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「ドリンク厳禁」「1500kmでタイヤがズタボロ」「店に入れない」! 「シャコタン道」を貫くオーナーの苦労5つ

苦労はあれどやっぱり「低い」のがカッコいい

 愛車をドレスアップする手段のひとつとして、純正よりも車高を下げる「ローダウン」がある。最近ではSUVや4WD系モデルの車高を上げる「アゲ系」なるカスタムも流行してはいるが、まだまだドレスアップスタイルの主流はローダウンであり、そこにはそれなりの理由が存在する。

 それが「クルマは低い方がカッコいい」理論。速さを求めるレーシングカーはすべてが低重心で設計されていることはもちろん、自動車メーカーのCMでは少し車高を下げた状態で撮影していたりと、その理論自体にはそれなりの信憑性もある。

 けれどもそれを極めるとなると……そう、日常生活にさまざまな支障を来たしてしまうのだ。ノーマル状態よりも不便で乗り心地も悪くなったりするけど、それでも「カッコ良さ」にこだわるのが、コアな“車高短(シャコタン)”車両のユーザーたち。オシャレのためにガマンを重ねる彼らの“苦労あるある”を紹介しよう。

1)通れない道や入れない店は多々あり

 普段使いできる範囲でのローダウン量に留めているユーザーがほとんどだが、なかには限界ギリギリまでの低さに挑戦するツワモノも。その場合に最大の難関となるのが、コンビニやスーパーなどの駐車場出入口に存在する段差やスロープだ。

 車体と路面とのクリアランスに対して無理に入れば前後バンパーや車体の底やを擦ってしまうし、段差が大きければ最悪の場合、車体の腹下が路面に引っかかり“カメになって”動けなくなることも…。

 それを避けるために入れる店、通れる道を日常から探しながら移動するのが車高短乗りの習性で、結果、行ける店が限られてくるから、デートのときなどにはヒンシュクを買う。このようなことから、特に知らない土地では駐車場ひとつを探すのも大仕事になるため、行動範囲が極端に限られるようになってしまう…。

2)キャンバー効かせ過ぎでタイヤ寿命“ゼロ”

 カスタム度合いがハードなローダウン車両で定番なのが、キャンバーを効かせる、いわゆるタイヤを“ハの字”にするカスタム。理由はより太いホイールを履けたり、後から見たときにクルマ全体が台形に見えてカッコイイから。ただしそのキャンバーも、角度によっては大変なことになる。

 そもそもタイヤは路面と面で接しているものだが、角度が付けば付くほど、その面が点へと変化する。つまりその点に負担が一極集中することになり、タイヤの減りが驚くほどに早くなるのだ。接地面がその極わずかな部分に集中すれば当然、路面との摩擦熱もその一点に集まるようになり、その場合はさらに摩耗する速度が速くなり、場合によってはトレッド面が剥離したりバーストする危険性も出てくる。

 なので長距離を走ってのイベント参戦などとなると、ちょっと走っては休んで、とタイヤを冷ましながらの旅路に。それでも新品から1500〜3000㎞も走れば要交換で、スペアタイヤの常時車載は必須。極端な引っ張りタイヤは通常の車両に比べてタイヤ脱落の危険性が高くなるし、そもそもタイヤとフェンダーとのクリアランスがギリギリだったりするから、ノーマル車両であればなんともないような道路上のギャップだって、車高短のクルマには命取りになることもある。

 段差があれば徐行や蛇行して避けたり、場合によっては道を引き返したりと、一般ユーザーでは考えられないほど、路面状況に気を配って走らせているのだ。

3)エアロの傷は車高短ユーザーの勲章?

 ローダウン車に乗っていれば腹下をこすることは日常茶飯事(!)だし、ちょっとした段差でエアロを破損することも少なくない。これに関して、とあるベテラン車高短乗りはこう語ってくれた。「停まっているいるときだけじゃなく、走っているときもカッコ良く見せたい。だから低いままで走るし、飛び石やエアロの割れは勲章です。車高短はそういうもの、壊したら直せばいいんですよ」。と意に介さない。

 ただし自分以外の車高短のバンパーが割れているのを発見すると「あぁ、あの人まだ車高短乗りの極意がわかってないなぁ」と、自分を棚に上げニンマリしてしまうこともあるとか。

4)土足厳禁

 昭和世代のごく一部で存在していた「土足厳禁」の風習は、内装までカスタムしたドレスアップ車両に乗るユーザーたちの間では、未だに根強く残っている。もしドレスアップ車両に招かれ乗る機会があった時、車内の足元にシューズトレイが置かれていたら、これは「土足禁止」のサインであることを察しよう。「靴は脱いで、そのトレイに置いてね」という意味だ。

 土禁車両のオーナーは、これを無視して土足で愛車に乗り込む人が大嫌い。前出のオーナーさんいわく「愛車の車内は我が家も同然。土足で家に入るなんてあり得ないです。意味がわからなくてためらっている人は、まだ気が利く方。ドカドカ乗り込んでくる人は気が利かないと判断しますんで、そんな異性とは付き合えません」。特に内装を白系に張り替えたクルマに乗る際は慎重に!

5)缶ジュースを車内で飲めない

 車高を下げると残念ながら、乗り心地は悪くなる。それを解決するために高価な足まわりのパーツ(調整式アームなど)を装着したり、サスペンションのセッティング作業を何度も繰り返しすなど、さまざまな工夫を凝らしている。けれど、低車高でベタベタのカッコいいスタイリングと快適性の両立はなかなか難しく、どうしても硬めの乗り心地になってしまうことは致し方ない。

 ガチガチに固められたサスペンションのクルマは、走行中のちょっとした段差でも車体が跳ね上がって車内で缶ジュースを飲もうにも飲めないし、乗員も揺れてナビやオーディオの操作も危うい。ひどいケースでは、クルマから降りたときにアタマが「ぐわんぐわんの状態」になることもあるのだとか。そうならないよう、車高短乗りは日々、少しでも快適に走れる足を目指して、勉強と修正を繰り返しているのだ。

 ほかにも、マフラーの音でせっかくカスタムしたオーディオが聞こえなかったり、車高短のクルマが停められる駐車場のある家にしか住めなかったり。うしろ指を刺されることも決して少なくないけれど、そんなこんなも含めて楽しい(?)のがカスタムの世界。

 自分が信じる「カッコいい」にトコトンこだわって、数々の障害を乗り越えながら進んでいる全国の車高短車両のオーナーたち。日々こんな苦労をしているのだ…。

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