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クルマの「頭脳」をイジるチューニング! 「フルコン」「サブコン」のメリット&デメリット

それぞれにメリットとデメリットあり!

 チューニングを勧めていくと、よく聞く言葉に「フルコン」と「サブコン」がある。コンピュータのチューニングに関する用語だが、ふたつには大きく違いがある。それぞれの違いとメリットデメリットについて、ここで整理してみよう!

チューニング黎明期から使われる「サブコン」

 サブコンの歴史は古い。燃料を供給する方法がキャブレターからインジェクションになって、燃料を増量する方法としてキャブのジェット交換が行えなくなったころに苦肉の策として登場した。

 その方法は水温センサーの信号を変更するというやり方だ。冷却水が適温なのにまだ冷たいという擬信号をコンピュータに送り、冷間時に使うファーストアイドル機能を活用して燃料を増量する。これがサブコンの始まりである。なんともアバウトな方法から徐々に進化して現在に至っている。

 サブコンの役割は、メインコンピュータに割り込んで純正で使われているセンサーからの信号に手を入れてからコンピュータに送り込むこと。

 例えばインジェクターに対して50%噴射という信号を受けたとする。それをサブコンで60%噴射という信号に変更して、メインコンピュータに指示する。点火時期も同じように変更できる。

 変更の度合いが調整できるので、吸・排気系のグレードアップなどで効率が上がったぶんを補うには最適だ。基本的にはパワーアップに関係する領域に手を入れるだけだから、寒い朝の始動性や渋滞時などでのラフなアクセルワークといった普段使いでの気になる使い勝手はとても快適。ノーマルコンピュータのデータがそのまま使えてしまうからだ。

「サブコン」はあくまで純正コンピュータありき

 このようにサブコンは純正コンピュータありきで、空気の量を測定するエアフロメーターを始めとする各センサー類は純正品をそのまま使う。とても便利な反面、エアフロメーターで対応できる空気量を大きく超えたセッティングは行えない。だから大幅なモディファイには不向きだ。それでも燃料や点火の調整が可能なので、仕組みを理解していれば本格的なセッティングが実現できる。さらにサブコンを取り外せば、すぐにノーマル復帰できるということも見逃せないポイントだ。

 最近のクルマはフィードバック機能が備わっていて、それを無視すると上手くセッティングが決まらないことも覚えておいたほうがいい。

 フィードバック機能とは、O2センサーを使って排ガスの残留酸素から空燃比を導き出し、あらかじめエンジンの回転数や負荷などを鑑みて設定している空燃比との差を監視するシステムだ。もし設定値とズレが生じた場合は自動的に燃料の噴射量を変えて適正な空燃比に戻してくれる。

 つまりサブコンでパワーを上げるために燃料を増量しても、空燃比が設定値よりも濃くなればフィードバック機能が働いて燃料が減量されてしまう。クリーンな排ガスや燃費のためには画期的なシステムではあるが、チューニングのことを考えるとネックになる。フィードバック機能に注意して引っかからないレベルでセッティングしないといけない。しかし最近ではフィードバックの空燃比が変更できるタイプも登場している。

単独で制御できる万能型の「フルコン」

 純正コンピュータに多くを委ねているサブコンに対して、フルコンは純正コンピュータの力を借りずに単独でエンジンが動かせる万能ツールだ。  

 なかには純正コンピュータを残してフューエルポンプの作動やアイドルアップの機能を任せているケースもあるので、サブコンと混同しがちだが、まったく別物。手間を惜しまなければフューエルポンプもアイドルアップも純正コンピュータなしでも作動させられる。

 肝となるのは吸入空気量を決めるセンサーだ。空気量がわからなければ燃料の量は決められない。市販車のほとんどはホットワイヤータイプのエアフロセンサーを使って実際の空気量を測定するLジェトロ方式を採用している。

 フルコンにした場合、ホットワイヤーを活かすこともできるが測れる空気量が決まっていたり、吸気抵抗やトラブル防止のために取り除くことが多い。ターボの場合は圧力センサーで吸入空気の圧力を測定して、空気量を予測するDジェトロ方式にすることが主流だ。NAの場合は同じエアフロレスではあるが、ダイレクトにアクセル開度で空気量を予測するスロットル・スピード方式が好まれる。

「フルコン」ならシビアに細かく制御可能

 もうひとつエンジンを動かすための必需品がクランク角センサーだ。クランクの角度からピストンの位置を割り出して、燃料噴射や点火のタイミングを判断する。 

 その他にもセンサーは使われているが、それらはエンジンがスムーズに機能するための補正用だ。水温センサーは寒い朝の始動性を向上させるために活用。吸気温度センサーは暖かいと密度が減って寒いと密度が増える空気の特性に対応している。スロットルポジションセンサーではアイドリング状態や加速増量などを判断。

 よりシビアなセッティングを行う場合は大気圧を測定して、標高の違いによる空気の濃さも反映させることもある。各センサー類はもともと使われていた純正品が活用できる場合もあるが、フルコンとの相性の良い高性能なものに変えることが多い。ノーマルコンピュータとは全く別な制御方法なので、本来使われているノッキングで点火時期を遅角するノックコントロールもフィードバック機能も使えない。必要な場合は改めてセットし直す必要がある。現在のフルコンの中にはそれらに対応できるシステムがある。

「フルコン」はセッティングが肝になる

 フルコンはチューニングのレベルに関係なく柔軟に対応できるのが最大の強みだ。しかしセットアップはゼロから構築していかなければならない。そのデータには正解というものがなく、セットアップする人間の考え方が反映される。だから同じ仕様のクルマに同じフルコンを使ったとしても味付けは大きく異なる場合も少なくない。それが魅力だったりもする。

 セッティングは絶対的なパワーよりも始動性だったり、中・低速域のアクセルワークだったり、快適性やフィーリングに関係する地味な味付けのほうが難しいと言われている。

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