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日本のガラパゴス車がなぜ海外で? ABCトリオにエブリイまで揃う「香港」の「軽自動車」ミーティングの衝撃

当日集まったのは200台弱 香港でも軽カスタムが盛り上がっていた!

「香港のミーティングが凄い」。とある人に紹介されてSNSを覗いてみると、日本のカスタム系ミーティングのような、カスタムされた車が何台も並ぶ光景が飛び込んで来た。しかもそのベース車のほとんどが軽自動車で、日本国内で現行モデルとして売られている車両多数。気になって現地の人へメッセージを送り何度かやりとりすると「キミ達が来てくれるならそれに合わせてミーティングやるから来ないか」というお誘い。

 そりゃ行くでしょ、という事でいざ香港へ。行ってみると街中はほぼ日本車が走り、時々ドイツ車が走るなど、日本の都市部のそれと変わらない車両構成。読めない看板を除けばまるで日本にいるような感覚。 そしてミーティング当日、会場に到着するとカスタムされた軽自動車が200台弱集まった壮大な光景。こりゃ凄い。当たり前だが、香港で軽自動車であるアドバンテージは特にない。じゃあ何で軽自動車に乗るの? という問いかけに返ってくる言葉は「小さいクルマが好きだから」「軽自動車って世界のどこにもない。それがいい」と、何だか嬉しくなる回答。

 そこで今回その中から数台をピックアップして、香港の軽自動車カスタム事情をご紹介。
(注)これは「色々な」事が起こる以前の取材に基づいたレポートになります

香港にもいた「平成ABC」愛好者たち

 マツダ・AZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ。いわゆる「平成ABCトリオ」と呼ばれる3車種。販売終了から年月が経っているものの、良質な“タマ”は中古車価格も高めで推移、また全国各地で定期的にオーナーミーティングが開催されるなど、相変わらず根強い人気。そんな「平成ABC」をこよなく愛す方たちが香港にもいた。

 まずはAZ-1だが、パッと見のはどれも美品な個体ばかりで、みなさん大事に乗っているんだろうなーという印象。

 AZ-1登場とほぼ同時期となる1992年に弊社から発行された「ニューカー速報」や「すべて本(三栄書房発行)」もクルマと一緒に飾られていて「よく見つけたな(自社に)同じ本が残っているのか?」と思った次第。他にも日本の自動車雑誌が会場内で多く売られていて、本作りに携わっている身としてちょっぴり感動。

 このABCトリオの他にもコペンやS660もズラリ。どうも軽のオープンカーは人気のようで、最近だと型落ちになったL880Kコペンを指名買いする人が多いそう。現にファーストコンタクトを取った現地の方も最近コペンに乗り換えたようだ。

 先の「平成のABCトリオ」しかり、S660やコペンしかり、現地では販売されていないので、ほとんどの人が並行輸入で入手するのが基本とのこと。その際気になるのが値段だが、オーナーに直接聞いてみると「目安は日本の売価のだいたい倍(取材当時の相場)」とのこと。S660の国内新車販売価格が200万、中古車の値段もさほど変わらないので……うーん、みなさん凄い情熱デス。 中でもS660に関してはいわゆる「吊るし」ではなく、ボディキットやチューニングアイテムが装着された「コンプリートカー」で取り寄せている人が多め。さらにオールペンまでして入手したのがグリーンのS660。この色が国内で発表されたのが2020年なので、先見の明があったということか(?)。

 あくまでも個人的な印象だが、お金持ちの方がエスを買っていた印象。というのが、「エスは遊び用で5台目のクルマ(いわゆるフィフスカーってやつ)」という方も。リバティウォークのボディキットをフルで装着し、ホイールはワークのマイスターCR01を履いていた。

 気になったのが「カスタム用のパーツはどこからどうやって買うのか?」ということ。これは他の車種でも同様で(1)ホイールや足まわり、マフラーなど、当人にとって比較的大事なパーツは日本のメーカー製を香港内の代理店経由もしくはYahoo!ショッピングで(2)本人にとって“そこまで”じゃない専用パーツはマレーシアやタイなど東南アジアから(3)LEDアイテムや消耗品は大陸からとのこと。色々な入手経路があること、その選び方も明確なのが印象的でした。

ハスラーが香港でも販売されていた!

 このイベントのメインスポンサーは現地の香港スズキ。

 ディーラーがあるのは想像できたけど、聞けば軽自動車まで販売されているとのこと。ミーティングの翌日に店舗へ行ってみると、確かにハスラーとエブリイが展示さていた。

 この2台に加えスイフトとソリオを合わせて計4車種を香港で販売中(取材当時)。軽自動車2台の購買層を聞いてみると、エブリイはいわゆる「お仕事クルマ」として買われていくパターンが多く、ハスラーは20代~50代まで幅広く売れているとのこと。この辺りも日本のそれと変わらなかった。

 ちなみにマカオにも販売店があるそうで、そちらでは軽自動車がよく売れるそうだ。というのもマカオは香港よりもさらに面積が狭ため、それゆえ道路も狭く軽はとても重宝するとか。

 話をミーティング当日に戻す。そんな事情おなので当然ながらカスタマイズされたハスラーも数台いた。その中でも印象的だったのが、CARLTONさんのMR31S。

 バンパーガードにフォグを装着、ルーフキャリアを付けて前後バンパーは一部メッキ化。日本のハスラーカスタムと何ら遜色なく、むしろそれより攻めた仕様。

 合わせたホイールがワークの「エクイップ」。シャコタン&旧車系で履かれるイメージが強いからか、スタイルがある程度確立されている日本のハスラーカスタムでは、このホイールを選ぶ人は少ないが、あえて使っているのが新鮮で違和感もなし。そのホイールのリムを塗装してスポークをラッピング処理、全体をブラック×イエローで統一しているのもポイント。

 このハスラー他にもフランス・モンペリエを本拠地に構える「モンペリエHSC」カラーや、マクロス仕様まで。カスタマイズは自己満足の世界なので何をしても自由。それでも日本のカスタムユーザーにはあまりないアプローチ方法で、かつスタイルの幅広さが見ていて全く飽きなかった。

 先に紹介した香港スズキもデモカーとしてハスラーを展示。他のカスタム軽カーにも負けない、何とも派手なスタイル! ラッピングシートをボディ全体に貼り、その上からイラストが描いていた。そのイラスト、香港のデザイン学校にてコンペを行い、グランプリになった学生のアイデアを実現したものだそう。

一番台数が多かったL700系ミラジーノの謎が判明

 参加車両で一番台数が多かったのがミラジーノ。恐らく50台近くいて、全体の約1/4を占めていた。なぜ香港でそんなにジーノが多いのか、それはかつて香港でもミラジーノが販売されていたため。 なので中古車としてタマが多い。それに加えてマレーシアから様々なカスタムパーツが入ってくるのだとか(実はマレーシアも軽自動車カスタムが盛り上がってる国なんです。その紹介はまたの機会に!)。

 カスタムスタイルはほぼ日本のそれと同じで、最近流行のUSDM風か、ジーノ本来のスタイリングを生かしたクラシック系がほとんど。聞いたところ彼らは日本のミラジーノカスタムの、画像やコミュニティをネットでくまなくチェックしているそう。そこへマレーシアからのカスタムスタイルも加わり、独自のスタイルとして確立しているようだ。う。そこへマレーシアからのカスタムスタイルも加わり、独自のスタイルとして確立しているようだ。

 ミラジーノユーザーの中に、軽自動車専門のカスタムショップをやっている人がいた。お店立ち上げのいきさつを聞くと、もともと軽自動車が好きで個人でイジったり修理をしていたところ、そのウワサを聞きつけた軽自動車ユーザーから「自分のもやってくれ」という話が。「じゃあお店をやってみよう、という流れになったんです」とは、店長のファーさん。日本ならまだしも香港で「軽専門」、これは凄い。

 ところで、他車種に比べると「シャコタン&ツライチ」率が高かった香港のミラジーノだが、日本のそれよりは車高が高め(といってもこのくらいで十分なのだが)。「香港の警察はシャコタンにはとてもキビシイ。土地が狭いのもあり、一度目を付けられると大変(笑)。加えて日本のように道路事情が良くないので、低過ぎるとクルマが壊れちゃう」とファーさん。

「シャコアゲ」の波は香港にまで到達!

 軽自動車を中心に、車高を落とすのではなく上げる「アゲスタイル」が最近注目されている日本国内。初代ハスラーの登場以降、その流れは顕著になったが、加えて昨今のクロスオーバーSUVブームやキャンプブームも後押し。国産タイヤも参入したことにより一気に浸透していった。

 そんな「シャコアゲの軽」を香港でも発見! まずは64エブリイをリフトアップしているKAZさん。エブリイはもともとシャコタンで乗っていたそうだが、趣味のキャンプをするために、オフロードも走れるようにリフトアップしたという。 とはいえ専用パーツは香港にないので、上げ幅の数値が一番ある日本の車高調を装着。そこにサイドオーニングや自家製の縞板風のカッティングシートを、室内はお手製のラックやウッドデッキを奢り、キャンプスタイルに仕上げている。 もともとミリタリー調が好だったこともありボディカラーは「香港NAVYブルー」でオールペン。「この色はボクのラッキーカラーと占いで出たんです」。

 同じくエブリイからもう一台。同じくサイドオーニングを装着して、キャンプスタイル(彼も実際にやっている)を演出しているEDWARDさん。サイドオーニングの下にはラジカセなど趣味のグッズを置き、何とも楽しそう。

 実は彼、エブリイの他にも何台か日本車を所有。日本におけるVIPセダンカスタムのパイオニア的メーカー、ジャンクションプロデュースの「金綱」がミラーから下がったVIP仕様の15クラウンも見せて貰いました。

 所有するクルマからもわかるが、彼は大の日本好き。コロナ禍の前は何度も来日して、ジムニーのオフロード走行をしたりカスタムイベントの見学に来たり。1日でも早くお互い行き来できる日が来ることを祈るばかりだ。

 

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