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車載ユニットの理想形がここに! 「2DIN型クレードル+専用タブレット」という新提案

新発想のカーAVシステム

 パイオニア カロッツェリアが2020年6月から発売を開始した今年話題のAVメインユニットが「FH-7600SC」とそれに組み合わされるタブレット「SDA-700TAB」だ。タブレット自体をカーナビ代わりに使う手法は今までも存在したが、AVメーカーとしてのカロッツェリアがこの領域に挑戦することでどのような相乗効果が生まれるのか、そして実際に使い込んで見えてきたこのモデルの将来性についてもお伝えしよう。

タブレット利用の弱点とは?

 「タブレットをカーナビ代わりに使う」。これを聞いて「知っているよ」という声もあるだろうし、実際そうしている人もそれなりにいるハズだ。

 そもそもタブレットを車内で使う理由の最大の理由は「スマホではディスプレイサイズが小さい」という点が大きいだろう。昨今スマホの画面自体も6インチ超えも増えてきてはいるが、タブレットは解像度の違いこそあれ、最低でも7インチ、仕事などにも使えるものであれば10インチ級はザラにある。

 ただここで大きな問題が2つ発生する。まず(それなりに)重量のあるタブレットを車載する場合のパーツや配線の難しさだ。昨今ではタブレットを装着するためのクレードルが数多く発売されているが、走行中の振動にはそれほど強くはない。

 落ちることは無くても路面のギャップを超えた際には本体がブルッと揺れたりして地図を含めた画面は当然見づらくなる。さらに電源を取るためにはアクセサリーソケットやUSB端子からコードを使い接続するが、それ自体の見た目は決して良いものではない。

 そして2つめが重要で、そもそも一般的なタブレット(スマホも同様)は前述した振動のほか、夏場のダッシュボード上では70℃を超える環境での利用には対応していない。昨今の酷暑を体験している読者の方ならば容易にイメージできると思うが、この“劣悪環境”とも言える車内での利用では最悪タブレット自体が壊れることもあり得るのだ。

弱点を克服した専用機とは何か?

 こうなると前述した弱点を克服するために「専用品」が欲しくなるし、必要になってくる。そこに登場したのが今回のタブレットAVシステムである。基本は専用のクレイドル型のAVメインユニット「FH-7600SC」に、タブレットである「SDA-700TAB」をセットすることでシステムが完成する。

 “クレイドル型”を謳うとおり、専用の取り付け部や接続端子部を持つことで「SDA-700TAB」をしっかり固定、さらに電源供給やタブレット側での各種設定や操作も可能になることで「振動」と「取り付け時の仕上がり」に関して弱点を克服している。「SDA-700TAB」本体は、動作環境として「-10℃〜+60℃」を明記しており、車内での温度変化に対しても安心して使うことができる。

タブレットとしては必要十分な性能

 私事で恐縮だが、筆者は現在仕事でスマホを7台、タブレット5台所有して用途に合わせて使い分けている。ゆえにスペックや実力に関しては一家言ある(つもり)なのだが、早速その視点で「SDA-700TAB」をチェックしてみた。

 単純にスペックだけ見ると必要十分”なレベル。細かく見ると用途にもよるがメモリ(RAM)は2GB、ストレージ(ROM)は16GBと、それほど大きくはない。一方OSは「Android9.0」、SoC(システム・オン・チップ)は1.8GHzのクアッドコアと基本は抑えている印象だ。重要なディスプレイに関してもIPS式の8インチを採用、ベゼル(本体の枠)は大きめだが、解像度は1280×800ピクセルと標準的だ。

 また無線LANには対応しているが、「SDA-700TAB」単体には通信機能を搭載していない。アプリにもよるが、カーナビ機能や動画再生など行う場合、スマホのテザリング機能やモバイルルーターがあった方がベストである。

 ここまで書くとスペック不足を懸念する読者もいるかもしれないが、カーナビとして使う場合のセンサー類は3軸加速度を搭載。衛星の測位に関してもGPS/グロナス(ロシア)/QZSS(準天頂衛星みちびき)を搭載しており、実際の運用での安心感は担保されている。

さすが専用品という仕上がり

 今回デモカーとして用意された日産リーフ(Sグレードなのでオーディオの装着が自由)にこのシステムが装着されていたので早速都内を中心に実走テストを行ってみた。

 まず「SDA-700TAB」を「FH-7600SC」に取り付けるのだが、上側にあるツメの部分にタブレットを引っかけてパチンとはめるだけ、脱着もその逆で簡単に行える。実はこの「パチン」がキモの部分で、取り付けた後に軽く力を入れてタブレットを動かしてみたがガタつきなどは皆無、まるでAV一体カーナビのようなシッカリ感が出ている。

 もちろん前述したとおり、配線類は一切ないので見た目がスッキリ&美しいのは言うまでもない。また電源は「FH-7600SC」側から供給されるのでタブレット自体も自動で充電される。

 ユーザーインターフェース的にはタブレット側の位置調整も高さ(上下)、奥行きの調整が可能。もともとタブレット側が少し浮いたような形で前席側に出ていることで、すっと手を伸ばした先に画面があるので操作性も良好だ。

ビル群でも測位は十分

 「SDA-700TAB」はAndroid9.0を搭載したタブレットであることは先に説明したが、プリインストールされているアプリもほぼ「ピュアAndroid」つまり余計なアプリが入っていない素のAndroidに近い。アプリを追加するための「Google Play」はもちろん「YouTube」や「YT Music」はインストールされているが、全体的には少なめなのでRAMの2GBでも十分使えそうだ。

 テストは「Yahoo!カーナビ」や「Googleマップ」など何種類かをインストールしてテストしたが、まず大画面でナビが使える点は素直に便利と感じた。地図スクロールも「ひっかかり」が少なく全体的に軽快だ。そしてルート案内は各アプリの機能に委ねることになるが、都内の高層ビル群の合間に入っても衛星からの測位は十分で実用上、自車位置をロストすることもない。

オーディオ能力の高さに驚く

 単純にタブレットをカーナビ代わりに使うだけではなく、高機能のAVユニットを大画面で操作できるのもこのシステムの大きな魅力である。特に驚いたのはオーディオ性能だ。「FH-7600SC」は失礼ながら見た目は2DINのクレイドル型ユニットだが、この中にこれまでカロッツェリアが培ってきたオーディオ機能が搭載されている。

 スピーカーとドライバーの距離を調整する「タイムアライメント」、スピーカー出力レベルの調整、「13バンドグラフィックイコライザー」の搭載によりきめ細かな音質調整が行える。また基本のパワーアンプ部はPower MOS FET による50W×4を搭載するが、RCA出力端子を搭載することでサブウーファーや外部アンプとの接続でシステムアップを行うことができる。

 一方で、そこまで細かな音質調整は不要というユーザーに関してはデジタル処理によりパワーとハリのある低音を簡単に選べる「スーパー響サウンド」やクルマのタイプに合わせて音場を簡単に設定できる「イージーサウンドフィット」、小口径のスピーカーでも量感のある低音再生を可能にする「バスビーストブラスター」など多彩な機能を持つ。

 特に個人的には「スーパー轟サウンド」が気に入った。理由としてはこれまで多く採用されてきた単純な「バスブースト機能」によるただ低音部だけを増強したのではなく、歪みが少なく、すっきりとした中にも質感を持たせた音作りだったからだ。

 さらにカロッツェリアのAVシステムではおなじみの「アドバンスド・サウンドレトリバー」も搭載。MP3などの圧縮形オーディオの音質を補正してくれるこの機能は、スマホなどのデジタル音源を主体に聞くユーザーに歓迎されるだろう。

専用アプリでオーディオを堪能

 「SDA-700TAB」にはカロッツェリアオリジナルである「Pioneer Smart Sync for Tablet(パイオニアスマートシンク)」がプリインストールされている。これを使うことで「FH-7600SC」のオーディオ操作や音質調整を全てタブレット側で行うことができるアプリだ。

 特に大画面を活用し、楽曲のトラックアップダウンもスッと指でスワイプするだけで簡単に行える。このほかにもディスプレイのイルミネーションカラーなどの調整もわかりやすい。

 オーディオ機能に関してはBluetoothやUSBによるオーディオ、ハンズフリー通話に対応。Bluetoothオーディオに関しては高音質の「AACコーデック」に対応し、USBに関しては96kHz/24bitまでのFLAC形式で圧縮保存されたハイレゾ音源やフルHD動画の再生に対応するなど、十分過ぎるほどのスペックと言えるだろう。

未知なる可能性を秘めたシステム

 今回初となるAVタブレットシステムではあるが、使って一番感じたことはその将来性である。ベースとなる「FH-7600SC」の高い基本性能は十分に満足できる。つまり「タブレット自体が進化すれば性能はさらに向上する」という点だろう。

 「SDA-700TAB」は残念ながら通信モジュール等は搭載していないが、今後通信対応となり、さらなる大画面化、メモリーの増強やSoC(システム・オン・チップ)の高性能化などをクリアすれば“大化け”する可能性も秘めている。

 この両機を接続する端子類には特に名称は無いようだが、カロッツェリアもここを「規格化&ネーミング化」することで対応する色々なタブレットなどが選べるようになってくるハズだ。

 その点でも第1弾モデルとしての仕上がりも十分、普段の生活でも使われるタブレットを家や外出先、さらにクルマでシームレスに使えるライフスタイルが実現できる点は魅力的であると感じた。

2Dメインユニット[FH-7600SC]
●オープン価格(店頭予想価格3万2000円前後・税別)
□仕様:Bluetooth/USB/チューナー・DSPメインユニット

タブレット[SDA-700TAB]
●オープン価格(店頭予想価格3万2000円前後・税別)
□仕様:8インチタブレット

パイオニア・カスタマーサポートセンター
(フリーコール)0120-944-111
https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/

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