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全開はクルマに思わぬダメージ! サーキットで必須の「クーリングラップ」の意味とやり方

サーキット走行で必要な冷却タイム

 ドライビングの楽しさと引き替えに、クルマには負担がかかってしまうサーキット走行。油温や水温は極端に上昇するし、ブレーキやタイヤの消耗も激しい。そういったダメージを少しでも減らし、トラブルを防ぐには適度なクーリングが必要だ。愛車がドライバーに危険を知らせるサインと対処法を説明しよう。

必要時はギアポジションを上げ低回転で走る

 正確な温度を計測できる追加メーターの装着が前提となるが、一番わかりやすいのは数値で判断できる油温や水温。エンジンを高回転で使い続けるサーキットは、当然ながら発生する熱量もハンパじゃなく大きい。そのためクルマやコースによっては、数周で温度が危険水域に達するケースもある。

 そこで求められるのが「クーリングラップ」という、スピードと回転数を落とし冷却水やオイル、ブレーキまわりなどの温度を下げる走り方だ。といっても特別なテクニックが必要なワケでなく、他車の進路を妨害しないことに注意しつつ、通常よりひとつふたつ高いギヤで回転を抑えて走るだけ。そして温度が下がったのを確認したら再び通常どおりサーキット走行を楽しもう。

 夢中になり過ぎてメーターが視界に入らず、気付いたらオーバーヒートなんてのは悲惨なので、操作に余裕がある直線などで確認するクセを付けたい。オーバーヒートはエンジンのヘッドガスケットが抜けたり、ひどい場合はヘッドが歪み莫大な修理代が必要になる可能性もあるので、水温や油温のチェックは怠らないようにしよう。

ブレーキやタイヤの“熱ダレ”にも注意

 続いてはフィーリングで察知しやすいブレーキとタイヤ。いずれも摩擦により熱が発生するパーツで、ハードなブレーキングやコーナリングを重ねれば熱ダレしていく。ブレーキならペダルのタッチがフワフワしたり、明らかに効きが弱くなれば“もうヤバい”サインだ。

 タイヤもグリップが体感できるほど落ちたり、低い速度でスキール音が出るようになれば限界。エンジンブレーキを多用したり激しいステアリング操作を控えてクーリングし、それでもフィーリングが回復しなければピットに戻って長めの休憩、必要ならパッド交換やエア抜きをして次の走行に備えるようにする。

 なお走行枠の最後まで問題なく走り切ったときも、チェッカーフラッグを受けた後はクーリングしつつ、各部をできるだけ冷やしながらピットに戻るのがセオリーだ。全開走行から急に停止してエンジンを切ると、それまで当たっていた風が急になくなることで温度が急上昇し、オーバーヒートなど重大なトラブルを招く確率が高い。

 ちなみに、クーリング走行はクルマだけじゃなく、ドライバーの気持ちを落ち着かせるためにも有用。頭を冷やせば愛車が発する危険なサインに気付きやすいうえ、ライン取りやブレーキングポイントも冷静に見直せる。レースは別として一般のサーキット走行会であれば、最初から最後まで全開である必要はまったくない。

 少しの時間もムダにせず攻めたい気持ちもわかるが、休むことで大切な愛車を守れるし、ラップタイムに繋がる場合もある。せっかくのサーキットで痛い思いをしないためにも、適度な「クーリングラップ」を忘れずに!

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