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「オノ」「ナタ」「ナイフ」! アウトドアの勝敗を分ける「刃物」の選び方

薪割りから料理まで刃物ごとに「得意分野」がある

 キャンプ、アウトドアで欠かせないナイフというツール。みなさんはどのような基準でナイフを選んでいるでしょうか。荷物に制約のないオートキャンプなら数多くのナイフ類を持ち運べますが、ザックを背負って徒歩でのトレッキングキャンプなら運搬できる荷物・重量は限られ、1本で広範な作業をカバーするマルチパーパスナイフが便利かもしれません。

 キャンプスタイルにもよりますが、どのような作業が発生するのかによって必要なツールは異なります。焚き火の準備をするにも、丸太から薪割りしなければならないのならキャンプ用の手斧(ハンドアックス)では力不足で、それよりも大きなスプリッティングアックスが必要になるでしょう。薪の小割にはハンドアックスかナタ、もしくは大型のフルタングナイフを用いますが、それぞれカバーする作業範囲が異なっているため、なるべく重複しないように揃えると無駄がありません。

 斧やナタは薪を割るのには適していますが、薪を短くするにはノコギリのほうが良いでしょう。刃厚5mmもある重く大きなフルタングナイフでも料理はできますが、ブレード厚2mmでわずか46gのオピネルのほうがにスムースに作業をこなしくれるはずです。ガイロープの切断にはビクトリノックスのようなポケットナイフが軽快でしょう。

1)薪を切る「折りたたみノコ」

 キャンプ場などで薪を入手する場合、おおよそ長さ30cmくらいに中割された薪がほとんどです。1人用のソロストーブなど焚き火台に入る短い薪を作るには、フォールディングソー(折りたたみノコ)が便利です。写真のフォールディングソーは170mm。実際に15cm径ほどの下の丸太を切っていますが、荒目のブレードがザクザクと切り込み、わずか数分で断ち切りました。キャンプサイトで落ち枝を薪にする場合もノコギリが必須です。

2)薪を割る「小型薪割り斧」

 丸太を薪割りするには斧を用いますが、20cm径を超えると手斧では難しくなり、力任せに振ると薪に深く食い込んだり、ミスショットやケガのリスクも増えます。写真はスプリッティングアックス(小型薪割り斧)で、直径30cm級の丸太でも気持ちよく割ることができます。手斧よりヘッドが厚く、中央が膨らんだ形状で薪を裂きます。写真の丸太は一撃でした。

3)薪を小割する「両刃ナタ」

 薪の小割に最適な刃物がナタです。ナタには片刃と両刃があり、手斧のように薪を真ん中から割るのは両刃が適しています。片刃は背面がフラットなため、薪のセンターから割ろうとすると刃が傾きまっすぐ入りません。片刃のナタで小割する場合はセンターではなく端側に刃を当て、最初から細い小割を割り出すようにします。その際、薪ごと薪割り台に振り下ろして割るのがセーフティです。

4)先端を尖らせる作業が得意「片刃ナタ」

 薪割りには適さないと書かれることの多い片刃のナタですが、じつは片刃ならではの特性があり、フェザースティックなどは非常に作りやすいです。木製のペグや焚き火ハンガーなど地面に突き刺すために先端を尖らせる作業も、ナタをチョッピングするだけでまっすぐに刃が食い込んで削ってくれます。

 これは片刃の背面がフラットで、ベベルと呼ばれるブレードの曲面がないためです。英語ではチゼル(鑿・ノミ)グラインド、ゼログラインド、またはシングルエッジと呼ばれますが、片刃は和包丁など日本を代表する文化で、鮮魚など繊細な食材を薄く切るために独自に発達した歴史があります。欧米にはナタに類する刃物はあまり多くなく「Japanese NATA」として紹介されています。

5)ロープワークから料理まで使える「小型ナイフ」

 薪のフェザースティック作り、ガイロープの切断、食材のカットなど、小手先の作業には小型ナイフが向いています。フォールディングナイフは折りたたむと半分ほどのサイズになるため、ブレードを展開すると意外にも大きな刃を持っています。

 代表的なフォールディングナイフは「フランスの肥後守(ひごのかみ)」と呼ばれる「オピネル」。木製ハンドルのシンプルなピクニックナイフで、料理もこなします。

 スイスアーミーナイフとして名を馳せる「ビクトリノックス」は、マルチツールナイフの元祖。小さなボディにさまざまなツールが組み込まれ、プロダクツとしての機能美にあふれています。

 ただし「チャンプ」シリーズなど、多機能になるほど本体は分厚くなっていきます。

 「BUCK 110」はロックバック式フォールディングナイフの礎を開いたアメリカの老舗ブランドです。ハンドルにはブラス(真鍮)が使われ205gと重量級。エボニー材のグリップと相まってややオールドスタイルですが、ずっしりとした感触は安心感と所有欲を満たしてくれます。写真の110は1987年製ですが、30年以上経過してもブレードのガタ付きひとつありません。

意外だけど使える「電工ナイフ」

 番外編になりますが、電工ナイフをご存知でしょうか。電気工事士がケーブルの被覆を剥くために使用するナイフで、電気工事士技能試験の指定工具でもあります。 価格も1000円ほどと安く、それでいて日立安来鋼(ひたちやすきはがね)など切れ味のよい炭素鋼が採用されています。ファッション性皆無の無骨な“the道具”ですが、片刃のブレードはフェザースティックなどもそつなくこなします。

使用するシチュエーションを想像しよう

 斧からノコギリ、そして各種ナイフは一連のシステムを構成しています。手斧を持っていくならナタは必要ないでしょうし、スプリッティングアックスを持っていくなら手斧は必要ありません。ナタを持っていくなら大型フルタングナイフでバトニング(ナイフでの薪割り)する必要もなくなりフォールディングナイフで十分でしょう。

 もちろん、よりサバイバルに近いブッシュクラフトでワイルドな不便にチャレンジするならお気に入りのフルタングナイフ1本を持っていくのに異論はありません。いずれにせよ、どのようなシチュエーションかを想定するイマジネーションの翼を広げることで、悩ましいナイフ選びが楽しさに変わるはずです。

刃のメンテナンスについて

 最後にナイフのメンテナンスについても触れておきましょう。刃物の研ぎというと、ついつい力を込めてゴシゴシと砥石に当てがちですが、切れ味が落ちた程度なら番手の高い仕上砥やオイルストーンでブレードを数回なでるタッチアップで十分です。荒砥・中砥で研ぎあげていくのは刃こぼれなど大きな傷が入ったとき。ごしごし研ぐとブレード自体がどんどん減肉していってしまいます。

 ナイフは法律によって所持や携帯が制限されています。適切な使用を心がけてください。

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