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実は「高齢者」にも優しかった! 「福祉車両」の「痒いところに手が届く」便利機能4選

高齢者にも配慮された「福祉車両」の今 

 福祉車両といえば、「障がいを持つ人を乗せるクルマ」といったイメージが強い。だが、高齢化社会を迎えた日本では、自動車メーカーが販売する福祉車両などに、高齢者が楽に乗り降りできたり、運転をサポートするための装備を搭載するモデルも数多くリリースされている。

 しかもミニバンからコンパクトカー、軽自動車など幅広いモデルが用意されているため、ユーザーの家族構成や各ニーズに応じた車種を選ぶことができるのだ。ここでは、そんな高齢者にも便利な福祉車両の装備について紹介する。

「助手席回転シート」体を捻らず乗降が可能

 まずは自分で歩くことはできるが、足腰が弱くなった高齢者向けとして、クルマのシートへの乗り降りをサポートする「回転シート」という装備がある。これは、主に助手席が外側に回転することで、体をひねらずに乗降できるというものだ。 健常者の若い世代にとっては、例えばコンパクトカーや軽自動車などであれば、車高をさほど高く感じずラクに乗り降りができる。だが、足腰が弱い高齢者にとっては、体をひねって乗り込むこと自体がやりにくい人も多い。そのためシートを回転させるのだが、これには手動でレバーを引いてシートを回転させるタイプや、電動で回転させるタイプなどがある。

 手動回転タイプの中でも、例えばトヨタならヤリスやシエンタ、プリウス、プリウスPHVにメーカーオプションで設定している助手席ターンチルトシートなどは、シートが回転するだけでなく、背もたれと座面が下方向に傾くことで、より乗り降りがしやすい工夫がなされている。また、これら車種では助手席だけでなく、運転席も回転する仕様があり、自分で運転する高齢者に対応した装備となっている。

 ちなみに、こういったタイプは、他メーカーでも日産が新型ノート、ホンダがフィットやN-WGN、ダイハツがタントなどに採用。また、高齢者だけでなく、例えば着物を着た女性が乗り降りする際も、足を揃えたまま乗降ができるため便利だ。

 電動回転タイプの場合は、スイッチを押すと助手席がモーターで回転するだけでなく、車外へ大きくスライドして降りてくるタイプも多い。主にミニバンやSUVなど、車高が高いモデルに採用されている。また、助手席だけでなく、ミニバンでは2列目シートの助手席側が電動で出入りするタイプもある。

 具体的な車種でを挙げると、例えば、トヨタのノアやヴォクシー、日産のセレナ、ホンダのステップワゴンといったミドルサイズのミニバン。また、コンパクトサイズのミニバンでも、トヨタのルーミーやホンダのフリードなどが採用する。さらにSUVでは、日産のエクストレイル、マツダのCX-5など、軽自動車ではダイハツのタントやスズキのワゴンR、日産のルークスといった車種にも設定がある。採用される車種が幅広いため、ユーザーのニーズに応じたモデル選びができるのも特徴だ。

「電動ステップ」と「手すり」:乗降を補助する

 高齢者の乗り降りをサポートする装備としては、ほかにも日産がセレナやエルグランド、ルークス、トヨタのノアなどに設定しているステップタイプもある。これは、助手席のドアや後席スライドドアを開くと、足を乗せることができるステップが自動で出てくる機能だ。

 とくに、フロアが高いミニバンでは、他モデルと比べ乗降時に足を高く上げる必要があり、さほど歩行が困難ではない高齢者でも乗り降りしにくいことが多い。回転シートまでは必要ないが、乗り降りする際の段差を減らすことで、乗降をよりスムーズにするための装備で、高齢者だけでなく、小さな子供の乗り降りもサポートする。

 同様の電動ステップは、ダイハツのタントでも、ミラクルオートステップという名称でオプション設定されている。タントには、ほかにも、高齢者が助手席に乗降する際や、乗車中につかむことができる手すり「ラクスマグリップ」も用意する。

 乗降時用の手すりはAピラーに、乗車中用の手すりは前席背面に装着することで、いずれも高齢者が体を支えやすくするという効果を生む。こういった手すりは、社外品でも電車の吊革のようなタイプが販売されているが、タントの純正オプションのように樹脂一体成形のほうが体を支えやすいといえるだろう。

「車いす用スロープ」:歩行困難な方にベスト

 高齢者の中には、歩行が困難で普段から車いすに乗っている人もいる。また、自宅や近所など普段は歩行ができても、出先で長時間歩くことに不安がある人も多い。そういった高齢者がいる家庭では、車いすをそのままクルマに乗せられるスロープタイプが便利だ。

 ミニバンやワンボックスカーなどに設定が多いこのタイプは、テールゲートを開けて車載スロープを引き出すことで、車体後部から介助者と一緒に乗降することができる。車内では、専用の車いす固定器具が用意されているため、走行中に車いすが動くことはない。

 ただし、こういったタイプでは、車いすを固定するスペースが必要なため、3列目や2列目の助手席側シートが使えないようなタイプが多い。例えば、7人乗りミニバンでは、車いす搭載時は5人乗車となる。そのため大人数を乗せることが多く、高齢者も多少の歩行ができる場合は、前述の電動回転シートタイプのほうがいい。シートを低い位置まで下ろし、車いすからシートに移動してもらい、車いすは折りたたんで荷室に乗せてしまえば、ミドルサイズのミニバンであれば、7~8人が乗車することができる。

 ちなみに、トヨタのノア/ヴォクシー、日産のセレナなどは、スロープを出す際に車体後部の車高が下がる装備も採用されている。これは、車高を下げることで、スロープの角度を緩やかにするためだ。介助者が車いすを押しやすくなり、車いすに乗っている人も角度が急な場合に比べ安心感が増すといった効果を生む。

「運転補助装置」:自らハンドルを握る人に

 足が不自由で普段から車いすで生活している高齢者が、自らクルマを運転するといったケースもある。これは、若いころからクルマの運転が好きといった場合もあるが、地方など公共交通機関があまり発達していない地域にひとり暮らしをしている場合などもある。買い物や病院への通院など、生活の足としてクルマが必要なケースだ。

 そういった人には、手でアクセルやブレーキを操作できる運転補助装置を装着したモデルもある。例えば、ホンダではフィット、トヨタではプリウス、マツダはロードスターに設定されている。

 こういった装置は、もともとは障がい者向けなのだが、前述の通り、地方在住でクルマが生活に必要な高齢者でも、使っているケースがある。

 もちろん、高齢者の場合は、例えば視力や認知機能の衰えなどの問題もあるため、誰でも使えるわけではないだろう。本来は、在住地域で送迎サービスなどが充実していればそちらを利用する手もあるが、財政が苦しいなどでそういったサービスが望めない自治体もある。その辺りは高齢化社会である日本における、今後の大きな課題のひとつであるといえるだろう。

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