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「ソニー」「ナカミチ」「マッキントッシュ」! 昭和のクルマ好きが憧れた「1DIN」カーオーディオの世界

カーオーディオの歴史に残るモデル

 “カーステレオ”と呼ばれる以前の“カーラジオ”の時代は、当然ながらワンボディが当たり前だった。ちなみにカーラジオは、1930年にアメリカのモトローラが発売したのが最初で、その後1936年にGM傘下だったデルコ・エレクトロニクスも発売。日本では1951年にクラリオン、1955年にはデンソーテン(当時)が初代クラウン用のカーラジオを発売している。

 ところでワンボディのカーオーディオを指す言葉で“1DIN”というのを耳にしたことがあるかと思うが、これはドイツの工業規格で、意外と新しく1984年に制定されたもの。フェイス(前面パネル)が横180mm×高さ50mmのサイズのものを一般的に1DINと呼び、高さが倍の100mmのものは2DINと呼ぶ。

 一般的に……と書いたのはメーカーによっては(パイオニアなどは)1D、2Dといった独自の呼び名を使っているからだ。ついでながらオーディオシステム本体の呼び名も“メインユニット”と呼んだり(パイオニアなど)、ヘッドユニット(アルパインなど)と呼んだり違いがあるが、指しているモノは同じだ。

ワンボディはカーラジオのサイズが起源

 さて“ワンボディ”だが、冒頭で触れたように、カーラジオのサイズがその起源。基本となるのは1DINで、コレはヨーロッパ車などが早くから採用してきた。VWゴルフの初代のインパネなど思い浮かべてもらえば“サイズ感”が掴めると思うが、標準装着のオーディオは、かつては大抵1DINサイズのユニットが装着されていた。

 というところから、アフターマーケット用のオーディオでも、この1DINのスペース(しかない車種)に収まるように製品が用意された。

ソニーXR-61

 カタログ写真でご紹介しているソニーXR-61はそのひとつで、このモデルは確かアウトビアンキA112を扱っていた当時のインポーター(JAX)がオプションとして用意していたもの。ワンボディにカセットデッキ、FM/AMチューナー、パワーアンプ(6W+6W)を内蔵していた。

SK-800

 もう1台、アルパインが最初のカーオーディオとして1979年に発売したSK-800は、当時の売価で7万4800円と少々高かった代わりに、20W+20Wアンプとドルビーノイズリダクションシステムを内蔵、チューナーはFMのみとして音質にこだわり、フェザータッチのボタン類やアッテネーター(ボタンを押すと音量が瞬時に下げられる機能)、チューニングダイヤル目盛り兼用のカセットスロットのフラップなどデザインもさりげなく凝ったものだった。

 ワンボディのこだわり派として、サウンドストリームもあった。アメリカのブランドでちょうど日本でもカーオーディオのプロショップにシステムのインストールを依頼するようになった頃、コアなマニアから支持されたブランド。

 写真のカタログは1990年のものだが、ホームオーディオ並のAクラス増幅アンプを採用するなど、値段はかなり張ったが、当時のソース(音源)はカセットながら、温かみ、厚みのある音が印象的だった。

 印象的と書いたのは、何を隠そう、筆者はこのサウンドストリームを愛車にインストールして楽しんでいたことがあるから。腕利きの当時のとあるプロショップに取材に行くうちに意気投合。気が付いたらオーダーさせられることになり、クルマ側の制振、遮音対策などもしてもらいながらの工賃込みの総額はウン十万円だった……。 

ホームオーディオでは“通好み”のブランドも

 広報資料を見ただけでは納得できない、何事も自ら実体験しなければ説得力のある記事は書けない……そんな信念の筆者ながら、前段に書いた“実話”で身銭を切り尽くした(!)ため、以下にご紹介するのは、筆者自身、憧れつつも遂に自ら試すことがなかったブランドだ。

TD-1200

 そのひとつがナカミチ。細かな技術の話は省くが、ホームオーディオではメジャーなブランドとはひと味違う凝った技術、メカニズムでプロやコアなマニアから圧倒的な支持を集めていた日本のブランド。カーオーディオへの進出は1983年からで、スライドドア方式のTD-1200、車内での安定したテープ走行を求めたメカ採用のTD-700などの“名機”が揃っていた。上質な音に見合う、ブラックパネルのクールなデザインも多くのファンを魅了した。

3代目レガシィにメーカーオプションとして設定されたマッキントッシュも

 一方でアメリカのハイエンドのオーディオブランドとしてマニア垂涎の的でもあるマッキントッシュが作るカーオーディオも、注目せざるを得ない存在だった。驚いたのは、3代目レガシィ(BE/BH型)以降、何とメーカーオプションとしても設定されたということ。

 3代目レガシィの登場時、とある雑誌の取材で現物を初めて見た筆者は、度肝を“抜かさせられた”というか、その場で「マッキントッシュを聴くためにレガシィの新車を1台ください」と言いたい衝動にかられたほど。

 柔らかで瑞々しい音は紛れもなくマッキントッシュで、とある日本の老舗カーオーディオメーカーが関わっていただけあり、カーオーディオとしてメカ的信頼性の心配も要らなかった。3代目レガシィでは、CD/カセットで始まり、CD/MDも用意されていた。

 レガシィのシステムは一般には入手できなかったが、一方で市販版が写真のカタログ(1995年)のモデルで、ブルーのバックライトに浮かび上がる表示部やMcIntoshのロゴ、艶アリ黒のパネル面とシルバーで縁取られたダイヤル、スイッチ類など、まさしくホーム用のモデルをそのままコンパクトに凝縮したような趣(参考までに写真ではホームのカタログの1ページと一緒に撮ってみた)。 スペック、音質が大事なのはもちろんだが、気に入った音を雰囲気とともに楽しむ、嗜むこともオーディオではとても大事だ。そのことを小さなワンボディで存分に体験させてくれる、カーオーディオの歴史に残るモデルだった。

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