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古く見えなくとも20年落ちの立派な旧車! 初代コペンの中古の現状と注意点

いろいろな古き良き……が残された軽スポーツを代表する一台

 2代目コペン(LA400系)が発売開始されたのが2014年のこと。つい最近の出来事だと思いきや、2021年の6月で丸7年を迎えようとしている。そう聞くと現行のコペンも「そんなに新しくないんだ……」と、時の流れの早さにビックリさせられる。

 現行の400系すら成熟期に入ろうとしているなか、未だに人気が衰えないどころか、最近のスポーツカーブームにも背中を押され、あらためて注目されている初代L880Kコペン。2022年で何と発売から20年になろうとしている。それでも多くの人に長く愛され続けている、とても“稀”なクルマと言えよう。

 というワケで、ここではそんな初代880コペンにはどんな魅力があるのか、また中古車を買うときの注意点、そして初代コペンカスタムの最新事情などをお届けしていこう。

L880K 初代コペンってどんなクルマ?

 丸いヘッドライトに、前か後ろか分からないほどのラウンディッシュなボディ。とにかく“丸さ”が特徴の初代880コペン。オーナーから「ハチハチマル」と呼ばれいるのは、型式の「L880K」にちなんで。 ちなみに現行の型式はLA400系となり「ヨンヒャク」と呼んで区別している。※「コペンGR SPORT」にはLA400KとLA400Aの2つの型式があるためLA400系と表現。

 880コペンは2002年~2012年まで10年間販売された、ダイハツの2シーターオープンのスポーツモデル。まずポイントになるのが、屋根が電動でフルオープンになるところ。 そして曲線で構成されている味のあるボディラインではないだろうか。どこか欧州車のような雰囲気もあるし、古き良き……を感じるレトロっぽさも親近感があってとてもフレンドリー。そんな老若男女問わず、どんなライフスタイルにも合わせられるマルチなルックスが最大の魅力だ。

 それでいて、エンジンはダイハツの名機と呼ばれているJB-DET。 軽自動車では数少ない4気筒ターボである。現行の軽自動車すべてを見ても、4気筒エンジンは存在しない。3気筒に比べて振動が少なくてとにかくスムーズ。エンジン音もまるで普通車のよう。

 同じコペンでも現行の400系はやはり別物。「こんなクルマ、ほかにあるだろうか?」と考えたとき、すぐに思い浮かぶライバル車はない気がする。そんな唯一無二の存在が880コペンということになろう。グレードは大きく分けて2種類。電動オープンの「アクティブトップ」と、手動で屋根を開閉する「ディタッチャブルトップ」がある。

 そんな初代コペンと言えば“アルティメットエディション”が代名詞のようになっているが、そのアクティブトップをベースにした特別仕様車のことである。ビルシュタインのショックアブソーバー、アルカンターラ表皮のレカロシート、BBS製15インチホイール、モモ製ステアリングなどが特別に装備されている。 アルティメットエディションには「アルティメットエディション」「アルティメットエディション2」「アルティメットエディションS」の3タイプがあり、最終型の「S」は新車価格が200万円を超えるなど、文字通り最上級の贅沢モデルになっている。

そろそろ初代誕生からもうすぐ20年 意外とボロも多い初代コペンの中古車の現状

 コペンは2012年に生産が終わっているので、新車で買うことは理論上不可能である。初代コペンを手に入れたいなら、自ずと中古車を探すことになる。

 初代コペンの中古車相場はかなりこなれて来た感はある。が、走行距離の少ない高年式のアルティメットエディションは、いまだ新車価格(ベースグレードの新車価格は当時157万円~)と変わらない(か、それ以上の)値段で店頭に並べられていることも多い。

 逆に50万円を切るような安いタマもあるが、やはり「それなり」と考えるべきであろう。時が経てば劣化は進むし、走行距離が15万kmや20万kmなんていうのもザラ。このあたりの価格帯だけを見ると「安くなったなぁ~」と感じなくもないが、ご想像のとおり、買った後の整備・修理やメンテにかかるお金が、サイフからどんどんと飛んでいくのが目に見えてい

 それで「あとからこんなにお金がかかるなら(高くても)アルティメットエディションを買っときゃヨカッタ。トホホ」と後悔する人も多い。ちなみに程度の良いアルティメットエディションの相場は150万円~ぐらい。そうなると、コペンの中古車はアルティメットエディションに需要が集中し、価格もまったく落ちないという理論が成り立つ。

 改めて中古車サイトでネット検索をかけてみると、激安の880コペンもたくさんヒットする。年式が古く、走行距離が20万kmを超えているような初代コペンは20万円前後の値段がついているケースも見かける。

 880コペンが誕生したのは2002年。最も古い車体だと既に18年が経つ。喉から手が出るほど880コペンが欲しい人にとって、20万円なら飛びつきたくなるというもの。だがコペンに限ったことではないが「20年・20万km」といえば、あらゆるところのリフレッシュが確実に必要なタイミング。見た目はキレイでも意外に中身はボロだと疑ったほうが賢明かと思う。

 オープン2シータースポーツというスペシャリティカーが、どこかの企業の営業車みたいにザツに扱われてきたとは思いにくいし、前オーナーもコダワリを持って所有していたはず。しかし、880コペンは屋根が電動で開閉するオープンカーゆえ、普通のクルマには備わっていない機構がついていたり、ボディ剛性も決して高いとは言えない事情がある。しかも、ターボエンジンを搭載するスポーツカー。つまり、フツーのクルマより不具合が出る可能性はどうしても高くなってしまう。

【初代コペンに出る不具合の代表例】
・電動オープン機構がうまく作動しない
・ルーフやボディからキシミ音が止まらない
・屋根から雨漏りがする
・直進安定性に欠ける
・ターボ系(配管、補機類含む)の不調
・シャシーやフェンダーの錆
・フレーム&サブフレームのクラック
・エアコンが効かない
・バッテリー能力の低下
・パワステが重い
・エンジンマウントやブッシュのヘタリ
・ほか多数

 さらに前オーナーにイジり倒された可能性があり、何をやったか分からない怖さはある。というのが、付いているエンジン系のチューニングパーツが現在生産中止になっていたり、パーツメーカーが既にサポートを打ち切っていることも多い。コペン自体は悪くないが、その後付けパーツが故障している、というアンラッキーも多いと聞く。そんな場合は「ゴッソリと純正(新品)に戻した方が早いし確実」とは専門店からのアドバイス。このあたりは、次の項に続く「レストア」にも通じてくるだろう。

初代コペンカスタムは「レストアありき」の時代へ

 かつての880コペンのカスタムを振り返ってみると、関連ブランドからたくさんリリースされているエアロパーツを装着して、自分好みにエクステリアを着飾るというのが主流であった。大小さまざまなボディパーツが数多く販売されていて、デザインもアフターパーツならではの大胆なものから、手軽に装着できる付け足し系のアクセサリーまで、何でもそろえることができた。

 当時の初代コペンオーナーたちは競うように個性を追求し、テッパンのレーシーやスーパーカー系はもちろん、VIP、ユーロ、アメリカン、痛車、レトロ&ヴィンテージなどなど、どんなスタイルにも立派に仕立て上げた。10人居れば10通りのカスタムスタイルがあって、まさにコペンオーナーの数だけコダワリが感じられ、本当に見ているだけでも楽しめた。

 そんな初代880コペンだったのだが、いまはどうか? エアロ全盛の時代からは、かなり様変わりしているように思う。それを解き明かすと、ユーザーのお金の掛け方が、以前と比べると随分と変わってきたことが原因とされている。ズバリ、880コペンにもついに「レストア」の精神が台頭してきたのだ。しかも、本格的なレストアが。

 すなわち、880コペンにかける情熱や愛おしさは変わらないが、コペンカスタムをやり尽くした結果、まわりまわって、純正(新車)に近い状態に復元し、これからもまだまだ大切に初代コペンに乗り続けたいというマインドがトレンドになりつつあるようなのだ。エアロパーツで見た目をドレスアップするよりも、ボディやエンジン、サスペンションをリフレッシュすることに、カスタム資金は流れているというのが最近の実情。

 880に詳しいコペン専門店によると「実はエンジンやタービンも含め、補修用パーツとして、ほぼすべてのパーツがいまでも新品で購入できます」と教えてくれた。であれば、理論上は“箱”さえあれば、限りなく新車に近い880コペンをつくることも可能なのだ。これは初代コペンファンにとっては、この上ない朗報と言えよう。

 レストアによって蘇った880コペンは、当時の新車価格以上に費用がかかるかもしれない。だがこの先も10年以上大切に乗るゾという「覚悟」が決まっていれば、それに見合う十分な価値があるのではないだろうか? “箱”について言えば、レストア時に丸裸(ドンガラ)になったシャシーやフレームに対して、ロールケージ追加やフルスポット増し溶接を施せば、新車以上に強度を持たせることもできる。オープンカーにとってウイークポイントになるのはボディ剛性だと言われているのだが、現行の400コペンはそこが大幅に改善されているのに対し、880はボディ剛性が不足気味。

 もし悩めるものなら、200万円以上かけてフルレストアするか、180万円の極上アルティメットエディションの中古車を買うか、とてもオモシロイ選択になりそうだ。仮にレストアするにしても、大好きな880コペンを“箱”からつくるというプランに、とてつもないロマンを感じられるのは言うまでもないだろう。

現行「LA400」と初代「L880」はどちらが速いか

 ここまで880コペンの動力性能にあまり触れて来なかったので、最後にそのあたりの“速さ”の話を少し。

 どちらが速いかは後にして、純正状態での基本性能は400コペンのほうが圧倒的に上。ダイハツの新型コペン開発者の話を要約すると「880コペンのダメなところを徹底的に洗い直し、マツダ・ロードスターを喰うべく超真剣に作った」とのこと。

 その目標に対して400コペンに与えられた「Dフレーム」という骨格構造は、初代880コペンと比較してボディ上下曲げ剛性で3倍、ボディねじれ剛性で1.5倍という大幅な剛性アップが図られている。おそらく、排気量660ccの自主規制64馬力では明らかにオーバースペック。400コペンが発売されてまもなくは、880とのボディ剛性との違いに大勢が驚愕し、コペンチューナーからも「ボディ補強は不要だ」という声が挙がったほど優れている。

 話を戻して新・旧コペンはどちらが速いか。現在、残された記録でいうと、880コペンの方が速い。しかも圧倒的に。もっと言うなれば、軽自動車のなかでイチバン速いのが880コペンなのだ。ただしこれは、400コペンの「D-Frame」的な、ボディ剛性アップを880コペンに施していることが前提。先のレストアのくだりで「“箱”から作る」と申し上げたのがそれだ。

 400コペンのボディ剛性アップのノウハウを880コペンにフィードバックし、歴史あるJB-DETエンジンチューニングを合体させることが、現在のところ最速のパッケージになっている。いずれにしても880コペンが軽自動車最速であることは事実。880コペンがいまもなお大勢から愛されている理由は、そんなところにもあるのかもしれない。スポーツカーは速いほうがカッコいいに決まっているからだ。

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