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名車は「エンジン」抜きで語れない! 「RB26」「EJ20」「F20C」など異論なき「名機」6選

名機と呼ばれるエンジンはスペックだけではすべては語れない!

  国内外に名機と呼ばれるエンジンは枚挙にいとまがないが、ひと口に名機と言われてもその線引きは難しい。国語辞典によると名機とは「優れた性能を持つ名高い機械」とあるので、スペックだけで判断したらいいかといえば、それだけでは語れないのが自動車業界における名機の定義。今回は数値やメカニズムもさることながら、時間が経過しても価値が変わらないこと、長く愛されつ続けていることを加味して、国産を代表するエンジンを6機選んだ。

1)RB26DETT——モータースポーツからアフターパーツ市場までを席巻

 日産を代表する名車GT-R。50年を超える歴史の中で、S20型、RB26DETT型、VR38DETT型の3種類のエンジンが搭載されてきた。いずれも名機であるし、スペックでもそれぞれの時代をリードしてきた。開発陣の思い入れについても甲乙つけがたく、バックボーンや思想、文化についても文句なしだ。

 選ぶ基準によって結果は変わるし、メカニズム面では他の2機にやや劣るが、今回は所有している人の愛情の深さ&ファンの多さ、アフターマーケットの貢献度でRB26DETTを選んだ。

 スペックは馬力自主規制によって280㎰に抑えられていたが、モータースポーツのベースエンジンとして、600㎰までに耐えられる設計となっており、その潜在能力は圧倒的だった。特にR32GT-Rは参戦したレース(グループA、N1)で優勝を逃したのはわずか1戦。圧倒的な強さを発揮したことが、RB26DETT型の名声を高めたといえる。

 また、この高性能エンジンをパーツメーカーやチューナーが見過ごすわけもなく、バブル期という好景気の後押しもあってパーツ開発は進められ、フルチューンでは1000㎰オーバーを発揮するようになるなど、アフターマーケットの活性化に大いに貢献した。特にドラッグレースではその強さゆえ、ライバルが太刀打ちできずGT-Rクラスが設定されるなど、RB26DETT型のポテンシャルが時代を変えたといっても過言ではない。

 しかも、古いものは発売開始から30年以上経過するが、いまだチューニングパーツ市場の主力として活躍していることはこれまでのエンジン史上なかったことだ。まさにキングオブキングな名機といって差し支えないだろう。

2)L6——今だ進化し続ける日本の元祖チューンドベースエンジン

 日産の誇る名機としてもう1機上げるとすれば、それはL型6気筒エンジンだろう。フェアレディZからスカイライン、ローレル、セドリックまで1980年代中盤までの日産のミドルから大型セダンに幅広く使われていた基幹エンジン。

 古典的なターンフロー方式のシリンダーヘッドを持ち、何の変哲もない直6 SOHC2バルブで、メカニズム面もフィーリング面でも同時期のS20型(直6DOHC4バルブ)と比べると見劣りするため、L型6気筒エンジンが名機であることに異論を唱える方もいると思う。

 ただ、基本は頑丈かつ耐久性重視の設計で、何よりシリンダー間に肉厚があり、L20型なら5㎜もボアを拡大できたことが、チューニングのベースエンジンとして魅力的であった。最大排気量のL28型エンジンならノーマルの2.8リットルから3.4リットルまで600ccも拡大が可能であり、ここまでの排気量アップはS20型はもちろん、RB26型にもVR38型にもムズかしい。 一番の魅力は生産開始から55年が経過する今もアフターパーツ開発は続けられており、チューニングのバリエーションが広いことだ。排気量アップの場合もボア×ストロークの選択も幅広く、燃料供給も定番のキャブ仕様から最新のインジェクション仕様まで何でもアリ!

 特に「OS技研」が独自に開発したTC24と呼ばれるDOHC4バルブのシリンダーヘッドをL28型に装着することで、自然吸気ながら現在のエンジンとそん色のない400㎰オーバー(ノーマルは155㎰なので、NAのままで約2.5倍!)のパワーを引き出せるなど、いまだ一級品のポテンシャルを発揮することだって可能なのだ。

 また、カスタマイズの幅広さから、自分だけのオリジナルスペックで仕上げられる趣味性の高さに惹かれるオーナーも多い!

3)F20C——純レーシングエンジンをデ・チューンしたホンダ入魂の逸品

 ホンダ系の名機といえば初代NSXのC30A型、C32A型がその筆頭に上げられそうだが、ここでは2リットルで250ps/22.2kg-m(リッターあたり125ps)という驚異的なスペックを叩き出し、量産市販車として数少ない9000rpmを許容したS2000のF20C型エンジンを押したい。

 その高い性能と高回転化を可能としたのは過去の国内トップツーリングカーであるJTCCレースで使用していたアコード用純レーシングエンジンを市販車向けにデ・チューンして搭載しているからだ。それは鍛造ピストンの形状やクランクに使われた素材などから伺い知れる。

 また、F20C型はそれ以前のVTECエンジンの進化型で、VTEC機構、カムの駆動ギア、バルブ挟み角の狭角化などにより、それまでのB16A型やB18A型のシリンダーヘッドと比べるとコンパクト化されていることが見て分かる。ムービングパーツもコンロッドに現在一般化している表面処理技術が盛り込まれ、徹底的に軽量化とフリクションロスの低減が図られるとともに、吸排気系ともに効率を高める新設計部品が使用されるなど、当時の最新技術がふんだんに盛り込まれた入魂のエンジンであった。

 モータースポーツでの活躍も半端なく、特にスーパー耐久レースではあまりにも速すぎて、1つ上のクラスに編入させられるなど、その実力は飛び抜けていた。

 マイナーチェンジ後は北米向きの2.2L仕様のF22C型エンジンが国内に投入されたことで、扱いやすさは増したものの高回転まではじけるような切れ味はやや失われてしまった(それでもレッドゾーンは8000rpmと市販車としては超高回転である)。そのため、F20C型を搭載する前期型の人気は高い。

4)2JZ-GTE——パワー志向のドラッグレースやドリフトで現在も大活躍!

 ファンからの情熱、アフターパーツ業界の貢献度、モータースポーツの活躍などをAE86から搭載された4A-GE型と悩むところだが、アリスト、80系スープラのみに搭載された特別なエンジンであったことで2JZ-GTE型をトヨタの名機としてチョイスしたい。

 この3L直6ツインターボエンジンはスープラではなく、高性能スポーツセダンであった初代アリストに1991年に初搭載された。280ps/44kg-mのスペックは、RB26DETT型はもちろん、同じ排気量の三菱GTOの6G72型を上回り、当時国内最強のスペックを誇っていた。

 後期型は可変バルブいタイミング機構であるVVT-iを搭載したシングるターボに変更され、トルクを2kg-m上乗せされている。特徴はハイチューンに耐えられるエンジン本体の堅牢っぷりで、排気量も3.6リットルまでのキャパシティアップキットが社外パーツで用意されている。また、海外では1500ps以上にまでポテンシャルを引き上げたエンジンが存在するなど、まさに、1990年代版のL型エンジンといってもいいだろう。

 モータースポーツでは重量があるため、重量配分の悪さからツーリングカーレースでは早々に見切りが付けられてしまったが、パワー志向のドラッグレースやドリフトレースではRB26以上のパフォーマンスを高められることから、現在もトヨタ系マシン、チューナーの主力エンジンとなっている。残念ながら数年前に補修部品としてのエンジン供給が中止されたことで、今後は中古エンジンの価格高騰が予想されている。

5)EJ20——30年かけて研ぎ澄まされた円熟のフィーリングを味わう!

 2リットルターボクラスで名機として挙げられる三菱の4G63型とスバルのEJ20型。ともにWRC(世界ラリー選手権)で活躍し、エンジン性能を磨き上げてきたという点では甲乙つけがたいが、熟成度という点でここではEJ20型を取り上げたい。

 名機と呼ばれる理由は30年間にわたって進化し続け、数値だけでなく気持ちよさまで磨き上げられてきたことだろう。数値的には1989年1月に登場したレガシィの220ps/27.5kg-mから最終モデルのWRX STIでは308ps/43.0kg-m、スバルのモータースポーツを統括するSTI(スバルテクニカインターナショナル)が製作した手組みのコンプリートエンジンに至っては329ps/44.0kg-mと同じ型式ながら30年間で109ps/16.5kg-mも向上している。

 そこまでパフォーマンスを引き上げられた理由は基幹エンジンとして、長く使い続けるため最初の設計段階に余力を持たせていたこと、WRCで勝つために戦闘力を高める必要があったためだ。そのため、メカニズム面に新機構を毎年導入し、手を入れていった。

 ただ、’07年の3代目以降のWRX STIからは数値が変更されておらず、このあたりからはハードウェアの変更ではなく、ユニットの持つ潜在能力をその時の最新技術で年々変化する環境性能を含めて磨き上げている。これによって信頼性も含めて円熟味を増したエンジンに仕上がっている。最新こそ最良かもしれないが、長年積み重ねにより仕立てられた上質な味わいも捨てがたいものだ。

6)F6A——軽自動車で200㎰を引き出せる高い強度と耐久性が魅力

 名機は大排気量だけでなく、軽自動車にも存在する。普通車と異なり現在も馬力規制が存在するので馬力はどのメーカーも64㎰で横一線。スペックの差はトルクで比較することになるのだが、ノーマルエンジンで見るとダイハツの直4DOHCターボであるJB-DET型の11.2㎏-mがスペックでは抜きんでている。

 しかし、潜在能力と考えると3代目アルトワークスやカプチーノなどに搭載されたF6A型の方が上だろう。このエンジンは軽自動車最強と呼ばれた初代アルトワークスに搭載されたF5A型(547㏄、64ps/7.3kg-m。ショートストロークエンジンで軽く1万rpmまで回った)の排気量を拡大したものだ。

 スペック(64ps/8.7kg-m)的にはライバルのダイハツのミラTR-XX(10.2kg-m)や、三菱のミニカ・ダンガン(9.9kg-m)よりも劣っていたものの、モータースポーツでの使用を前提として設計され、ラリーやダートラなど土系競技で活躍。チューニングのベースとしても長年重宝されてきた。

 何より鋳鉄ブロックを採用することで強度と耐久性、信頼性が高く、エンジン内部まで手を入れるとベース車の約2倍の120㎰まで簡単に高めることができた。さらに耐久性をある程度無視したフルチューンとなるとなんと約3倍の200㎰前後までパワーアップが可能と、素材として魅力的なエンジンであった(つくばサーキットを1分5秒台で走るクルマも…)。

 ただし、1990年~1995年までの5年間しか製造されておらず、最終型から25年以上経過しているので程度のいい個体は少なくなってきている。

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