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ニュル24時間レースで鍛えた運動性能! 400台限定「WRX STI S207」は何がスゴかったのか

走行性能以外にも静粛性や快適性も向上している

 スバルWRX STI S207はVAB型WRX STIをベースとしたコンプリートカー。2015年に400台限定で発売されたモデルだ。3代目インプレッサのGRB型(ハッチバック)をベースとしたR205や、マイナーチェンジ後のGVB型(セダン)をベースとしたS206に続くWRXベースのSシリーズの第7弾となる。

 ベースモデルがGR/GV系からVABへスイッチしたことでボディ剛性が大幅に向上し、ポテンシャルも向上している。この辺りはSTIコンプリートカーを持ってしてもベースモデルの持つ“素材”の部分だけはどうにもならないこともあり、S206からS207への進化は見た目やスペックだけでは計り知れないものがある。

“S”にふさわしい装備を多数搭載

 S207のスペシャルアイテムはエクステリアにSTI製専用大型フロントアンダースポイラーやリヤバンパーエアアウトレット、BBS製19インチアルミ鍛造ホイールなどを装着。

 メカニズム面ではエンジンバランス取り、専用ECUに低排圧マフラー、ボールベアリングターボの採用などにより、最高出力328ps/7200rpm、最大トルク44.0kgm/3200-4800rpmを発生。 高められたスペックを受け止めるブレーキもブレンボ製モノブロック対向ピストンキャリパー(フロント6ピストン、リヤ4ピストン)とドリルドローター(フロント2ピース・リヤ1ピース)を採用している。

専用開発のビルシュタイン製減衰力可変ダンパーを採用

 もちろんSTI珠玉のチューニングが施される足まわりには国内メーカー初採用となる専用開発のビルシュタイン製減衰力可変ダンパー「ダンプマチックII」を採用。さらに「11:1」のギヤ比を持つ専用ステアリングギヤボックス、フレキシブルタワーバー、フレキシブル ドロースティフナーなども惜しみなく標準装備される。

 これらのチューニングにより、ベース車比(STI社内実験結果)で、ヨーレートの応答遅れ時間を約13%、横G遅れを約10%低減。車線変更時ロールレートを約23%減らして、操縦安定性と乗り心地を高めている。

インテリアにもスペシャルアイテムを採用

 インテリアもスペシャルアイテムが満載だ。セミアニリンレザー表皮の専用レカロ製バケットタイプフロントシートや遮音用中間膜を挟み込んだフロントウインドウは、吸音材・防振材などを追加することで、静粛性や快適性も向上した上質なプレミアムスポーツモデルに仕立てられている。

 Sシリーズコンプリートカーとは切っても切れない関係にあるニュルブルクリンク24時間レース(以下STI NBRチャレンジ)もVAB型での初参戦となった2014年はクラス4位という結果だったが、2015年は見事クラス優勝を獲得。その記念の意味も込められたNBRチャレンジパッケージには、リヤに誇らしげにチャンピオンエンブレムが添えられる。

 このNBRチャレンジパッケージはS206と同じくドライカーボン製の大型ウイングやブラック塗装のBBS製アルミ鍛造19インチホイール、センターマーク付きのウルトラスエード表皮のステアリングなどの特別装備が与えられたが、ドライカーボン製ルーフの装着は見送られている。

 その代わりと言ってはなんだが、ボディカラーにGRB型WRX STIスペックCに採用されたサンライズイエローのボディカラーを纏ったS207 NBRチャレンジパッケージイエローエディションを100台限定で設定した。

S206からの正常進化を感じさせる乗り味

 実際の乗り味はどうか? デビュー当時、プロトタイプのSTIデモカーのS207 NBRに試乗した第一印象は「S206と比べて硬派になった」だった。その後ユーザーカーのS207 NBRに改めて試乗したところ、S206からの正常進化を感じさせる印象へと変わった。

 全体的にS206よりもシャープになった印象はデモカーと変わらないが、デモカーよりもずっとマイルドで、路面からの入力も角を丸くした上質なフィーリングを得られた。これの違いは試作車両だからなのか、プロドライバーの全開走行を多用したシビアコンディションだからなのかは不明だが、何よりオーナーの手元へ届くクルマの乗り心地の方がよかったことに何よりもホッとした。

 GR/GV系ではR205、WRX STI tS、WRX STI A-LINE tS、S206、WRX STI tS TYPE RAとtSシリーズも含めると5種類ものコンプリートカーがリリースされたが、VA系ではS4 tSや北米専売のS209を含めても4種類とコンプリートカーの設定が少なかったことで、貴重な存在といえるだろう。

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