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高齢者のハイテクEVはなんと「歩行者」扱い! スズキ「セニアカー」の知られざる世界

動くスピードは時速6kmまで 一般道では歩行者のあつかい

 いまでは自動車メーカーで唯一のラインナップになっている「スズキセニアカー」。一般的には主に高齢者に向けた“シニアカー”などと呼ばれることもある充電式モーターで動く乗り物。スズキでは“電動車いす”として3種類のセニアカーを用意。ここではそのセニアカー3台それぞれの特徴や仕様に触れつつ、なんとなくは分かっているようで、まだまだ知らないことをリサーチして行こう。

JIS規格では「自操用ハンドル形電動車いす」として規定

 主に高齢者が座りながら移動できる“シニアカー”などと一般的に呼ばれている乗り物は、JIS規格で「自操用ハンドル形電動車いす」に規定され、車いすのひとつに含まれている。「スズキセニアカー」はスズキが商標登録している電動車いすの名称で、JISの規格にももちろん適合したもの。スズキによる「電動車いす」開発の歴史は長く、1973年(昭和48年)から着手。スズキモーターチェアの発売を経て、1985年(昭和60年)には電動3輪タイプのスズキセニアカーが新発売されている。

 道路交通法では時速6km以上のスピードが出る電動の乗り物は、自動車か原動機付自転車となり、電動車いすは最高速度が時速6kmまでと決められているほか、JIS規格では最大寸法をはじめ、旋回安定性、段差乗越性、回転性能などこれ以外にもたくさんのことが規定されている。

 現在、スズキセニアカーには、標準モデルとして「ET4E」、連続走行距離が長く大型バスケットがついた「ET4D」、狭い場所でもコンパクトで小まわりが効く「タウンカート」の3車種がラインナップされている。JIS規格による性能表示では、全モデルとも旋回安定性と段差乗越性は最高点の★★★(星3つ)、回転性能については3車種のうち「タウンカート」が★★★(星3つ)をマークしている。
 この3車種の特徴や操作方法などは後で詳しく紹介するとして、次ではセニアカーに対する、そもそもの疑問について調べてみた。

歩行者扱いor自転車扱い? どこを走れるの? 免許は?

 セニアカーについて、なんとなくの知識で誤解しているパターンが多いのは、軽車両(自転車など)だという思い込み。ハンドルがついていて車輪があるのでそう思われることもあって仕方ないかもしれないが、じつは、セニアカーは道路交通法で「歩行者」として扱われているのだ。

 さらに先に申し上げた通り、最高速度は時速6kmまでと決められていて、これは、大人の早歩き程度のスピードに抑えられているため、セニアカーは「歩行者」として「歩道」を走行する交通ルールが適用。歩道のない道路では右側走行する。

 従って、歩行者ということであれば運転免許は必要なく、誰でも簡単に運転することが可能。充電した電気を使いモーターで動くために排気ガスも出ず、騒音もなく静かで、人が歩くように外出することができるというワケだ。ちなみに充電は、セニアカーに格納されている充電コードを家庭にある100Vのコンセントに差し込めばオッケー。充電を開始すると音声で知らせてくれたり、充電中や充電完了のサインは操作パネルのランプで確認できるようになっている。

 

スズキセニアカーの特徴や操作方法

 さて、セニアカーがどんな乗り物なのか少しずつ分かってきたところで、スズキセニアカー「ET4E」「ET4D」「タウンカート」について、3車種の特徴や仕様について、スズキ広報にたずねてみた。

ー「ET4D」の特徴や代表的な仕様ー

「充実の快適装備搭載モデルです。センサーが登り坂や下り坂、左右の傾きを検知し、表示灯や音声・ブザーで傾斜を知らせてくれる機能や、後進・右左折をお知らせする音声案内など、安心機能を多数採用しています。31km連続走行距離や買い物に便利な25L大型バスケットを採用し、使いやすさが充実したモデルです」。

◆価格36万8000円
◆連続走行距離31km 
◆最小回転半径1.45m 
◆使用者最大体重100kg(積載物含む)
◆音声案内、傾斜お知らせ機能
◆大型バスケット(25L)
◆買い物フック
◆レッグシールド
◆サイドミラー(左右)
◆走行距離計表示あり

ー「ET4E」の特徴や代表的な仕様ー

「基本性能を大切にしながら安心の機能にもこだわった、お求めやすい標準モデルです。扱いやすいシンプルな機能とソフトな乗り心地で、普段の暮らしをサポートします」。

◆価格30万8000円 
◆連続走行距離19km 
◆最小回転半径1.45m 
◆使用者最大体重100kg(積載物含む)
◆音声案内、傾斜お知らせ機能
◆買い物フック
◆サイドミラー(左のみ)

ー「タウンカート」の特徴や代表的な仕様ー

「街乗りを考えたコンパクトで小回りの利くモデルです。最小回転半径1.1mと小回りが利き、大径タイヤを装着しているので、歩道や建物入り口など段差のある場所でも活躍します。また、ハンドルが乗り手側に傾いており、操作し易く、狭い場所でもスムーズに運転することが出来ます」。

◆価格37万8000円 
◆連続走行距離22km 
◆最小回転半径1.10m 
◆最大体重70kg 
◆サイドミラー(左右) 
◆大径タイヤ採用
◆補助輪(転倒防止装置)

 スズキのセニアカーの操作方法だが、基本的な発進・停止については、ハンドル内側にあるアクセルレバーを押し下げるとモーターが作動して発進し、レバーから手を放せば自動的にブレーキがかかるようになっていて、主な操作は、言わば“レバー1本”ということになる。ちなみに時速4.5kmを超える速度での走行中は、ハンドルを切った角度に応じで自動的に時速4.5kmまで減速する仕組みになっている。

 また、最高速度の設定もでき、操作パネルのダイヤルで時速1km~6kmまで調整可能。アクセルレバーを一番下まで押し下げると最高速度になるのだが、レバー操作の微調整が難しい場合や、不意に一番下まで押し下げてしまった場合にも安心。それから前進・後進は、操作パネルにある進行方向のレバーを「前」か「後」に切り替えるだけと簡単。

運転免許返納やクルマ卒業後もセニアカーがサポート

 ここのところ、高齢者の運転操作ミスや高速道路逆走などによる、自動車の交通事故が社会問題になっている。そんななか、クルマの運転に不安な高齢ドライバーが運転免許を自主返納する動きも広まりつつある。

 それと同時に自動車メーカーによるさまざまな取り組みが行われているが、「スズキセニアカー」はそれに大きく貢献。クルマを卒業した後の移動手段として、そんな人たちをサポートする役割を果たしているからだ。

 免許の自主返納を考える場合、日常の生活は健康的でもクルマが運転できなくなると、「坂道が辛くて自由に出かけられない」「スーパーや病院にいくのも不便」「バス停や駅までも遠くて自転車も心配」などの不便さや心配な事柄が必ずやついてまわるもの。そんな場合、これらの悩みを解消してくれる乗り物がセニアカーだ。

 最後にスズキ広報からひとこと。
「当社は1985年からセニアカーの販売を開始しており、歴史が長く、全国に販売・サービス網がございます。そのため、ご購入時の相談に限らず、購入後のメンテナンスや各種ご相談など細やかな対応が可能です。スズキセニアカーを移動手段の一つとしてご検討いただけましたら幸いです」。

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