サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

スポーツカーを象徴する美フォルム「ロングノーズ・ショートデッキ」が魅力だった昭和車8選

「大排気量エンジン=高性能」の時代を象徴

 昭和の国産車には、「ロングノーズ・ショートデッキ」と呼ぶボディを持つクルマが数多く生産された。フロント部やボンネットが長く、乗車するデッキ部が短いこの車体スタイルは、当時「スポーツカーの代名詞」的な意味合いを持ち、現代も古典的で魅惑的なプロポーションに多くのファンが魅了している。

 20世紀半ばまでの高性能モデルの多くは、排気量の大きなエンジンを積んでいた。排気量が大きいほうがパワーとトルクを出しやすく、スピードを出せるからという単純明快な理由である。

 第2次世界大戦以前のブガッティは直列8気筒エンジンが主役。戦後に誕生したアルファロメオ158やメルセデス・ベンツ300SLRなども直列8気筒だった。当然、全長の長いエンジンを縦置きするため、この手のクルマはボンネットが長くなる。この名残から、高性能エンジンを積むスポーツモデルのフォルムは、ロングノーズ・ショートデッキが定着し、キャビンもコンパクトに設計された。

 1950年代後半から、スポーツカーやスポーツクーペはロングノーズ&ショートデッキが主役になる。ジャガーEタイプ、フェラーリ250GTシリーズ、コルベット・スティングレイなどが代表例だ。その多くは、直列6気筒エンジンやV型8気筒以上のパワーユニットを搭載。長きにわたりロングノーズは、高性能スポーツモデルの証だったのである。

 日本ではスカイライン1500の鼻先を延ばし、無理やりグロリアのG7型直列6気筒エンジンを押し込んだ「スカイラインGT」が祖と言えるだろう。セダンボディだが、その後は2ドアのスポーツクーペが増加。その後、特に昭和の時代は、ロングノーズ・ショートデッキは多くのクルマ好きの憬れとなっていく。

 前述が長くなったが、そんなロングノーズ・ショートデッキを採用した昭和の高性能スポーツクーペをピックアップし、魅力を探ってみたい。

 

【トヨタ・スポーツ800】

 ホンダS600のライバルとして1965年春に登場した傑作ライトウエイトスポーツが「トヨタ・スポーツ800」。搭載するのは「パブリカ」から譲り受けた非力な790ccの空冷水平対向2気筒エンジンだが、空力性能に優れたロングノーズ&ショートデッキのクーペボディによって軽快なハンドリングと冴えたコーナリングをみせた。

 この通称”ヨタハチ” は、取りはずし可能なタルガトップも話題に。車両重量は驚異的な580kg、最高速度は155km/hというスペックだった。

 

【トヨタ・2000GT】

 日本で初めてリトラクタブル式ヘッドライトを採用した本格派グランツーリスモ。1967年5月に発表された「2000GT」は、大きなセンセーションを巻き起こした。ロングノーズ&ショートデッキ、そしてファストバックの流麗なフォルムで、インテリアもローズウッドのダッシュボードなど、贅の限りを尽くした。

 エンジンはヤマハと共同開発した2.0Lの3M型直列6気筒DOHCユニット。当時の日本車として最強スペックを誇った。また、フルオープンに改造された2000GTは、大ヒットしたスパイ映画「007」シリーズでスクリーンに登場したことはファンにとっては有名なハナシである。

 

 

【いすゞ・117クーペ】

 60年代に一世を風靡したスポーツカー、ベレット1600GTに続き、いすゞ自動車が生み出した高性能スポーツクーペこそ、開発コードを車名に冠した「117クーペ」だ。

 正式発表されたのは1968年10月である。ロングノーズ&ショートデッキのエレガントなグランツーリスモをデザインしたのは、当時ギア社に在籍していたジョルジェット・ジウジアーロだった。

 ハンドメイドに近い形で生産され、インテリアも高級素材が奢られた。心臓部は1.6リッターのG161W型直列4気筒DOHC。1970年にはキャブに代えて電子制御燃料噴射装置を装着した「117クーペEC」も加えられた。

 そして、73年春には量産プレスとなり、排気量も1.8リッターへと拡大。最終型では角形ヘッドライトを採用し、その美しいフォルムは80年代まで生産された。

【日産・フェアレディZ(240ZG)】

 スポーツカーの概念を変え、歴史に名を刻んだ名車といえば、日産の「フェアレディZ」だろう。究極を意味する“Z”の名称が与えられたこのクルマは、初代のS30型が1969年10月に登場した。全天候型のスポーツカーとして開発され、ロングノーズ&ショートデッキのダイナミックなクーペボディをまとっている。

 エンジンは2.0リッターの直列6気筒で、フラッグシップの”Z432″はGT-Rと同じS20型DOHC4バルブを搭載。海外向けが主役だった”240Z”も1971年11月に日本市場に投入された。グランドノーズとオーバーフェンダーを装着した”240Z・G!は、さらにロングノーズを強調したデザインとなっている。

 

【日産・サニー クーペ】

 日産のボトムを担うサニーの2代目、B110系は「隣のクルマが小さく見えま~す」の名コピーで、1970年1月に登場。その2ドア仕様「サニークーペ」は、ストレート基調の伸びやかなファストバックデザインを売りにしていた(写真はレース仕様)。

 エンジンは1.2リッターのA12型直列4気筒OHVだ。春にツインキャブ仕様の1200GXを加え、ブレイクした。1971年4月にはノーズを130mm、ホイールベースを40mm延ばして1.4リッターのL14型SOHCエンジンを押し込んだサニー エクセレント1400クーペなどの”エクセレント”シリーズを投入。「ハナが高〜い1400」のコピーを使い、ロングノーズを強調した。

 

【三菱・ギャランGTO】

 1970年11月、三菱の主役を務めるギャランに追加されたのが、ヒップアップクーペ(車体の“お尻”部分=ヒップが持ち上がっているという意味)のキャッチフレーズを与えた「ギャランGTO」だ。

 ロングノーズ&ショートデッキにダックテールのスペシャリティカーで、エンジンは1.6リッターの4G32型直列4気筒を搭載。トップグレードの”MR”が積むのは、三菱としては初となるDOHCユニットだった。

 日本仕様をアレンジし、オーストラリアや香港など右ハンドル圏にも輸出。後期モデルは排気量を2.0リッターに拡大し、フラッグシップの”2000GSR”はオーバーフェンダーやエアロパーツで武装した。

 

【トヨタ・セリカ(初代)】

 未来の国からやってきたような、スタイリッシュな2ドアクーペ。1970年秋に鮮烈なデビューを飾ったのがトヨタの「セリカ」だ。

 クーペでもハードトップでもない「スペシャルティカー」として送り出され、美しいフォルムが話題となった。デビュー時はノッチバックのクーペだったが、1973年春にファストバックの「リフトバック」を追加した。

 そんな最上級モデルの”GT”が積むのは、1.6リッターと2リッターの直列4気筒DOHC。1975年10月には排ガス対策のためにホイールベースを70mm延ばし、ボンネットを拡大した。そのため後期モデルはロングノーズがさらに強調されている。

 

【トヨタ・セリカXX/スープラ】

 第2世代のA40系セリカをベースに開発された、プレミアム志向のスペシャルティカーが「セリカXX(ダブルエックス)」。1978年4月に登場したが、海外では「スープラ」の名称で販売された。セリカの上級モデルと位置付けられ、エンジンは直列6気筒SOHC。この長いエンジンを積むためにホイールベースを延ばしたことで、ロングノーズが強くアピールされていた。

 1981年7月にデビューした2代目セリカXXは、ノーズ先端にリトラクタブル式の角型ヘッドライトを配し、スポーティ感を大幅アップ。華やかなデジタルメーターも目をひく。セリカXX(2800GT)が積むのは、日本で最強スペックを誇った2.8リッターの5M-GEU型直列6気筒DOHCユニット。1982年8月には、2リッターの1G-GEU型DOHC4バルブの2000GTを加え、さらに魅力を広げた。

 国内で「スープラ」を名乗るのは、1986年2月に投入したA70系から。ボディはコンパクト化したが、ロングノーズ&ショートデッキスタイルとリトラクタブル式ヘッドライトは受け継いだ。

 その4ヶ月後に脱着式のディタッチャブルトップを装備する「エアロトップ」を追加設定。開放感を大幅に高めた。また、3リッターの7M-GTEU型直列6気筒DOHC4バルブを頂点に、2.0リッターのツインターボも設定され、サスペンションも4輪ダブルウイッシュボーン化。途中からワイドボディをまとい、パワーユニットも一新したことで、より目立ち度も高まった。

 

モバイルバージョンを終了