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「本当にフルモデルチェンジ?」というほど見た面は変わらず! 新型N-ONEのサーキットの走りを旧型と比較

N-ONEレース目線から検証 「新型」と「旧型」の違いをチェック

 11月20日、新型「N-ONE」の発売が開始された。グレードは大きく分けて3つ。Original(オリジナル)、Premium(プレミアム)、RS(アールエス)の3グレード。OriginalはNAエンジン、RSにはターボエンジンが搭載されている。 PremiumにはNAエンジンとターボエンジンモデルがあって、ターボエンジンが搭載されたグレードが、Premium Tourer(プレミアム ツアラー)と呼ばれている。

 オリジナルは本質が味わえるベーシックな位置づけ、プレミアムは質感が高められたグレードになり、RSは走る楽しさが体感できるスポーツモデルになっている。

 新型N-ONEのビッグニュースとして、発売前から大きな話題になっていたのが、そのRSグレードに用意された「6速マニュアルトランスミッション」だ。初代N-ONEにも“RS”グレードの設定があったものの、いままでのN-ONEはCVTのみでマニュアル車は存在しなかった。だとすれば、ファンをザワつかせて当然である。

 というワケで、ここではN-ONEに初めて装備された“6速M/T”にスポットを当てながら、新旧N-ONEの違いについてチェックして行こう。だが、普通の解説は聞き飽きたという人も多いかもしれない。せっかくマニュアル車の話をするのであれば、ちょっと切り口を変えて、チューニングやレース目線でお届けしていくことにする。

ホンダがいう「タイムレスデザイン」とは?

 スポーツカー好きの走り屋にとっては、果たしてN-ONEの6M/T車がいったいどんな走りをするのかがイチバン気になるところ。かくいう私も、じつは自分のN-ONE(もちろん初代)で、N-ONE OWNER’S CUP というN-ONEのワンメイクレースに出場している端くれのひとり。直球で申し上げると、新型の6速M/Tが初代CVTより速いのかor速くないのか? 知りたいのは、これに尽きると言ってもイイだろう。

 だが、ごめんなさい。そこは後半のお楽しみとして、6速M/Tの話題だけじゃなく、新型となる2代目N-ONEには、ホンダからの様々なメッセージが隠されているのだ。それをいくつか紹介していこう。

 そのひとつがN-ONEのフォルムに込められた「タイムレスデザイン」。N-ONEに詳しい人もそうでない人にとっても、初代と2代目を同時に並べても、いったいどこが変わったの? と言いたくなるほどソックリ。「新型」というと見た目を大きく変える必要があるようにも思えるが、2代目N-ONEはあえて変える必要がないと判断。新しいものを追い、まだ見ぬ何かを求め続けるのではなく、カタチを変えない普遍的な存在にも、長い時間をかけて受け継がれてきた価値や魅力があるという考え方である。 時代を超えて「N360」→「初代N-ONE」へと継承されたデザイン。新しいN-ONEになってもスタイルを変えずに、中身を変えることに重きが置かれたと解釈しても間違いではないだろう。

外観は「タイムレスデザイン」を進化

 外観における初代から新型への進化は、グリル形状、ヘッドライト、テールランプなどに見られる。グリルはヘッドライトの輪郭を強調する形状になり、そのヘッドライトはフルLED化。ヘッドライト内には、デイライト、ポジション、ウインカーを兼ねたマルチファンクション発光リングが内蔵。 リアのコンビランプもフルLEDとなり、四角いダブルリングがテールランプとターンランプとして発光するように仕立てられている。また、リアバンパー下部の左右には横長のリフレクターが装備され、ワイド感が強調されたデザインになっているのが特徴的だ。

内装は助手席の足元がスッキリ広々

 内装で驚かされるのが、助手席側の足元が“超”広くなったこと。分かりやすくいうと、初代よりもダッシュボードの厚みが薄くなって足元のスペースに上下方向の余裕ができたのだ。 ダッシュボードが薄くなって思うのは、横のラインが強調され運転席&助手席から見える広がりがとてもワイドに感じられたこと。

 そして運転席まわりでは、メーターに(タコ&スピード)異形2眼コンビネーションメーターが採用され、ドライバーからの視認性がアップ。しかも、高級感もある。その右側には3.5インチTFTカラーディスプレーが装備され、車両情報をリアルタイムでドライバーに提供してくれるようになっている。また、パーキングブレーキも電子制御式になったことも大きな変更点だ。

「Honda SENSING」がN-ONE初搭載

 そして新型N-ONEを語る上で忘れちゃならないのが、Honda SENSING が、2代目で初搭載されたこと。これぞ、N-ONEの中身が進化した本丸部分。Honda SENSING とは、ドライバー運転支援機能のことで、衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システムなどが含まれる。

 危険時にはドライバーよりも先に察知してくれたり、長距離運転などでもドライバーが快適にクルマを走らせることができるようにHonda SENSING がアシストしてくれるのである。Honda SENSINGの搭載は、タイムレスデザインとともに「N-ONEは、ニッポンの新しいベーシックカーを目指す」とホンダが宣言するに相応しい条件のひとつと言えよう。

ここであらためて新型N-ONEのポイントを整理すると、

1)新型だけど、見た目のデザインはあえて変えなかった【タイムレスデザイン】

2)Honda SENSING がN-ONEに初搭載された【安心&快適】

3)RSに6速マニュアルトランスミッションができた【本格的な走り】

 もちろん、アピールポイントはほかにもたくさんあるのだが、最低限この3つを押さえておけば、新しいN-ONEの価値がはっきりと見えてくると思われるのだが、いかがだろう……。

新型N-ONE“RS”で筑波サーキット試走 

 幸運にも我々は筑波サーキット2000で、新型N-ONEを走らせる機会を得た。もちろん、RSの6速マニュアルトランスミッション車。N-ONE OWNER’S CUP で、レース車両を何度もサーキットで走らせているとは言え、6速M/TのN-ONEを目の前にして、いよいよか……、と思うと期待に胸が膨らんだ。

 2代目N-ONEに搭載されるターボエンジンは、S07B型 DOHC水冷直列3気筒横置。弁機構はチェーン駆動の吸気2バルブ、排気2バルブ。ターボを搭載するモデルは、プレミアムツアラーのFF/4WD、そしてRS(RSはFFのみ)。Nシリーズの第2世代と呼ばれるパワートレーンを採用し、2代目N-BOXのプラットフォームをベースにして、さらなる軽量化、高剛性化が図られているという。

 そして、これらの性能をフルに引き出すべくRSに設定されたのが、ついに登場の6速マニュアルトランスミッションである。ギアレシオはあのミッドシップ2シータースポーツのS660と同じというからそれも嬉しい。1~5速がクロスしていて小刻みなシフトチェンジができ、スポーツドライビングでは攻めるコーナーに対して適切で素早いアジャストが可能。6速ギアは高速巡航域で3000回転あたりに収まるようにセッティングされている。

 ギアチェンジ操作においては、これまたS660で採用されている、ダブルコーンシンクロとカーボンシンクロ方式になっていて、軽い力でスコスコとシフトアップすることができるようになっている。それから、手で握るシフトノブには粋な計らいが!!  S2000のシフトノブデザインをベースにN-ONEの6速M/T専用設計になっているというから驚き。またクラッチにはクラッチダンパーが装備され、振動が押さえられたしっかり感あるクラッチフィールになっているのだそう。

【結論】6速M/Tはやっぱり速かった。そして気持ちイイ!!

 Nシリーズで定評のある第2世代パワートレーンとS660由来の6速マニュアルトランスミッション。そして、シフトフィールとクラッチフィールにまでこだわった実際の走りはどうか?

 CVTしか知らない我々にとって6速M/Tは、まさに衝撃的とも言えるダイレクトな加速感が味わえた。初代のCVTでも速いのは知っているし、街中では持て余すほどのトルク感やパワー感もある。それが6速M/TになるとCVTの駆動ロスやアクセルを踏み込んでから加速するまでのタイムラグが(もちろんだが)ないのだ。もう、「僕らが知っているCVT車両より全然速い!」と断言していい。そして、シフト操作&クラッチ操作がとんでもなく気持ちいいのである。

 言い忘れていたが、新型の純正シートは、運転席と助手席が分かれたセパレートシート(初代はベンチ型)になり、ユーティリティ性とホールド性が向上。マニュアル操作でのスポーティなドライビングにも対応しているという。これら、ステアリングの位置、インパネ側にあるシフトレバーの位置、シートのホールド性が絶妙なバランスでマッチングしていて、もう一度言うが、操作感がとんでもなく気持ちいいのだ。フロア側からシフトレバーが垂直に出ているS660よりも、新型N-ONEのほうがシフトアップ&シフトダウンとも圧倒的にクリーンで素直なフィーリングであった。

N-ONE“RS”DOHCターボ 6速M/Tの可能性

 スピードメーター右のインフォメーションディスプレーには、ブースト(ターボ)計を表示させることも可能なN-ONE“RS”。 画面を切り替えればGメーターの表示も可能。純正のまま、何も後付けしなくてもこの豪華装備がついているのは、上位セグメントの高級スポーツカーともなんら遜色がない。

 コーナリングについても、非常によく曲がる。N-ONE OWNER’S CUPのワンメイクレースでも、純正相当のエコタイヤの装着が義務付けられていることもあり、“RS”6速M/Tは、タイヤもサスペンションも純正のままで、高いレベルでサーキットも楽しめてしまうほどに感じられた。

 新型N-ONE+6速マニュアルトランスミッション車の今後の可能性についてだが、N-ONE OWNER’S CUP に関して触れておくと、大会事務局のリリースでは、少なくとも2021年シリーズへの出場は認められていない。参加できる車両として追加されたのは、新型N-ONEのFF/ターボモデルの【CVT】のみ。理由は明らかにされていないが、N-ONE OWNER’S CUPについては、全車CVT車両という当初のコンセプトを貫き、イコールコンディションを保つ意味が大きいと思われる。

 話題性としては少々残念ではあるが、我々が筑波サーキットをサラっと流してもみても、断然6速M/Tのほうが速く感じられたことは言うまでもないだろう(実際のところ、新型の6速M/Tがレースに出られなくてホッとしている)。

 偉そうに上からモノを言うつもりはないが、新型N-ONEの出来は想像以上に素晴らしいものだった。軽自動車のベーシックカーとして、4人乗れて荷物も積めるという、普段の生活や「人」との距離感がフレンドリーであるにも関わらず、ホンダに脈々と流れる走りへの拘りが、トルクフルなターボエンジンや6速マニュアルトランスミッションの実現などに、はっきりとあらわれているように思えた。

 見た目だけだと「初代と何も変わってませんが?……」程度の印象しか残らないかもしれないが、実際に触れてみると中身は大きく進化していることが分かった。軽自動車界隈におけるチューニングファンや走り屋の皆さんが、その“進化”に気づいたとき、新型N-ONEが、爆発的に市場を賑わせる可能性は大いにあり得るだろう。「アルトワークス vs N-ONE」などの対決が見られるのはそう遠くないはず。

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