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「AMG」「BMW M」「Audi Sport」の巧み過ぎるブランド戦略! 松竹梅の「竹」グレードの魅力とは?

3社のエンブレムなど

GR・ニスモ・モデューロXの先駆け的存在

 近年、GRやNISMO、STIにモデューロXといった自動車メーカーのサブブランドが手掛けるパフォーマンスモデルが高い人気を集めている。日本でこうしたメーカー系コンプリートカーが誕生したのは1980年代後半のこと。だが、自動車先進国が揃うヨーロッパでは10年以上早い1970年代後半に登場。チューナーカスタマイズカーに至っては1960年代後半にすでにマーケットに投入されるなど、早くからビジネスとして確立している。

 今回は欧州を代表するAMG/BMW M/アウディスポーツのワークスが手掛ける、今注目のAMG A35/M24Oi/S3を例に挙げ、各ブランドの展開を国産ワークスと比較して見ていくことにしよう。

AMGはメーカー直系ではなく独立系チューナーだった

 まずは各ブランドの成り立ちから。メルセデスAMG社はもともとは独立系チューナーで、1967年に創業した。ダイムラー・ベンツ社(現ダイムラー社)のメルセデス・ベンツ(以下メルセデス)ロードカーをチューニングしたカスタマイズカー販売や、レ―ス車両の開発を軸に展開する。1980年代には内外装まで手掛けた自社開発のコンプリ―トカーの販売やメルセデスへの部品供給を開始。1990年に入るとダイムラーとの関係性は強化(オフィシャルレーシングパートナー)され、1993年には初の共同開発車となるC36をリリースした。

 これが現在のAMGモデルの礎となり、1999年にメルセデスの一部門となり、2014年には『究極のハイパフォーマンスを追求するブランド』として現在まで続くメルセデスAMG社となる。メルセデスのサブブランドとしてBクラスを除く全車種にラインアップされている。

 BMW M社はBMW社の100%子会社『BMWモータースポーツ社』として1972年に設立された。モータースポーツ車両の生産、パーツ開発、研究、ドライバー育成がおもな業務であったが、1978年そのノウハウを生かしたオリジナルモデル『M1』の生産を開始した。その後はロードカーをベースにしたMシリーズを数多く販売。1993年には現在のBMW M社となっている。現在はカスタムオーダープランである『BMWインディビデュアル』も受け持っている。

 アウディスポーツは1983年にレースサポート、スペシャルモデルの開発・生産のために誕生したアウディの子会社『クワトロ社』がルーツだ。初のコンプリートモデルがWRC制覇のために開発されたアウディスポーツクワトロである。以後ロードカーは4WDのパフォーマンスモデルを企画・開発している。2016年にアウディスポーツ社へ社名変更し、サブブランドとしての立ち位置を明確化。現在はBMW M社同様にカスタマイズプログラムなども手掛けている。

3社のパフォーマンスモデルには明確なヒエラルキーが存在

 3社のパフォーマンスモデルに共通しているのは明確なヒエラルキーがあることだ。メルセデスは上からAMG、AMGスポーツパッケージ(AMGライン)。BMWはM、Mパフォーマンス、Mスポーツ。アウディはRS、S、Sラインパッケージが用意されている。

 トップモデルのAMG、M、RSの各シリーズは上記のワークスブランドが企画、開発し、車体トータルで磨き上げた高性能コンプリートモデルだ。GRならGRMN、STIでいえばSシリーズが近い。ただし、製造体制は各社異なり、Mが一部の特別なモデルを除き、すべてをBMWの生産ラインで製造(市販車との混成生産)するのに対して、AMGはエンジンのみ自社でチューニング。そのほか、パフォーマンスパーツを含めて納品し、メルセデスの生産ラインで組み上げる。RSは親会社の生産ラインではなく、アウディスポーツ社が独自に製造し、全車種4WD(Sモデル)なのも特徴だ。

 今回取り上げるAMG A35/M240i/S3はワークスコンプリート車両としては中間に位置するモデルだ。レ―ストラックまで視野に入れたトップモデルのAMG、M、RSの各シリーズほどパフォーマンスは必要ないが、ストリートで速く、気持ちよく走れるよう手掛けたスポーツモデルであることが共通。いずれもルックスはやや派手さを抑えつつ、幅広い層に受け入れられる量産グレードのハイエンドモデルとして仕上げられている。国産コンプリートカーでいえば、NISMOロードカーが近いかもしれない。ただし、トップモデルとの棲み分けは各社若干異なる。

自動車メーカーの生産ラインを使って高性能モデルを量産

 A35はハイパフォーマンスモデルのA45と同じくAMGが開発に関与するが、エンジンまで含めてメルセデスの工場で製造される点が異なる。これは、A35(C43、E53も含む)が2015年に、AMGとAMGスポーツパッケージの間を埋めるために登場したAMGスポーツを源流としているため。現在、同じAMGのなかにハイパフォーマンスモデルとエントリースポーツモデルが混在しているのだ。

 A35とA45で比較すると排気量が2Lターボ、駆動方式も4WDと同じだがエンジン型式は異なり、パフォーマンス(A35が306ps、A45が421ps)にも大きな差がある。A35はAMGのイメージを損なわず、その敷居を下げたモデルと言える。

 Mのあとに3桁の数字が並ぶMパフォーマンスモデルのM240iは、同カテゴリーのMシリーズ(M2)とは製造方法や車体だけでなく搭載されるエンジンも含めて共通性があるので、ベースモデルといってもあながち間違いではない。

 ただ、Mシリーズのようなコンプリートカー仕上げではなく、ノーマルの潜在能力を引き上げるトータルバランスを重視してM社がチューニングを施したモデルである。極限域で速く駆け抜けるために必要な電子デバイスなどのハイテクや、軽量パーツなどは省かれていることがクルマの性格を表している。M2コンペティションとは70psの差はあるが、3Lツインターボで340psは必要にして十分。程よいパフォーマンスが魅力だ(M2の新型が発表されていないため旧型にて比較)。

 アウディSシリーズはRSと異なり、量産メーカーの生産ラインを使って製造されるスポーツモデルなのは、ほかの2社と同じ。開発にワークス集団であるアウディスポーツは関与しておらず、あくまでもアウディのスポーツモデルという位置付けだ。エンジンも同クラスのRSシリーズと共通性はなく、S3とRS3で比較した場合、前者は2L直4ターボ(310ps)で、後者は2.5L直5ターボ(400ps)。性能だけでなく、スペックでも明確に差別化しているのが特徴である。パフォーマンスと実用性を両立させ、ゆとりのある高性能オールラウンダーな資質を持たせているのがSシリーズの真骨頂だ。

継続生産し国内外に名前を浸透させることが大事

 ちなみにブランドのボトムレンジとなるAMGスポーツパッケージ(現在はAMGラインに名称が変更)、Mスポーツ、Sラインパッケージは標準モデルのパッケージオプションだ。グッとスポーティに仕立てたエアロパーツやサス、ブレーキなどを投入した、ルックスと走りを磨き上げたモデル。GRではGRスポーツ、STIではSTIスポーツのような存在で、プレミアムブランドのテイストを味わいたいオーナー向けの入門モデルとなっている。

 日本のワークスの展開は今回取り上げたドイツプレミアム御三家のサブブランドをなぞり、目標としていることがラインアップやカスタマイズのプランを見てもよくわかる。20年前はサブブランドが単独で製造していため大量生産が難しかったが、現在は自動車メーカーとの協業に。そのため価格を抑えながら高性能なコンプリートカーを量産できる体制が整っている。国内のみならず、海外でもブランドが浸透してきたことは大きな意味を持つだろう。プレミアム性で御三家に並ぶのは難しいかもしれないが、まずは収益を上げて継続することが大切。そこから活路が見えてくるはずだ。

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