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安全なクルマとは「誰が」じゃなく「誰もが」の視点で作るもの! トヨタが進める「ユニバーサルデザイン」の重要性とは

あらゆる人が使いやすいクルマ作りが重要

 トヨタはヤリスのフロントシートに「ターンチルトシート」と名付けた回転シートをオプション設定しました。「ターンチルトシート」はその名のとおり、シートが回転しながらチルト(傾く)をすることで、乗降性を向上する機構です。

 かつて、スズキがアルトに「回転ドライバーズシート」という機構を採用したことがあります。アルトの「回転ドライバーズシート」は、女性が運転席に乗る際にエレガントに乗れるようにということで採用された機構でしたが、じつは「回転ドライバーズシート」を使わなくても、エレガントに足をさばく方法はあって、女性達はそれを会得し華麗に足を操ってしまったのです。

スズキ・アルトのカタログから引用

 ヤリスの「ターンチルトシート」は、アルトの「回転ドライバーズシート」とはちょっと違ったアプローチで作られたもので、身体がちょっと動かしにくい方、関節の可動範囲が制限されているような方を対象にした装備です。筆者は高校生のときにオートバイの事故で左足を負傷し、しばらく左膝関節が曲がりきらない時期があったのですが、そういう状況でこのようなシートがあったら非常に乗りやすいものとなったでしょう。

 トヨタは20世紀後半から「ユニバーサルデザイン」という考え方を大きくクルマにの開発に盛り込んで来ました。これは誰もが使いやすいクルマ作りを行うという考え方です。誰もが使いやすいというのは、身体が不自由な方が使いやすいクルマ作りではなく、健常者も含めたあらゆる人が使いやすいクルマ作りです。身体の大きな人も小さな人も、男性も女性も使いやすいクルマを作るというのがトヨタの考え方なので
す。

ハンドル位置も安全運転には大事

 チルトステアリングもテレスコピックステアリングは正しい(運転しやすい)ドラビングポジションを確保するにはとても大切な装備ですが、昔のクルマは装備されていませんでした。今はこれらの装備はかなり普通に採用されるようになってきています。

 これらの装備がなかった時代は、ステアリングシャフトを固定しているハンガーにカラーを挟んだり、ボス(ステアリングホイールが装着されている部分)の長さを変更するなどして、自分に合わせて調整することもありました。こうなると、もはや誰もが使いやすいではなく、自分に合わせてセットするということになります。

 チルトステアリングやテレスコピックステアリングが、一般的になってきたように誰もが使いやすくなるクルマ作りは今後も大きく求められる事柄です。ただし、同時にコストアップも伴います。大切なのは「誰もが使いやすくなることに対応できる」ことです。今後も「ターンチルトシート」のように誰もが使える機構は多く開発され、広がりを見せるようになっていくのは必至となることでしょう。

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