サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

あおり運転を記録できるリヤカメラは必要? ドライブレコーダー選び方のポイント

タイプ別のメリットとデメリット

 あおり運転による事件や交通事故の映像が報道されるにつれ、ドライブレコーダーへの関心が高くなっている。中でも人気を呼んでいるのが、カメラをクルマの前後に取り付ける「2カメラ型」というタイプ。当初はドライブレコーダーといえば、前方を撮影して万が一の事故に備える「1カメラ型」が主流だった。それがいまや、2カメラ型は1カメラ型を上回る人気を呼んでいるという。

 その主たる要因としてあるのは間違いなく「あおり運転対策」。少しでもあおり運転被害に遭わないようにしたいという気持ちが2カメラ型の注目を集めているのだ。そんな背景の下、2カメラ型ドラレコはどんなタイプがあるのかを解説してみたい。

後方用カメラにオススメのカギがある

 2カメラ型でもっとも一般的なタイプは、車両の前方と後方を同時記録するタイプ。さらに細かく分けると、前方用カメラは車内側に設置するものの、後方用に関しては車内側(リヤガラス)もしくは車外側に設置する2タイプがある。車内側に設置するタイプが大半だが、これだとリアガラスのスモーク処理(プライバシーガラス)の影響を受けやすい。昼間なら輝度が十分得られることで、むしろ撮影用のPLフィルターのような効果が生まれて、コントラスト効いたメリハリのある映像になるが、問題は夜間などの輝度が落ちた状況。

 当然ながら前方よりも捉える映像は暗くなった中、カメラ側もその分だけ感度を上げることになり、これがノイズを増やし解像度を甘くする要因となる。そこで、最近は後方用だけに夜間での感度特性に優れるソニー製「STARVIS」をセンサーに使う機種が登場。さらにスモークガラス越しで使うことを前提に、画像処理を行う機種も登場してきている。

 そして、意外と見落としがちなのが後方用カメラの画角。前方は広い方が走行中の状況を捉えるのに都合がいい。しかし、後方用はその逆。ドラレコとしてはクルマが走行中の映像を捉えるわけだから、画角を多少狭くして後方から迫ってくるクルマの様子を捉えられるようにしているカメラの方が適切。

 機種の中には後方も広視野角を謳う機種があるが、これだとあおり運転を仕掛ける車両は小さくしか映らないことを憶えておこう。また、2カメラタイプは左右の記録、すなわち側面衝突への状況把握にはあまり向いていないと言えるだろう。

 また、リアエンドにカメラを設置するわけで、取り付けの手間がかかるというのが最大の問題点。素人では配線の取り回しといった処理が難しく、ショップに頼めば工賃は意外に高いことも少なくない。この辺をどう考えるかが最大の悩みとも言えるだろう。

車内撮影タイプは赤外線カメラがオススメ

 もうひとつの車内向けに設置するタイプ。先ほどの取り付け面では配線を引き回すことが少ないので、取り付けは簡単に行えるだろう。そして、画角については逆に車内を広いことが好ましい。これによって車内をくまなく撮影できるだけでなく、側面衝突時の状況を捉えられるという副産物も生まれるからだ。

 撮影感度についても、常に外部よりも輝度が低くなる車内を撮影すること強いられるため、できるだけ感度が高いセンサーを使っていることが望ましい。ただし、それでも夜間に照明なしで状況を捉えるのは難しいだろう。

 そこでお勧めなのが赤外線カメラ。人間の目に見えない対象物を赤外線ライトを当てて撮影することで昼夜を問わず鮮明に記録することができる。ただし、映像はモノクロとなり、人の目が不自然に光ったりと、あくまで状況記録のための映像と考えたい。まだ、機種数は少ないが、この機能は業務用途では一般的になっているほどで、裏返せば車内撮影用としては赤外線カメラでないと、特に夜間では実用にならないと思った方がいいということだ。参考までに後方撮影用としてこのカメラは使われない。赤外線ライトは遠くまでは届かないからだ。

360度タイプも2カメラがキーワード

 広い画角を捉えるという意味では、最近になってドラレコを軸に周囲360度を捉えられる「360度カメラ型」のドラレコも数多く登場している。このタイプは一つのカメラで360度を撮影するものと、二つのカメラを使って球面上に撮影できるものに分けられる。いずれも一台で機能するので、取り付けが簡単ながら周囲を広く撮影できるというメリットを持つ。

 前者のタイプは機種数も多いが、カメラが一つということで撮影可能な範囲は限られる。カメラ部を下向きに設置し、どちらかと言えば超ワイドな魚眼レンズを組み合わせて撮影するものと考えるべき。その意味では上から見た撮影範囲が360度であって、設置する位置によっては上側が切れてしまうことも少ない。個人的には、実質“180度”型と捉えている。

 一方の二つのカメラで捉えるタイプは、2カメラのデータを合成することで、まさに球面状態で周囲すべてを撮影可能。真の“360度”型と呼べるのではないかと思っている。二つのカメラを使うことで、1カメラ型や2カメラ型に迫る解像度を確保できるようになるし、映像を見る限り、360度にわたって捉えられるドラレコとして実用的なのはこのタイプだけではないか、とも思っている。

 360度型ドラレコ共通の弱点としてあるのは、周囲をグルリと撮影するため、たとえば”前方だけを鮮明に記録”というのが苦手。例えば前車のナンバープレートを確認する場合に判別が難しいということだ。一部の機種では前方モードを別に備えているが、これは2カメラを備えていないと不可能なこと。一つのカメラで360度撮影を謳う機種は、おしなべて解像度は低いと思った方がいいだろう。

 また、360度型ドラレコは車内側や側面の撮影まで可能である一方、後方を撮影するのには向かない。特にミニバンのように車室内が長いクルマだと、ほぼ後方の様子は捉えられないと考えていいだろう。360度型ドラレコで後方まで捉えられるのは2シーター車ぐらい。車内の撮影はそこそこできるが、これも暗い状況下ではあまり鮮明には映すことはできないと思った方がいい。

あおられない運転を心がけることも重要

 最後にお伝えしておきたいのは、ドラレコを取り付けたからと言ってあおり運転防止にはならないということ。ドラレコ装着したからといって、あおって来ない保証はどこにもない。むしろ、気をつけるべきは自分の運転で、日頃より自分の運転が他人に迷惑をかけていないか、独りよがりの運転になっていないか、その辺りを常に心がけることであおり運転の被害はかなり防げる。

 もちろん、あおり運転行為そのものは非難されるべきだし、やってはいけないことだ。しかし、あおられるには何らかの要因があるはずで、それをドラレコに頼っても根本の解決策にはならない(もちろん煽る側が一方的に悪いケースもある)。ドラレコに対策を頼る前に、もう一度自分の運転を振り返ることも大切なのだ。

モバイルバージョンを終了