スズキ「セニアカー」で見るタイプ別のちがい
最近、注目度が高まっているのが「シニアアカー」という高齢者向けの電動カート。歩道を走行できる”電動車いす”の一種で、運転免許は不要だ。足腰の弱りから歩行が大変と感じている高齢者を対象にしており、デザインも一般的な電動車いすとは異なり、未来の小型モビリティ的なスタイルとなっている。タイヤの数も3輪と4輪があるが安定性から4輪タイプが主流だ。
歩道を走行するということで道路交通法にのっとり、シニアカーが出せる速度は人が歩くスピードに合わせてあり、もっとも速くて時速6km/hまで。大人が歩く速度は4km/hなので、多くのシニアカーはこの速度を標準値としている。
また、シニアカーは”JIS(日本工業規格)”で電動車いすのジャンルに入れられているが、通常の電動車いすとは用途や仕様が違うので「JIS T9203 自操用ハンドル形」という規定に分類される。
そのため速度以外にも”JIS”にて車体サイズや原動機などに決まりがあり、その条件を満たす車両には型式認定制度もある。そして、基準に適合した車両は、自転車向け保険「TSマーク」の適応にもになっている。なお、電動車いすは重量物が集中し、乗員も後ろ寄りに座ることから、登坂時などで前が浮かないようウイリー防止用のバーがリアタイヤの横に付いている。
シニアカーではスズキの「セニアカー」がおなじみで、現在は「ET40」「ET4E」「タウンカート」の3タイプを販売。人気があるのがET40で、連続走行距離が長く、装備も充実しているだけでなく、車体サイズも屋外での走行安定性を考慮して規定いっぱいのものとしているところが売れているポイントのようだ。では、それぞれがどうなっているのか見ていこう。
スズキ セニアカー ET40
使用者の最大体重は100kg(積載物含む)で、連続走行距離は31km。連続走行距離とはJISが設定した試験内容で計測したものなので、乗り方や地域の地形によって変わってくるとみたほうがいい。
また、バッテリーへの充電は自宅コンセントから可能でアダプターも不要。価格は36万8000円(非課税)で、セニアカーを含むシニアカーには原則、補助金の支給や介護保険の適用はない。ただし、介護レベルが要介護2以上ならば安価でレンタル可能なので役所で確認してほしい。
スズキ セニアカー ET4E
こちらはET4Eというモデルでレグシールドやバスケット、片側ミラー、情報表示部など装備を簡素化。とはいえ、車体サイズはET40と同じなので走行安定性や乗り心地に違いはない。
ET40と同じくシート幅は広く、クッション性もいい。また、乗降時は立てることもできるアームレストや、前後スライド機能を持つシートを採用。以前は乗り降りのしやすさのためにシートの回転機構をつけていたが、安全上の配慮から現在販売されている機種では採用していない。
さらに装備の簡素化と同時にバッテリー容量も小さくなっているので、連続走行距離は19kmとET40に比べると劣る。使用者の最大体重は同様の100kg。車体の価格は30万8000円(非課税)とのこと。
スズキ セニアカー タウンカート
最後は、ET40やET4Eと比べて小柄なのが「タウンカート」。こちらは小回りが効くようタイヤの切れ角も多くなっているので、コンパクトな車体と合わせて狭い場所、例えばマンションの共用廊下やエレベーターなどでも利用しやすい設計なのが特徴だ。
ただし、コンパクトなぶん対応重量が減っていて使用者の最大体重は75kg(積載物含む)。価格は37万8000円となっている。
バッテリーはET4Eと同じタイプだが、使用するモーターが違うのと車重が25kg軽いことから連続走行距離は22km。ET40、ET4Eともにこのように家庭用コンセントに合うプラグがついた充電ケーブルが回転リールにて収納されている。
スズキ セニアカーの操作方法や特徴
操作系は簡単でわかりやすい。キーをオンにして電源を入れたらスタンバイ。走行開始のときはハンドル内側にあるアクセルレバーを押し下げると前進し、レバーから手を離すと自動でブレーキが掛かる仕組みだ。レバーは左右に1本ずつあるが、これはどちらの手でも操作できるようにしてあるだけで、どちらのレバーも機能は一緒だ。
最高速はハンドル中央にあるダイヤルで設定するので、車体の能力的に最高速が6km/hであっても、ダイヤルで4km/hにセットしてあれば4km/h以上は出ない仕組み。速度の調整はレバーを押し下げる角度で調整する。
また、前進と後退は操作パネルにある切り替えレバーで行なう。いちいち操作するのは面倒に思えるが、誤操作してしまうことを避けるためには、ひとつの操作系で複数のことができるようになっているよりも、操作系ごとが独立したほうがいいという判断だ。
なお、セニアカーには全車に前後サスペンションを装着。パンクレスタイヤを履いており、屋外走行でも乗り心地や走行安定性はいい。
そして前輪が逆ハの字だが、人が乗るとサスペンションが沈み込んでタイヤはキャンバーゼロ(直立)の状態になるよう設定。これは全車同じだ。
他にも取り回しや押し歩きをすることもあるのでタイヤの回転をフリーにするレバーがシートバックに装備。このように、高齢者や家族などの声を聴きながら、より使いやすく安全に進歩を遂げているのである。