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自動車カスタマイズのド定番! 新車も「シャコタン」「ツライチ」が増えている理由とは

新型スープラのリヤ

カッコよさを追求するクルマ好きの永遠のテーマ

 クルマのカスタマイズ・チューニングといえば「シャコタン・ツライチ」は鉄板だ。もちろん、最近はリフトアップもトレンドとなっているが、スポーツカーやセダンでは、車高を下げて、インセットでホイールを外側に出すのがカッコイイという流れは不変だろう。

自動車メーカーのコンセプトモデルもシャコタンツライチ

 そもそも自動車メーカーが新車発表時に公開するイメージスケッチにおいても、ほとんどのケースで大径ホイールを履かせ、シャコタン・ツライチとなっていることが多い。そのカッコよさはメーカーのデザイナーも認めている。

 では、シャコタン・ツライチのどこがカッコよく見えるのかといえば、タイヤとフェンダーのすき間が少ないことだ。実験してみるとわかるが、スプリングを短くするなどで車高を下げなくとも、タイヤだけ大径にしてフェンダーのギリギリにセットすると視覚的にはシャコタンのカッコよさが実現できる。

 また、ツライチというのはタイヤを車体が許すギリギリまで外側にセットするということ。これはシャーシセッティングにおいてもトレッドを広げる効果がある。

 やみくもにトレッドを拡大すればいいというわけではないが、基本的にはスタビリティの向上につながる手法だ。とくにFFのリヤタイヤでは、ツライチ的なセッティングは高速安定性にはプラスになる。逆にクルクルと曲がるセッティングにしたいときはトレッドを狭くしたほうがいいかもしれないが……。

 実際、この秋に発売予定の新型ホンダ・シビックでは、安定性の向上を狙ってリヤトレッドが12mmも広げられている。プラットフォームがキャリーオーバーなのでトレッドを広げるのは難しい部分もある。しかし、リヤフェンダー折り目部分の形状を工夫することで、片側6mmのスペースを生み出したという。

タイヤ&ホイールとフェンダーの隙間には意味がある

 シャコタン・ツライチにおいて課題となるのはタイヤとフェンダーの干渉だ。フェンダー部分というのは開放部だから、鉄板そのままではペナペナになってしまう。

 通常のクルマでは、フェンダーアーチの縁のところを、ツメ(ミミ)といって鉄板を90度程度に曲げることで強度を確保する必要がある。新型シビックでは、そのツメを折りたたむような特殊な形状にして、ミリ単位でクリアランスを確保した。

 このツメが大きいほどタイヤは外側に出すことができず、ツライチとは程遠いスタイルになってしまうのだ。それが純正状態でのタイヤが引っ込んだスタイルの大きな原因だ。そのためカスタマイズでツライチにしようと思うと、ツメを加工してタイヤに干渉しないようにする必要があり、その作業を「ツメ折り」といったりする。

 自動車メーカーはタイヤとフェンダーのクリアランス設定について、チェーンの装着も考慮して行っている。金属チェーンをつけても干渉しないだけのスペースを確保しようとすると、フェンダーとタイヤの間がスカスカになってしまうのも仕方がないことだ。

サスペンションの進化で新車のツライチ化が増加

 サスペンションがソフトで、ロールが大きなクルマの場合は静止状態ではスカスカに見えるすき間も、目一杯ロールさせるとギリギリのクリアランスになるケースもある。もちろん、タイヤを切ったときに干渉しないことも重要だ。止まっている状態でセッティングするとタイヤとフェンダーが当たってしまうことがあるのは、このようにタイヤがストロークする(動く)ためだ。それを防ぐにはサスペンションを固めていくのが常套手段である。

 さらにサスペンション形式によっては、ストロークによるタイヤ位置の動き方に違いがある。リジッドサスペンションでは、スプリングが縮んだときにタイヤが外側に移動することもあり、そうした部分まで考慮してクリアランスを決める必要があるのだ。最近の新車が「シャコタン・ツライチ」に近づけられる背景には、タイヤの動きをしっかりとコントロールできる、マルチリンク形式などのサスペンションを採用しているという面も無視できない。

 いずれにしても、自動車メーカーは「シャコタン・ツライチ」なスタイリングのほうが魅力的であるということは昔からわかっていた。だからといって、タイヤとフェンダーが干渉するようなクルマを新車で出すわけにはいかない。カッコいいスタイルを、メーカーに求められる要素を満たしながら実現できるだけの量産技術が確立したことが、最近の新車において「ツライチ」が増えてきた理由だ。

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