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「ピンスト」「ゴースト」「エイジング」! 昭和のクルマ好きには即答できないカスタム用語8選

業界用語で入り込む華麗なボディカスタムの世界

 クルマをカスタムする世界では、ユーザーとプロショップの間や愛好者のミーティングなどで、普通に専門用語や略語などが飛び交う。知らない人にはまったくチンプンカンプンの言葉や、まるで外国語を聞いているかのようなワードばかりだ。

 それには理由がある。主にカスタムペイントなどでは海外から入ってきた技法も多く、カスタムのジャンルにもよるが英語のように聞こえるが実に摩訶不思議な用語が使われる場合が多々あるからだ。特にこれからカスタムをやってみたいという初心者などには敷居が高いかもしれない。しかし逆にわかってしまえば格段に世界が広がる。ここでは、そんな「あなたが(あんまり)知らない」、主に塗装に関するカスタム用語を紹介してみよう。

●オールペン

 まずは初級編。「オールペン」だ。「どんなペンですか?」なんて、おじさんギャグ的なボケも聞こえてきそうだが、これはいわゆる全塗装のこと。クルマのボディ全体を塗装する「オールペイント(All Paint)」を略した表現だ。

 塗装関連ではジャンルをまたいで広く使われる言葉なので「これくらいは知っているよ」なんて人も多いだろう。車体のすべての色を変えるだけあり、施行には費用はかなり掛かる。しかし愛車を自分だけのオリジナルのカラーにできるということで人気も高い。

●ラッピング

 「ラッピング」は、一般的にはギフトで包装するときによく使われるが、クルマのカスタムではボディ全体に専用フイルムを貼ること。オールペンと同様の効果が得られる技法を指す。飽きたり仕様変更をしたいときは貼ったフイルムを剥がせば元のカラーに戻せるため、近年人気が高くなってきた。

 ただし費用は全塗装ほどではなくても意外とかかることと、貼ってからの年数やクルマの保管状況によっては、剥がすと地の塗装が剥がれてしまうことがあるので注意が必要だ。これはフイルムに使う接着材の劣化などが原因で、剥がすなら長くても3年以内が目安。また、フィルムは日光の影響を受けることもあり、野外駐車場にクルマを停めている場合などはさらに寿命が短くなる。

●ピンスト

 クルマのボディサイドやボンネットなどに独自のラインを入れる「ピンストライプ」を略した言葉だ。もともとは、アメリカで昔から流行っていたカスタムペイントの一種で、クルマだけでなくハーレーダビッドソンなどのバイクでも燃料タンクやサイドカバーなどに入れることも多い。

 ピンストの施工は「ピンストライパー」と呼ばれる職人が専用の筆を使い、基本的にはフリーハンドで行うことが多い。あらかじめ塗るラインの形状を切り抜いた型紙をボディに張り、ステンシルのようにして塗る方法もあるが、上手いピンストライパーほど型紙などは使わない。すべて手作業でボディの左右を完全に同じラインで描く。また、構成デザインもピンストライパーそれぞれのセンスや個性が出るし、手作業だから同じラインは基本的に描かれない。まさに自分の愛車だけの完全オリジナルのラインが手に入るのだ。

●フレアパターン

 フレア、英語の表記で「Flare」の意味は、太陽コロナ中でおこる爆発現象のこと。つまり「フレアパターン」とは、燃えさかる炎を模したデザインをクルマに描くペイント手法のことだ。日本では「ファイヤーパターン」とも呼ばれる。 やはり、これも元はアメリカが発祥で、1930年代に人気を博した「ホットロッド」で流行った手法だ。当時のドラッググレース用マシンなどに施されていたグラフィックが元ネタだ。

 最近では、こういったフレアパターンのグラフィックを進化させた「リアルフレームス」という技法もある。キャンディ系の塗料を使って幾重にも色調が違うフレアを描くことで、光の当たる具合で柄が変わるのが特徴。まさに炎が揺らいでいるような効果を生むことで人気が高い技法だ。

●ゴーストペイント

 ゴースト、英語で「Ghost」とはご存じ幽霊のこと。幽霊ペイントって何ぞやと思う人も多いだろう。これは暗いところでは見えにくいグラフィックが、強い光などが当たると浮かび上がるという塗装だ。やはりキャンディ塗料を使用することでこういった効果を生む。

 ちなみにキャンディ塗装は、最近人気が高いカスタムペイントのひとつだが、ベース色にシルバーを塗った後に上から何度も重ね塗りする必要があり、塗り方がまずいと上手くキャンディっぽさが出ない。板金塗装のプロでもかなり難易度が高い塗装だ。 こちらのプロの作品、グラインダータトゥーという特殊ペイント技術へゴーストペイントを加えたものを見てもそのすごさがわかる。下地のグラインダーによる切削の模様が光が当たることで浮かび上がるようになっているのだ。

●エングレービング

 エングレービング、英語で「Engraving」とは、もともとは版画の凹版技法のことを意味する。クルマのカスタムでは、ボンネットやドアなど、ボディを彫り込むことで模様を描く、彫刻のような手法のことだ。

 施行には電動彫刻刀などを使い、デザインなどにもセンスが必要なため、かなりの職人技が必要。そのぶん完成したときには、圧倒的なインパクトや存在感が手に入るといえるだろう。

●エイジング

「エイジング(英語のAging)」というと、最近人気のエイジング加工をイメージする人も多いだろう。家具やインテリア小物、レザー製品やジーンズなどを、新品なのに長年使い込んできたような風合いにする技法のことだが、クルマのカスタムでは主にこれを塗装で行う。

 ボディにあえてサビが浮いたようなブラウン系の色を入れたり、塗装がヒビ割れた感じを出すなどで、あたかも古いクルマであるかのように見せる手法だ。上手く塗装できれば、まるで何十年も野ざらしにされていたポンコツ感と、使い込んだクルマならではのビンテージ感を演出できるのが魅力だ。

●ヘアライン

「ヘアライン」はご存じの方も多いだろうが、ステンレスなどの金属に髪の毛ほどの細く長い筋目を入れる仕上げのこと。家電製品やパソコン、腕時計などの装飾品に使われることが多いが、クルマのカスタムでは同様の仕上げを塗装によって行う。

 基本的にはシルバー塗料を使う。微妙で均一な細い筋目も入れることでボディにメタル感を演出できる。ヘアライン塗装はルーフやボンネットなどの外装だけでなく、インパネなどの内装にも使うことでクルマの内外装に統一感を出すことも可能。愛車にクールなイメージを演出するといった効果を生み出せる塗装法だ。こちらもかなり高級な塗装だけにボディ全体にまとうのは高額だ。塗装ではなく前述のラッピングでもヘアライン調があるとも添えておきたい。 ボディ塗装外装のカスタムはクルマの「衣装を仕立てる」ものだけに、実に奥深いカスタムなのだ。

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