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素晴らしきオタク文化! 日本が誇る自動車カルチャー「痛車」がブーム再燃なワケ

クルマというキャンバスに個性を込める

 アニメやゲームなどのキャラクターイラストをボディに貼ったクルマを「痛車(いたしゃ)」と呼ぶ。この痛車がいつ頃から始まったというのには諸説あるが、存在が目立ってきたのは2000年代前半頃からではないだろうか。

 その頃のクルマ業界は1990年代から続くハイパフォーマンスカー時代の真っ只中。世の中には中古車、新車とも魅力あるクルマが数多くあり、チューニングも流行していた時代。その流れからコミックやアニメで「頭文字D(イニシャルD)」が流行り、映像では「ワイルドスピード(ファストアンドフューリアス)」が大ヒットするなど、走り系の作品が数多く誕生した。

 これらの作品をきっかけにクルマ好きになった人も多いと思われるが、実はその年代はアニメやゲームの人気もグーンと伸びた時期。それだけにいわゆる”オタク”層も広がり、彼らの嗜好とクルマカスタムが結び付きやすい状況だった。

 また、インターネットを使った、人との付き合いも急速に高まった時代。同じ趣味の人同士が集まりやすくなり、そこに痛車という面白い存在がすでにあったため自然と盛り上がっていったのである。

 痛車は「魅せること」が大事な要素なので、クルマ作りに「デザイン」という独得の作業工程があるが、ここは痛車乗り同士の”競争”もあったので急速にセンスと技術が進化。そのため、クルマをグラフィックで飾るセンスにおいては、世界でも実力や人の層の厚さもナンバーワンと言っていいレベルだろう。

 

老若男女を問わずに熱くなれる数少ないジャンル

 さて、そんな痛車世界の一部を紹介するため、今回は東京・秋葉原のUDX駐車場で行なわれた「痛車SNAP」という撮影会に伺った。この日は「ストライクウィッチーズ」シリーズというアニメ作品のファンが乗る痛車の集まりだった。

 ここに集まった作品の一部を紹介したい。例えばこちらのトヨタ・80型スープラ。オーナーは20歳代前半の男性で映画”ワイルドスピード”を見てスープラと自動車に描かれたグラフィックを見て憧れたという。

 前記したように最近の痛車は「デザイン」を強く意識したクルマが増えている。このクルマでは、背景のグラフィックにワイルドスピードに登場したスープラと同じデザイン(色は変更)を取り入れて、ひとつのデザインにしていた。

 参加車両のなかに、キャラクターが使う装備に第二次世界大戦時の航空機のテイストが盛りこまれた作品もあった。

 三菱・ランサーエボリューションVIIIでは、背景グラフィックに機体の外板を留める「鋲」のようなデザインを入れたり、作中で使われるマークやロゴを使って作品の世界観を表現。キャラクターのイラストを含めた1枚の絵として仕上げたという。このあたりはエンジン・チューニングにおける「作り込みにこだわる」部分に通じるもので、痛車作りの見どころである。

 そして、こちらのロードスターは女性がオーナー。クルマ好きなお父さんの影響で自動車が好きになり、なんと整備士の資格まで取得したほど。結果、マツダの初代ロードスターというマニアなクルマを選んだという。

 当然ながら日常のメンテナンスを自分でこなすだけでなく、愛車のスポイラーなどはお父さんも一緒に作業した手作りとのこと。

 

若者の”自動車カスタム文化離れ”を食い止める

 このように痛車乗りには「自分のクルマはなるべく自分で面倒をみたい」というDIY派が多く、また走ることが好きな人も多い。キャラクターが好きなのか、クルマが好きなのかと言う部分を問う人もいるが、ほとんどの痛車乗りのクルマに対する想いの根っこは、ほかのジャンルのクルマ好きと変わらないのである。

 じつは、開催場所となったUDX駐車場は痛車の聖地と言われているそうだ。そこで関係者に最近の傾向も伺った。「以前の痛車界は30歳代の男性が多かったが、その彼らが痛車で楽しむ様子をメディアやSNSで見た若者が免許を取得し、痛車に乗り始めている」という。ゆえに、ここ数年で痛車界は若年齢化しているし、新たな参入が多いので痛車の台数も増えているようだ。

 また、痛車乗りにはクルマ選びにも特徴があって「インターネットなどにある痛車の画像から目標にしたいクルマを見つけて、目的の車種を買う傾向もある」という。すなわちベースになっているのがスポーツカーであっても、スペックではなくイメージで選ぶケースが多いそうだ。

 さらに見栄やスペック重視でクルマを選ばない。自分の感性を優先した自由なクルマ選びをしている面が強いので、痛車には珍しいクルマも多かったりする。それにクルマ探しと同時にデザインを考えているので、購入したらすぐに理想としている痛車に仕上げる人も多いという。

 以前は作品ごとに一カ所にまとまる傾向があったが、最近は作品に囚われずにつながるようになっている痛車の世界。つまり「気の合う人同士」や「地域のグループ」で集まるというシンプルでわかりやすい傾向になってきている。そして、その「輪」は車種どころかジャンルもバラバラで、4輪と2輪の垣根もない自由さがあったりもする。

 というあたりがいまどきの痛車だが、この世界は若い世代が次々に入ってくるので「ナカの状況」はどんどん変わるだろう。だから痛車に乗っている人も大変な面があると思うが、そんなスピード感があるクルマ趣味はそうあるものではないので「ナカにいること」で得るものは多そうだ。

 そして、そんな経験を積んだ若者世代が作っていく未来のクルマ趣味の世界には今までにない面白さが出てきそうな……。日本が誇る自動車のカスタマイズ文化、ここは期待したい。

※写真のクルマは文章の内容を指すものではありません。

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