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煽るな(本当に)キケン! 旧車の「坂道発進」は想像以上に「鬼門」な理由とは

適切な車間距離を保つことで後続車との接触が減らせる

 もはや新車の世界では絶滅危惧種となっているMT車だが、旧車界においてはAT車のほうが少数派で、MT車が大勢を占めている。クラッチ操作が必要となるMT車といえば、坂道発進が避けて通ることのできない鬼門となり、これが苦手だったことにより、ドライブデート時に彼女を失望させてしまい、次のチャンスが無かった……という自動車趣味人も少なくないはずだ。

 逆の言い方をすれば、坂道発進をスムースに行えたらカッコイイので、MT車を運転する際のハイライトのひとつになるともいえるだろう。 あらためて説明しておくと、坂道発進とは信号待ちや渋滞時などに上り坂でクルマが停止し、その状態から発進する運転操作のことだ。 上り坂に駐車し、そこから動き出す際にも坂道発進が必要となる。平地や下り坂での発進とは異なり、上り坂で停止・駐車したクルマには坂の下方向への重力が働いている。そのため通常の運転操作では動き出し時にクルマが下がってしまう可能性があり、これを防ぐために坂道発進の技術が必要となるわけである。

 MT車で坂道発進時にクラッチの操作に失敗するとエンストしたり、クルマが下がったりするが、AT車ばかりが売れている昨今は、MT車が上り坂で発進時に“あたふたする”ことを知らない後続車のドライバーがリヤバンパーのギリギリまで大接近してくることが多々ある。そのため、以前よりも確実な坂道発進が求められるようになったといっていい。

パーキングブレーキを使用しないMT車の坂道発進方法

 1974年式のアルファロメオGT1600ジュニアを23年間にわたって愛用している筆者は、パーキングブレーキを使うことなく坂道発進をしているが、その手順を言葉で説明すると、こういうことになる。上り坂で停止し、ギヤはニュートラル状態で、まずルームミラーにて後続車の接近具合を確認する。右足でブレーキペダルを踏んだまま、信号が青になる30秒ぐらい前に左足でクラッチペダルを踏み、ギヤを1速に入れて心と身体の準備をする。 もう一度、ルームミラーで後続車の接近具合を確認する。信号が青になり、安全に発進OKとなったタイミングで右足をブレーキペダルからアクセルペダルにすばやく踏みかえ、左足で踏んでいるクラッチペダルを少し戻して半クラッチ状態にする。

 エンストすることなく発進できたら、さらにアクセルペダルを踏み込み、クラッチペダルを完全に戻して加速する、といった感じだ。

パーキングブレーキを使用した坂道発止の方法

 パーキングブレーキを使う坂道発進は、概ね、こういう手順だ。上り坂で停止し、ギヤはニュートラル状態でパーキングブレーキをかける。

 一応、このときも右足でブレーキペダルを踏んでおき、ルームミラーで後続車の接近具合を確認しておく。パーキングブレーキをかけ、右足でブレーキペダルを踏んだまま、信号が青になる15秒ぐらい前に左足でクラッチペダルを踏み、ギヤを1速に入れて待機する。 信号が青になり、安全に発進OKとなったタイミングで右足をブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえ、一定の力でやや強めに踏んだまま、左足で踏んでいるクラッチペダルを徐々に戻して半クラッチ状態にする。半クラッチ状態をキープしながら、パーキングブレーキを戻す。

 エンストすることなく発進できたら、さらにアクセルペダルを踏み込み、クラッチペダルを完全に戻して加速する、といった塩梅である。パーキングブレーキは、あくまでもクルマの後退防止のために使っているので、パーキングブレーキを使う坂道発進の際にもアクセルペダルとクラッチペダルの連携を上手に行うことがキモとなる。

旧いクルマはパーキングブレーキの効きが甘いことも

 アルファロメオのエンジンは今も昔もトルクが細いため、坂道発進時には少々のコツが必要となるが、筆者の場合、いちいちパーキングブレーキを使っていたら、そっち方面のパーツにも負担がかかると思っているため、余計なトラブルを回避するためにパーキングブレーキを使うことなく坂道発進をしているのだ。 アルファ155で坂道発進する際に後続車が車間をつめすぎていたので、やむを得ずパーキングブレーキを引いたのにズルズル下がってしまったという悲しいエピソードも筆者の周囲で確認されている。

クラッチペダルが重たくて発進さえ苦労するクルマもある

 そして、これは特殊な例だが、クラッチペダルが重すぎて、そもそも坂道発進をするのが超難しいスーパーSUVも存在している。そのクルマは何かというと、ハイパフォーマンス・オフロードカーとして知られるランボルギーニ LM002だ。 ウルフ・カウンタックことランボルギーニ カウンタック LP500S ウルフ・スペシャル ♯1と1988年式の5000QVをベースとし、細部に至るまで徹底チューニングした『イオタ』と呼んでいいスペックのカウンタックを愛用しているスペシャルショップ「アウトモビーリ ヴェローチェ」の岡戸栄一代表は、以前、LM002も所有していた。「自分が所有していたのは最終型で、ディアブロ・エンジン仕様のLM002だったのですが、クラッチペダルを踏み込むとシートの上でお尻が後ろへズルっと動いてしまうほど重たかったです。カウンタックもそれなりに重いんですが、それとは比較にならない重さでした」とは、岡戸さんのコメント。とにかくクラッチペダルが重いので、平地でさえ発進をするのが大変だったそうだ。 AT車しか運転したことがないドライバーさんには、坂道発進をアシストする機能のヒルスタートアシストを装備している近年のMT車ばかりではなく、パーキングブレーキが心許ない旧いMT車や、クラッチペダルが恐ろしく重いので坂道発進が大変な旧いMT車が存在していることを意識しながら上り坂を走っていただきたい。 旧車オーナーを代表し、旧いクルマでの坂道発進が想像以上に大変であることをお伝えしておく。

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