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MTの86とバイク3台を所有!「普通の女の子」だった私がモータージャーナリストになったきっかけ

「モビリティの楽しさを伝える」という今の仕事

 私は現在、クルマ1台、バイク3台を所有している。内訳は、トヨタ86、カワサキZ400、GASGAS TX200、カワサキKSR110だ。この4台を所有し始めた理由を簡単に説明すると、それは仕事で必要だからである。なぜなら、私の仕事はモータージャーナリスト。クルマやバイクなどのモビリティや、モータースポーツの楽しさを、多くの人に伝える仕事をしているからだ。 では、なぜモータージャーナリストという仕事を選んだのかというと、それはもちろんクルマやバイク、モータースポーツが大好きで、それらに関わる仕事がしたかったからである。

運転免許は取得したもののペーパードライバー

 とは言っても、私は子供のころから乗り物が好きだったわけではない。地方出身の私は、移動の足が欲しくて18歳で運転免許を取得するも、実家のクルマを運転させてはもらえず、ペーパードライバーとなった。急こう配の坂の上にあった大学に通うために、50ccのスクーターには乗っていたが、運転免許を使う機会はそのぐらい。そうなると、もう公道をクルマで走るなどただの恐怖である。

 レンタカーを借りて何度か挑戦はしてみたが、合流は怖いし、急ブレーキを踏んでいるつもりはないのに、ガックンブレーキしか踏めない絶望的な有様で、1度はクルマの運転を諦めたほどだった。しかし、遠くに行くための交通手段が欲しくてAT限定の中型2輪免許を取得。中古で安かったヤマハ「マジェスティ」を購入したが、この時点での私の乗り物へのイメージは、ただの移動手段に過ぎなかった。

MOTO GPに憧れて2輪の大型免許を取得

 そんな私の乗り物への意識を変えたのは、偶然、栃木県にあるツインリンクもてぎで見た、MotoGP 日本グランプリだった。当時の私はサーキットはもちろん、モータースポーツの存在さえ認識していないレベルで、初めて見るバイクのレースに大興奮。ここで重要なのは、私が興味を持ったのはコンマ1秒のスピードを競うロードレースという競技そのものではなく、スタート直後、ライダーたちがほぼ1列になってマシンをバンクさせながら華麗に立ち上がっていくコーナリングの美しさだったという点である。

「なに?あれ!!! あの列に入りたい。」無知とは恐ろしいもので、世界最高峰のライダーたちが作り上げる一糸乱れぬコーナリングに、水泳のシンクロ競技のような美しさを感じてしまったのだ。公道を走るバイクの右左折とは違う、フルバンクのコーナリングが、当時の私の目には斬新な光景に映ったのだと思う。

 それからの私は「どうすればあの列に入れるのだろう」と考え、まずはAT限定だった中型2輪免許の限定を解除。そのままの勢いで「あの列に入るためには大型にも乗れなきゃ!」と、よくわからない勘違いで突っ走り、大型二輪免許を取得した。

 そして「ビックスクーターではあのフルバンクでのコーナリングはできない」とわかりMT仕様のバイクに買い替えることを決めるのだが、そこも知識がなさ過ぎて、選んだのは当時MTモデルで一番カッコいいと感じたヤマハDS250だった。

そして「バイクに乗る」ことを仕事にすることを決意

 そんなMotoGPライダーたちのコーナリングへの憧れから始まった私のバイクライフだったが、MTバイクを手に入れた次は「あのコーナリングのやり方が教えてほしい」と、趣味でサーキットや峠を走るおじさんライダー達に頼み込み、まずはワインディングロードへのツーリングに連れて行ってもらうことに成功。軽快に走り抜ける峠ライダーたちに必死で付いて行こうとするも、クルーザータイプのDS250では、アンダーをすぐに擦ってしまい、バンクさせてのコーナリングには程遠い現実に気付くことになる。「あれ? このバイク何か違う」そんな私の様子に、峠ライダー達は大爆笑しながらも「本気で言ってたんだ?」と、サーキット練習に協力してもらえるこになり、そこから私のバイク人生がスタートした。

 まずは愛車を、MT仕様でサーキットを走れるバイク「カワサキZ250」に乗り換え、スポーツ走行を初体験。そこで移動手段としてのバイクではなく、マシンを自分で操っていることが体感できる、モータースポーツとしてのバイクの楽しみ方を知ることになる。 そして、もっともっと上手くバイクを操れるようになりたいと、その難しさと面白さに、どんどん夢中になっていくのだが、同時に「モータースポーツには、お金がかかる」という新たな事実も知ることになる。社会人になって数年目の小娘が、このお金のかかる趣味を続けるにはどうすればいいのか。私の出した答えが「バイクに乗ること自体を仕事にしてしまう」という決断だったのだ。

あらゆるバイクを乗りこなすために 

 こんな風に始まった私のバイクライフだが、趣味でMotoGPライダーのコーナリングの真似事をしているだけとは違い、仕事にするとなると、どんなバイクでも乗りこなせなければならない。そうなると結局練習が必要で、練習にはお金がかかる。その無限ループを解決するために追加したのが、KSR110とTX200の2台である。

 それぞれの役割は、KSRが転んでもそこまでお金がかからないサーキット練習用のミニバイクで、TXがロードコースで走るより大幅にリーズナブルに走行できるオフロード用バイク。最初はライディングの練習のために入手した2台だったが、乗ってみると各々の操作性や各バイクカテゴリーが持つ世界観の違いなど、いろいろなことを発見した。3種類のバイクを所有することで、違った楽しみ方があることを知ったのだ。

 そして今では、ツーリングや走行会に参加するためのZ400と、ミニサーキットでライディング練習をするためのKSR110、オフロード遊び用のTX200と、3台とも用途によって使い分けられる、大事な愛車となっている。

FRスポーツカーの86を購入したきっかけ

 ここまでは、バイクにハマったきっかけと楽しさを紹介してきたが、ではクルマはというと、やはりきっかけは仕事だった。バイクの楽しさを伝えるジャーナリストとしての道をスタートさせたものの、やはり嗜好性の高いバイクというジャンルだけでは仕事が少なく、クルマにも仕事の幅を広げたいと思ったことが、クルマを購入するに至った経緯である。

 バイクも同様だが、その楽しさを伝える仕事をしたいと思っているのに、自らクルマを所有していないなんて私の中ではあり得なかったのだ。いい所と悪い所の両方を知らなければ、人に面白さや良さを伝えられるはずもない。そして、これらの一番マイナスとなる部分と言えば、維持費や保管場所などの問題だろう。

 このような理由から、クルマを購入することを決めた私だったが、そもそも私はペーパードライバーではなかったのか。そう思った方もいるだろう。しかし、バイクのMT仕様に乗り慣れたことでフットブレーキに慣れたのか、何度かレンタカーを借りて乗ってみたAT仕様のクルマは、ペーパードライバーだった当初とは違い、自然なブレーキが踏めるようになっていた。

 そのため、普通に運転をするだけなら問題はなかったのだが、バイクと同じくどんなクルマでも乗れなければ、仕事にはならない。そこで、教習所を卒業してから1度も乗っていないにも関わらず、初めての愛車に選んだのはMT仕様の86だった。

 以前から仲良くしていたクルマ屋さんで購入したのだが、納車日に引き取りに行った際にはMTの操作方法を思い出せず、駐車場を出ることができなかったことを覚えている。クルマ屋さんは絶句しながらも、その場で簡単な教習をしてくれ、なんとか自宅まで運転して帰ることができた。

 そんな状況でもMT車を買ったこと。それが、私の今の仕事に対する覚悟だったのだ。「MT仕様は絶対に面倒臭くなるからやめたほうがイイよ」多くの人がMTペーパーだった私の決断に反対したが、私にとって愛車はMT仕様でなくては意味がなかったのだ。なぜなら、AT車なら乗る機会はいつでもあるが、所有しなければMT車に乗る機会など滅多にない。モータージャーナリストとして、いつか来るかもしれない「MT車に乗る仕事」を逃すわけにはいかなかったのである。 教習所を卒業して以来のMT車の運転は、想像以上に楽しいものだった。クラッチとブレーキを踏みながらエンジンを始動した際の迫力あるエキゾースト音から始まり、クラッチを繋いでスムースに発進できたときの小さな達成感や、坂道発進がバッチリできた瞬間など、MT車の運転には小さな成長を感じられるポイントが至る所に散りばめられていて、飽きることはない。さらに、公共交通機関とは違い、自分だけのプライベートな空間で遠くまで移動できる点も、ワクワクするポイントだった。

 

私の行動範囲を広げてくれた86

 さらに、クルマを所有したことは、私のフットワークを軽くし、大幅に行動範囲を広げてくれた。例えば遠出に誘われた際も移動手段を確保する必要がなくなり、仕事においてもプライベートにおいても、すべてが自由になった気がした。自分の行動において、人に頼る必要がなくなったのだ。誰に気兼ねをすることもなく、好きな時に好きな場所に行ける。最高の生活ではないだろうか。

 とはいっても、もちろん仕事はしているし、誰にも関わらずに生きていくことは不可能だから、柵がないと言えば嘘になる。それでも、クルマとバイクを所有したことは、私の生活をさらに充実度の高いものにしてくれたことは事実だし、なにより本当の意味での自立をさせてくれた。 興味のない人にとっては、ただの移動手段に過ぎないかもしれない。しかし、クルマやバイクは、所有する人の視野を広げ、人生を変化させるきっかけをくれる存在だと私は思う。

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