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偉大すぎる兄弟に挟まれた「真ん中っ子」! わりと名車だった3代目フィアット「500」とは

そもそもフィアット500ってどんなクルマ?

 キュートなスタイルで人気なのが、フィアット500だ。500のイタリア語読みであるチンクエチェント(5と100という意味)の愛称で大ヒット作と言っていい。日本でももちろんだしヨーロッパでもヒット。このクルマのおかげでフィアットは身売りなどをしなくて済んだ。

 さらに、クルマに詳しくなくてもルパン三世の愛車としてもお馴染みの2代目フィアット500はご存知だろう。現行モデルのモチーフにもなったもので、かなり小さいボディサイズと可愛いデザインが特徴だ。

 クルマ好きなら初代のフィアット500もご存知のはず。大ヒットとなった2代目とは小型車という点では同じだが、メカニズムなどはまったく異なるもので、デザインもトッポリーノ(ハツカネズミ)と呼ばれるように、ユニークなものとなっている。

フィアット500ではなく「Cinquecento」が車名

 ここまで見てきたように、フィアット500は今に至るまでで3代のように思えるが、じつは4代が正しい。それが1991年に登場したフィアット・チンクエチェント。資料だけでなく現車を見ても「FIAT500」という文字はどこにもなく「Cinquecento」とあるだけなので別物という意見もある。登場時はフィアット500の後継車として扱われていたし、実際、個人的に買ってもいいかなと思ったほどなので記憶はリアルで、関係ないモデルでは決してない。

 ただ亜流感があるのは事実で、フィアットが株式の90%を保有していたポーランドのFSM社が生産を担当。ちなみに現在のチンクエチェントもメインはポーランド製で、生産しているフィアット・オート・ポーランドはFSM社がルーツとなる。

 それだけに、3代目となるチンクエチェントはかなり簡素というか質素。東西冷戦終結後、発展途上にあったポーランドを始めとした東欧諸国をターゲットとしていただけにシンブルそのもの。エンジンは900ccのOHVを搭載していた。

 OHVとはかなり古臭い感じだが、1990年ごろはまだ東欧向けにかなり力を入れて作っていたし、フィーリングはけっこう軽快だった。そもそも車重は750kgしかないので、900ccで40psというスペックでも十分だった。

スポーツグレードも存在していた!

 雰囲気としては日本の軽自動車。それも初期のころのアルトやミラといったところ。その前後のチンクエチェントたちとは共通するところはまったくと言っていいほどなかったが、イタリアではチンクエチェントの再来というよりもパンダの後継車といったほうがよく、デザインはスクエアで不思議な形をしていたし、インテリアも初代パンダを思わせるようにユニークなものだった。

 ただ、安っぽいところは単に安っぽいだけで、イタ車になりきれなかったのも事実。当時イタリアでもそこそこ見かけたが、無造作に路駐されているものが多くボディも汚いものばかり。単なる実用車で足として割り切っていた感じは強かった。

 ただ、このチンクエチェントにはスポルティングという、ファイヤーエンジンと呼ばれる1.1Lの55psを発生する直4OHCを積んだ上級モデルがあったし、これをベースにエアロを装着したスポルティング・アバルトもけっこう精悍で見応えはあった。

日本にも上陸していたチンクエチェント・トロフェオ

 さらにトロフェオと呼ばれるワンメイクラリー参戦車。ベーシックグレードにキットを装着して仕上げるものだが、現在のチンクエチェントのアバルトに通じるような粗野で凶暴な感じが漂っていて、クルマ好きの心には強烈に刺さった。

 ただ、いずれのグレードも正規輸入はされず並行輸入のみ。そのなかでもスポルティングが一番多く、ノーマルやトロフェオも台数は少ないが日本に上陸しているし、中古車市場ではごくたまに見かけることがある。

チンクエチェントの上級モデル「セイチェント」というモデルも存在した

 丸くて可愛いチンクの間にあった、四角いチンクエチェント。FIAT500に対して上級モデルとしてFIAT600(セイチェント)があったように、3代目チンクエチェントにも兄貴分としてセイチェントがあった(ベースはチンクエチェント)。

 チンクエチェントとセイチェント、当時のフィアットとしては力を入れていたような、入れていないような中途半端な感じとはいえ、最終的に台数はけっこう売れたようだが、とにかく華がなかった。

 クルマとしてはけっこう面白いものがあっただけに、変にチンクエチェントと名乗らず、別のラインとして登場していればまた違ったかしれない。また、今改めてそのコンセプトを蘇らせてみるのも面白いかもしれない。

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