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「45」と「35」は似てるけど全然別モノ! メルセデスAMGのドル箱SUV「GLA」乗り比べ

似て非なるコンパクトSUVのハイパフォーマー「GLA35」「GLA45S」

メルセデスAMGが放つ高性能コンパクトSUVが揃ってデビュー

 メルセデス・ベンツでもっともコンパクトなSUV「GLA」をベースにしたAMGモデルが2台揃ってデビューした。1台はGLA35 4MATIC(以下、GLA35)、もう1台はGLA45S 4MATIC+(以下、GLA45S)である。

 コアなメルセデスファンであれば、モデル名を聞いただけでそのスペックを言い当てられそうだが、念のために記しておくと、エンジンはどちらも2Lの4気筒ガソリンターボだ。M260エンジンを積むGLA35は、306ps/400N・mを発生させる。そのパワーは8速DCTと電子制御式4WDシステムのAMG 4MATICを介して4輪に分配される。トルクの分配比は前:後=100:0〜50:50となる。

 一方、GLA45Sには“史上最強の量産型2L4気筒エンジン”として名高いM139を搭載する。最高出力は実に421psで、最大トルクは500N・mに達する。排気量は同じでもM260より完全に1クラス上のパフォーマンスといって間違いない。

 また、通常のラインで組み立てられるM260とは異なり、AMGの伝統である「ワンマン、ワンエンジン」に従い、ひとりのメカニックが1基のエンジンを手作業で組み上げる点もM139の特徴だ。ギヤボックスは基本的に35と同じ8速DCTだが、4WDシステムはパフォーマンス志向をより高めた4MATIC+となり、後車軸にはAMGトルクコントロールと呼ばれる電子制御式デフを採用。ふたつの多板クラッチにより左右後輪へのトルク配分を調整して、常に最適なトラクション性能を実現する。

強靱なシャーシに300ps超の高性能エンジンを搭載する「GLA35」

 先に試乗したのはGLA35だ。箱根のワインディングロードを走り始めると、直ちにそのパワフルな走りに圧倒された。タイヤが転がり始めた瞬間から小気味いいパワーがあふれ出てくるうえに、2速→3速→4速とシフトアップしていっても、その力強さが途切れない。しかも、1〜4速の設定が比較的ローギヤードなため、低中速コーナーが主体となる日本のワインディングロードでもストレスを感じにくい。

 さすがに6000rpm近くでは回転の伸び感が薄れてくるものの、スーパースポーツカーを走らせているようなポテンシャルが垣間見える。『これ以上のパワーがあっても公道では使えこなせないかもしれない』と思うほどの動力性能だ。

 だからといってシャーシのレベルが低いわけではなく、これまで試乗したコンパクトAMGのなかではベストといえる仕上がりだった。とりわけ、ハードコーナリング中もサスペンションが滑らかに路面を捉え続け、ボディをフラットに保つ点には度肝を抜かれた。おかげで路面が荒れたコーナーでもステアリングが左右に振られることがなく、ステアリングを一定に保っているだけで狙いどおりのラインをトレースできるのだからすごい。

 それでいながらシャーシの強靱さも舌を巻くばかりで、かなりコーナーを攻めたつもりでもボトミングしたのはほんの数回ほど。このしなやかさと強靱さを併せ持つところこそGLA35の真骨頂と感じた。

ドライバー優先のダイレクトな走りも披露する「GLA45S」

 では、これを凌ぐGLA45Sとはいったいどんなモンスターなのだろうか? 超絶パフォーマンスを実現するあまり、恐ろしく扱いにくいモデルになっていたらイヤだなあと思いながら試乗を開始したところ、そんな不安を吹き飛ばす完成度の高いハンドリングに完全に打ちのめされた。

 先に断っておくと、ワインディングロードを駆け抜ける際の絶対的なペースはGLA35とほぼ変わらない。しかも、サスペンションが極端に締め上げられている訳ではなく、基本的にはGLA35と同じように路面を滑らかにトレースしていくのだが、その際の足まわりの動きがさらにスムースで、質感の高さを満喫できるのだ。

 それとともに印象的だったのが、GLA35では数回感じたボトミングが完全に起こらなかったこと。この辺はサスペンション設定の妙味もさることながら、足まわりを中心とするボディ剛性が一段と引き上げられていることを予感させた。 エンジンのキャラクターも、こうした足まわりとよくマッチしていた。低中速域はあくまでもドライバビリティ優先の設定で扱い易い。

 期待どおりのパワーとレスポンスを発揮するのだが、GLA35より500rpm高い7000rpmに設定されたレッドゾーンが近づいてくると、吹き上がりは一段と鋭さが増し、回転フィールもよりシャープになって刺激的なクライマックスを迎えるのだ。

 しかも、AMGダイナミクス・セレクトをレースモードに切り替えると、それまでの安定しきっていたコーナリングフォームが一転、スロットル操作や路面の状況に連動してステアリング特性が微妙に変化する様子を如実に伝えるようになった。

 おそらく、それまでコーナリングを影で支えていたスタビリティコントロールやトルクベクタリングの効果が弱まり、ドライバー自身がダイレクトにクルマをコントロールするモードに切り替わったのだろう。腕に自信のあるドライバーにとっては、じつに操り甲斐のある設定といえる。

高性能と快適性を両立するAMGの哲学をしっかり継承

 繰り返しになるが、ワインディングロードの走りを楽しむだけならGLA35で十分以上だ。一方、GLA45Sはいたずらにパフォーマンスを高めて操りにくくするのではなく、ドライバーに対する間口を広くとったまま、クルマの質感を高めることでGLA35との差別化を図ったように思える。ただし、レースモードを選べばドライバーの腕が試されるAMGらしいキャラクターも残されている。

  いずれにせよ、公道におけるドライバビリティや快適性が向上した新しいAMGの方向性には大賛成。これまで以上に多くのファンから支持されることは間違いないだろう。

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