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あまりに行きすぎた「GT-R部品価格」高騰の闇! 騙されたくない人に伝えたい真実

第2世代GT-Rの中古車が人気! その光と闇

 今なお高い人気を誇る日産スカイラインGT-R。特に第2世代GT-Rは中古車価格が高騰し、注目を浴びている。だが、人気の影で純正部品の価格も上がっており、その結果「逆コンプリートカー」という謎の? 個体も出回っていることを知っているだろうか? 第2世代GT-Rと純正部品を取り巻く現状と、失敗しないGT-R中古車の選び方を指南する。

GT-Rの中古車価格が高いのは珍しい話ではない

 クルマ好き永遠のアイドルである日産GT-Rシリーズ。特に人気なのは、R32〜R34までのいわゆる「第2世代」と呼ばれるモデルだ。昨今、他メディアで多数報道されているのは、「第2世代GT-Rの中古車価格高騰」である。同世代最後のモデルであるR34は、あっという間に1000万円オーバーに突入。希少な限定モデル「ニュル」は3000万円というプライスタグを掲げている店舗も存在する。  だが、ちょっと待ってほしい。GT-Rの中古車価格が高かったのは今に始まった話ではない。

 第2世代GT-Rが現役だった頃、ハコスカ、ケンメリの「第1世代」も、決して安くはなかった。90年代後半、程度の良いハコスカGT-Rで500〜600万円程度と、新車で販売されていたR34とほぼ同じだった。翻って現在、R35の新車価格はスタートが約1100万円、GT-R NISMOに至っては2400万円を超えているが、R34の中古車価格も拮抗してきたというわけ。「旧世代GT-Rの中古車価格が現役時代の新車価格並」というのは、ある程度予測できた事態だ。

中古車業者が「GT-Rは儲かる」と考える理由

 上記の話は、決して「程度極上の個体」に限った話ではない。「程度がそれなり」の各世代のGT-Rでも、同年代の国産中古車ではあり得ないくらいの高値をキープしていた。
 数年前、某大手中古車販売店の代表は、90年代後半当時の状況を振り返りこう語っていた。

「ボロボロのR32、R33GT-Rでも、200万、300万円で飛ぶように売れていくのを間近で見て『これは商売になる』と確信しましたね」

 つまり、中古車業者にとってGT-R、特に今なお人気の高い第2世代GT-Rは「とても美味しい車種」ということなのだ。

 だがここへ来て第2世代GT-Rは、これまで経験したことがない事態に突入している。それは車両本体ではなく「第2世代GT-Rの中古部品価格の高騰」による業者の暗躍。そして、第2世代GT-Rの「逆コンプリートカー」という闇だ。

程度極上をあえて落とす「逆コンプリートカー」

「逆コンプリートカー」とは何かを語る前に、もう少しその周辺について丁寧に説明したい。
 第2世代GT-R人気の陰で問題になっていたのは「新品純正部品価格の高騰」である。日産自動車が販売する純正部品は、筆者が知るかぎり一度も値段を下げたことがない。例えばR32GT-Rのフロントリップスポイラーは新車当時は1万円ちょっとだったのが、現在は税抜きで6万円。この32年で数倍も値上がりした計算になる。

 端的に言えば新品純正部品は「絶対に価格が落ちない株」のようなもので、部品を買ってストックして数年後に手放すだけで、かなり利回りのいい「投資」になる(もちろん株とは異なり、長期間在庫が可能なスペースが必要になるが)。
 中古部品も然りである。例えばR33、R34のヘッドライトは製造廃止されて久しいが、中古価格は製造廃止直前の新品部品価格の倍以上となっている。比較的新しい軽自動車の中古車が買えてしまうくらいの値付けである。

 現在NISMOが行っているヘリテージパーツ事業(純正部品の復刻、リビルトを行う)でも、再生産ができない部品が存在する。詳しくは「インサイダー情報」になりかねないので書けないが、安全に関わる部品は一度生産中止になると復活はかなり難しい、とだけ記しておく。

 ここに目をつけたのがとある中古部品業者だ。

遡上の鮭のような「GT-R中古部品」の実態

 その業者は、まず程度がいい中古の第2世代GT-Rを手に入れる。その個体の程度のいい部品をすべて剥ぎ取り、ボロボロの純正部品(あるいは社外品)に付け替える。外した程度のいい部品はネットオークションで販売し、ボロボロの部品を取り付けられたGT-Rは再び市場に流される。これが「逆コンプリートカー」の仕組みである。取材当時はまだ第2世代GT-Rの中古車が程度の悪い個体は100万〜200万円だったからまだ良かったものの、R32クラスでも程度が悪い個体でも軒並み100万円以上値上がりしている。状態もよくなく車両価格も高いのだから、買い手にはメリットはない。

 件の業者によると「数年後程度のいいGT-Rを仕入れたら以前制作した逆コンプリートカーで、新品部品をたくさん装着して戻ってきたのには驚きました」と語る。そんな、産卵期の鮭の遡上みたいなことがあり得るのかと驚いた。
 前述の業者は「業者オークションに出品される第2世代GT-Rの事故車は、どんな高値でも落札し、市場に流通しないようにしています」と語る。最近、ネットオークションでも第2世代GT-Rの部品取り車(または事故車)を見かけなくなったのは、こういうことだったのだ。

 また、これを読んだ読者が「自分も始めてみよう」と思っても、相当ハードルが高いビジネスということでもある。取材を行った業者は5年以上前からこのビジネスを行っており、新規参入するには現在流通している車両が高すぎる。

 だが、このような業者のおかげで市場に多くの中古部品が出回っているのもまた事実である。オーナーにとってはありがたいことではあるのだ。たとえ中古部品の値段が高くとも、とりあえず修理することはできるのだから。

「Rの中古部品」の現状を打破する方法はあるか

 まとめよう。GT-Rの車両価格が高い、そして純正中古部品が高い根本的な原因は以下の通りだ。

①GT-Rはボロボロでも価値がある

②第2世代GT-Rオーナーは値段が高い部品でも良いモノなら購入してくれる

③製造廃止された新品純正部品が多い

④新品純正部品の価格が高い(値下げされたことがない)

 日産純正部品(あるいはヘリテージパーツ)の値段が大幅に下がらないと、この「GT-R純正中古部品バブル」は、当分収束することはない。厳密に計算はしていないが、こと部品代においては既にポルシェ、フェラーリのような「スーパーカー」の領域に踏み込んでいると思われる。
 では、オーナー予備軍がこれから第2世代GT-Rの中古車を選ぶべきポイントとは何だろうか?

本当に程度の良い中古Rを選ぶポイントは?

 履歴がしっかりし、きちんと車齢を重ねてきた個体を手に入れるには、どうしたらいいのか? 究極は「人となりをよく知るGT-Rオーナーに交渉し直接譲ってもらう」がベストである。これは実話だが、2オーナーで「年式、距離なりで程度は中くらい」だった個体がディーラー経由(下取り)で業者オークションに流れたが、次の所有者が落札した際、外装の塗装が斑になっていた。よく観察すると、中途半端な素人仕事で塗装が劣化した部分にクリア塗装が上塗りされており、むしろ修復が難しくなった、なんてこともある。この場合の「犯人」はディーラーなのかは不明だが、「さっさと見た目を整えて、売値を高くしてやろう」と考えた第三者が介在したのは確かだ。

 あとは老舗のGT-R専門店に在庫している程度のいい個体を吟味して購入するのも一つである。できれば現役のGT-Rオーナーと一緒に専門ショップを訪問することをお勧めする。オーナーでないと気がつかない「壊れていると意外と修理代が高い箇所」「新品純正部品がすでにない」ポイントは結構ある。専門店の話はとても参考になるが、現役オーナーの「セカンドオピニオン」も重視したい。

 第2世代GT-RはR32で登場32年、R34ですら22年が経過している。正直「どうして程度極上車がこんなにまだ存在するの?」と疑うファンもいるだろう。だけど、距離がそれなりに走っていて、部品も年式、距離なりにボロボロ、という個体も実は「意図的に作られた悪いコンディション」かもしれないのだ。つまり、どんなコンディションの車両を購入するにしても、一番重視すべきは車両の価格や程度ではなく、GT-Rを売る「人間」の方ということだ。

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