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カスタムの一丁目一番地! じつは難しい「車高イジり」の世界

まずは車高が決まらなければ始まらない

 ドレスアップの第一歩といえば、いつの時代も足まわり。ローダウンまたはリフトアップから始めるのが王道だろう。「タイヤ&ホイールの方が先じゃないの?」という意見もあるだろうが、ノーマル車高で楽しむ人でもない限り、サゲるかアゲるのを先にやった方がいい。なぜならその車高に応じて履けるタイヤ&ホイールのサイズも変わってくるからだ。

 たとえば、ベタベタに落とすならタイヤ外径はできるだけ小さい方がハンドルを切りやすい。あるいはキャンバーを倒す仕様では、頭が内側に入る分だけ太いリム幅や深いインセットのホイールを選んだ方が見栄えが良くなる。30ミリアゲならタイヤ外径はワンサイズアップまでだが、4インチアゲならさらに大きなオフロードタイヤが履ける、といった具合。

 仮にタイヤ&ホイールから決めてしまった場合、その後車高をアゲたorサゲた際に「ツライチにしようと思ったのに引っ込んでしまった」「ハンドルが切れなくなった」「タイヤとフェンダーの間がスカスカになった」などの事態に陥ったりする。

 ということで、イジるならまずは車高から。そのやり方はいろいろあるが「ダウンサスorアップサス」または「車高調」を選ぶ人がもっとも多いだろう。今回はそれぞれの違いやメリット・デメリットについて解説していく。

お手軽で低コストなのが魅力のダウンサス

 ダウンサスとアップサスの場合、最大のメリットはお手軽さ。ショックアブソーバーは純正をそのまま使い、スプリングだけを交換する方式なので比較的低コストで済む。ダウンサスは純正よりも自由長の短いスプリングだから車高が落ち、アップサスは長いスプリングだから車高が上がる。正確にはバネレート(スプリングの硬さ)もダウン量・アップ量と関係してくるのだが、簡単にいえばそんな仕組みだ。

 いずれも価格は3~4万円、取り付け工賃は2~3万円が目安。車種にもよるが、合わせて5~7万円くらいの予算でカタチになる。ただし車種によっては、ほかに車軸のズレを修正するためのラテラルロッド(1~2万円)や、キャンバー補正のためのキャンバーボルト(3000円~5000円)も必要になる。

 装着するだけで既定値まで車高が落ちる、または上がるので、アライメント以外の調整作業はほぼ必要ないのも利点。取り付けミス、調整ミスが起こりにくいし、カスタマイズに特化したショップでなくても任せられる。

 車高の変化量はダウンサスなら3~5センチダウン、アップサスなら3~4センチアップくらい。あまり大きくは変えられず、がっつり落としたい、上げたいという人向きでない。これは純正ショックを流用する以上仕方がないことで、それがダウンサス・アップサスの弱点にも繋がってくる。

ストローク量が減って乗り味も硬めになる

 ダウンサスの場合、装着すると車高が落ちると同時に、ショック自体も純正より縮んだ状態になる。たとえば純正ショックの縮み方向のストローク量が7センチあったとして、それが4センチダウンのダウンサス装着によって3センチしか縮めなくなる、という感じ。

 結果、走行中に車体が沈み込んだ際、純正車高よりも早い段階で底づき(正確にはバンプタッチ)が発生して、「ドンっ」と衝撃が来ることがある。

 この「底づきリスク」はダウン量が多いほど増す。またあまりに自由長が短いと、ショックが伸びた時にスプリングが上下にガタついてしまう。これがいわゆる「バネが遊んでいる」状態で、ガチャガチャ音はするし乗り心地も悪くなる。そして何より保安基準にも反する。もろもろ考えると、ダウンサスのダウン量は3~5センチくらいが限度。

 アップサスの場合も似ている。こちらはスプリングを長くして車高を上げる仕組みなので、その分ショックの伸び側のストロークが食われる計算。あまり長くすると小さなギャップを踏んだだけで簡単にショックが伸び切り、ゴツゴツ突き上げるような乗り味になってしまう。そうならないよう3~4センチアップに止められているのだ。

 そもそも純正ショックは純正スプリングとセットで設計されている。そのコンビを崩し、ストローク量も減らすのだ。底づきや伸び切りを防ぐためにバネレートもハードに設定される傾向。乗り心地は自然と硬めになると思っておこう。

車検には引っかかりにくいが注意も必要

 前述の通り、ダウンサスやアップサスでは車高は大きくは変えられない。それはデメリットともいえるが、初心者にとっては安心材料ともいえる。ノーマルに近い感覚で乗れるからだ。段差でバンパーを擦ったり割ったり、タイヤ止めにマフラーをぶつけたりといった「車高短あるある」なアクシデントも起こりにくい。

 また多くの場合は車検もそのまま通るというのも嬉しいポイント。ローダウンする場合は「最低地上高は9センチまで」という法規が気になるところだが、一般的な車種で3~4センチダウンなら、この9センチを割るケースは少ないだろう。

 だが5センチダウンだと微妙な車種が増えてくるのと、スポーツカーやスポーツグレードの車種は3センチダウンでアウトになったりもする。メーカーも保安基準適合で作っているケースがほとんどだと思うが、念のため愛車の最低地上高をチェックしておこう。

 アップサスの場合は直前直左視界の悪化に注意。たとえ3センチアップでも、きちんと合法的に乗るにはモニター付きのドラレコやサイドカメラ、補助ミラーといったアイテムを付けないといけないこともある。この辺は専門のノウハウが必要になるので、施工ショップに相談しよう。

調整幅が大きく乗り心地も有利な車高調

 続いて車高調。正式名称は車高調整式サスペンションであり、その名が示す通り、車高を調整できるアイテムだ。基本的にローダウン向けで、同じ車高調で3センチダウン仕様にも5センチダウン仕様にもできたりする。あるいはフロントは40ミリ、リアは35ミリダウンというようなアレンジも可能。好みや用途に合わせて車高をミリ単位で調整できる。 スプリングとショックがセットで作られているから、ダウンサスやアップサスのように底づきや伸び切りのリスクも少ない。特に主流の「全長調整式(フルタップ式ともいう)」なら、ショックのブラケットによって車高調自体の長さを調整できるので、ストローク量を保ったまま車高を変えられる。10センチダウンも夢ではない。

 全長調整式のほかには「ネジ式」があるが、こちらは調整範囲があまり広くない。動かせるのは基準となる車高から上下にそれぞれ2~3センチくらいだろうか。さらにスプリングを縮めて車高調整する仕組みなので、その縮め具合によってバネレートやストローク量が変化する。がっつり落としたいというよりは、軽く落としてダウンサスよりも快適に乗りたいという人向きだ。

 参考コストは10~15万円あたり。しかし中には10万円以下や30万円近いの商品もあったりと価格帯は幅広い。取り付け工賃についてはダウンサス・アップサスと同程度の2~4万円でやってくれるショップが多いはず。

乗り味の硬さ・柔らかさまで調整できる

 車高調は車高だけでなく、ショックの減衰力を調整できる商品も多い。減衰力とは伸びたり縮んだりするスプリングの動きを抑える力のことで、これを調整することで、乗り味の「硬さ・柔らかさ」を変化させられる。

 ちなみに商品によって「16段階調整式」「32段階調整式」というように調整できる段階が異なるが、数が大きいほど硬くできる、柔らかくできるというわけではない。どの車高調もだいたいの調整範囲は決まっており、その中でどれだけ段階を刻むかという違いだ。

 やり方は車高調の上か下の方に付いているダイヤルを回すだけ。取り付け後にも調整でき(車種によってはダイヤルに手が届きにくいこともあり)、たとえば「普段は街乗りメインなので柔らかめ、フル乗車で遠出するときは硬め」というように、使い方に応じて減衰力を変えられる。

 ほかにアレンジできる場所としては、アッパーマウントの固定方法をゴムブッシュ式とピロボール式から選べたり、スライド式にしてキャンバー調整できるようにした商品もあり。ロアブラケットの固定穴が長穴になっていて、そこでキャンバー調整できるタイプも存在する。

 車高の調整はもちろん、乗り味やハンドリング、キャンバー角なども含め、足まわりのセッティングを総合的に変えることもできるのが車高調のメリットなのだ。ただし、調整できる=調整が必要ともいえる。付けるだけなら難しくはないが、理想や好みに合わせて調整するのは、それほど簡単なことではない。取り付けショップはきちんとノウハウのあるところを選ぼう。

話題のリフトアップ向け車高調とは?

 基本はローダウン向けといったが、実はリフトアップ向けの車高調もある。まだラインナップはそう多くはないが、タナベやRS-R、テイン、シュピーゲルといったメーカーから発売されている。

 これまでリフトアップといえば、どんなやり方にせよ上げ幅は固定、ショックも純正を流用するケースが多かった。しかしSUVブームの影響もあり、これまでローダウン向けの車高調を販売していたメーカーがリフトアップ業界にも参入。車高を自在に操れるリフトアップ向け車高調を作り始めたのだ。

 メリットはやはり車高の調整が効くこと、そしてショックごと換えることで乗り心地も向上させられることだろう。車高が上がると重心も上がり、カーブでふらつきやすくなったりする。それを抑えるためにスプリングを硬くすると、今度は突き上げ感が気になる。

 車高調ならスプリングに合わせた減衰力の出し方や調整により、その辺りをバランス良く解消することも可能だ。車高の調整も効くから、車両個体差による微妙な車高のズレ、人や荷物を乗せた際の車高バランスなども整えられる。これからはローダウンだけでなく、リフトアップでも車高調が選択肢に入ってくるだろう。

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