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市販すればヒット確実? 現代に蘇った伝説のレーシングマシン「アバルト1000SP」

たった1台だけのプロトタイプモデル

 アバルトブランドがめでたく復活して、今やすっかりと定着した感がある。過去の名車やグレードをモチーフにして、うまくアップデートしているだけに、単なる昔の名前に頼った復刻ブランドではないのが人気を博している理由だろう。実際に街中でもよく見かける。

 まさに勢いのあるブランドと言っていいのだが、最近大いに話題になったのが、アバルト1000SPだ。アバルト好きの方ならご存知のように、アバルトが手掛けたモデルにはふたパターンあって、市販車ベースとレースなどを目的としたプロトタイプモデルに分かれる。

リッター100psオーバーのエンジンを搭載

 とくに後者はボディはもちろんのこと、アバルト自製のエンジンを積むモデルもあって、かなり過激だ。それゆえ、ファンは心を強く引きつけられる。1966年に登場したアバルト1000SPはそのなかでもかなりスペシャルなモデルで、SPは「スポーツ プロトティーポ(タイプ)」の略で、チューブフレームの上にグラスファイバー製のオープンボディを載せているのが特徴のスペシャルモデル。 手掛けたのはアルファロメオで活躍したマリオ・コルッチで、鋼管フレームを得意していた。通常のリヤではなく、コルッチのアイディアでミッドシップに積まれたエンジンはアバルトの流儀となる小排気量で、直4DOHC、982ccから105psを発生した。

 ちなみにこちらはアバルトオリジナルではなく、フィアットの600ccがベースとなる。スペック的にはそこそこだが、車両重量はたったの480kgしかないことから、十分にモンスターマシンだった。最高速度は220km/hとされた。実際、さまざまなレースやヒルクライムで活躍したし、伝統のニュルブルクリンク500kmレースではクラス優勝、総合でも3位に入る快挙を成し遂げている。

最新技術を採用しながらオリジナルのスタイルを踏襲

 このような輝かしいプロフィールにリスペクトしたのが、現代に蘇ったアバルト1000SPだ。もともとは2009年に発表されたプロジェクトで、オリジナルの誕生55周年を記念して、2021年にたった1台だけ作られた。

 まず特徴となるのはやはり軽量で、鋼管フレームではないが、カーボン製のセンターセルやアルミをふんだんに使っている。さらに空力に関してもオリジナルのスタイルを踏襲しつつ、現代の最新技術を採用することで、さらに磨き上げたものになっているという。

 エンジンについてはさすがにNAの小排気量というわけにはいかず、1742ccの直4ターボ、つまりアルファロメオ4C譲りの240psを発生するものを搭載している。デザインは少々マッチョになっているが、往年の1000SPを彷彿とさせるもので、オリジナルの持ち味をうまく表現したセンスのいいもの。

 フロントやリヤのディテールもうまく再現している。各地のイベントに登場するとのことなのだが、たった1台というのは残念なところ。アルファロメオの4Cはすでになく、ブランドは違うものの、その代わりとして市販化すればけっこう売れると思うのだが、今後の動きに注目だ。

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