自動運転として認められる自動運行装置というのは、人間が関わらなくともクルマが安全に走ることを可能とする自動運転技術を指すことは間違いありません。

 自動運転については「レベル”5″ 」といった数値で表現していますが、レベル2までは運転支援システムといえる内容で、あくまでも運転の主体は人間(ドライバー)。つまり、道路交通法で「ながら運転」が認められるにはレベル3以上の自動運転技術が実装される必要があります。ちなみに、レベル3の自動運転というのは、特定の状況において自動運転を行なえるというもので、”完全”自動運転とは異なるので誤解なきよう。

 

日産スカイラインはレベル2の上位バージョン

 さて、国産車でもっともハイレベルな自動運転技術といえば、冒頭で記したように日産スカイラインが搭載する「プロパイロット2.0」でしょう。ZF社製のトライカム(三眼カメラ)を使ったこのシステムでは、高速道路においてハンズオフ運転が可能。もちろん足の操作(加減速)も機械任せですからドライバーは操作から解放されるのです。

 では、「プロパイロット2.0」はレベル3の自動運転なのか。これは違います。「プロパイロット2.0」においてドライバーは周囲の監視を含めて、システムがきちんと作動しているかを監督する必要があるのです。高度な運転支援システムですが、自動運転の分類ではレベル2のクラス。運転操作自体はすべてクルマが担うケースでは「レベル2.5」といった表現を使うこともありますが、あくまで俗称です。

 つまり、日産の「プロパイロット2.0」ではドライバーがシステムの監視をしているかを常に確認する必要があります。そのためにドライバーが目をつぶっていないか、よそ見をしていないかを監視するモニタリングシステムが搭載されているのです。

 こうしたドライバー監視システムは、さらに上のレベルの自動運転になっても必要。すべてをクルマに任されることができるレベル3の自動運転では、いつでもドライバー(人間)が運転を引き継げる状態であることが求められています。

 ですから、少なくとも自動運転レベル3においては、居眠りや飲酒はもってのほか。逆に、システムが正常に作動している限りにおいては、ドライバーは周囲を監視する必要はありません。スマートフォンやナビ、パソコンなどの画面を注視するのが道路交通法で許されるのは、そういう理由です。いつでも運転を引き継げるよう待機しているのであれば、他の作業をするのはOKというわけです。

 

東京五輪での実用化を目指す

 こうしたレベル3の自動運転は高速道路の渋滞時を主に考えているというのが現状ですが、日本においては2020年の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングで運用することが想定されています。政府や東京都などの行政が五輪開催時での実用化を促進しており、道路交通法の改正はその目標に合わせたもの。オリンピック・パラリンピックを機に、日本の公道に自動運転ムーブメントがやって来るのです。

 では、日本で自動運転レベル3が公道を走れるように法整備などが整ったとして、すぐにでも公道を走ることのできるクルマはあるのでしょうか。衝突軽減ブレーキなどのADAS(先進運転支援システム)については普及が進んでいる国産車ですが、すぐにでもレベル3の自動運転が可能なモデルというのは残念ながらありません。

 

アウディは自動運転機能を搭載

 一方で、輸入車に目を向けるとアウディA8という本国ドイツにおいて渋滞時にレベル3の自動運転をテスト実走したモデルが存在します(ドイツでも型式認証基準の問題により現時点ではレベル3自動運転は不可)。

 日本では、法規制に合わせてレベル3の機能は封印されていますが、A8はすぐにでもレベル3の自動運転が可能といえます。とくにA8では前方の空間センサーとしてLiDAR(ライダー)を用いているのが技術的な特徴で、周囲の状況に合わせて自動的な車線変更も可能となっているほど高いレベルにあります。

 また、自動運転といえば「オートパイロット」の名前でADASを展開しているテスラのクルマ(モデルSやモデルXなど)も見逃せません。同社のホームページには『完全自動運転 対応機能を提供できる先進のハードウェアを標準装備。ソフトウェアアップデートを通して継続的に機能が向上するよう設計されています』と明記されているほどです。

 その完全自動運転を可能とするセンサー群は8台のサラウンドカメラ、12個の超音波センサー、そしてレーダーによって構成。ほとんどがカメラによるシステムなので昼間と夜間で同等のセンシング性能を維持できているのかなど疑問もありますが、販売エリアの法整備に合わせてシステムをアップデートできるというのは強み。自動運転レベル3を利用できる最右翼といえそうです(写真下はテスラ モデルS)。

国産車に自動運転機能は?

 では、国産各社は2020年に自動運転レベル3が実質的に解禁されたときに間に合わないのでしょうか。

 まず、日産の「プロパイロット2.0」は法規制がなくなればレベル3へとアップデートするのは不可能ではないでしょう。トヨタは2015年に首都高で実施された自動運転デモンストレーションの段階で、合流や分岐を自動で行なえるようになっていました。あれから4年近く経ったことを思えば、さらに洗練されていると考えて妥当でしょう。

 同じく、ホンダも2017年にクローズドコースにおいてレベル3の実験車両をメディアに公開・試乗機会を設けていますが、その段階で2020年の市販化を前提に進めているという話がありました。また、「アイサイト」でADASテクノロジーをリードするSUBARUは、すでにドライバーモニタリングシステムを実装、居眠りやよそ見を監視。自動運転レベル3の実現に向けて、ノウハウを蓄積しているのは言うまでもありません。

 そう考えると、2020年の夏頃には、国産車においても、高速道路をレベル3の自動運転を作動させている各社のニューモデルが疾走していることが今から予想できます。

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