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「体重が軽いヤツが速い」は本当か? サーキットでよく聞く「都市伝説」の真相を暴く

聞いたことはあるけど確証はない噂について検証

 サーキットを走る人にとっては常識であっても、真偽はイマイチ知られていない『都市伝説』の数々。昔から語り継がれているだけあり信憑性は高そうだが、テクノロジーの進化や新たなテクニックの登場により、通用しなくなったり違う結果になることがあるかもしれない。代表的なエピソードをいくつか挙げて検証してみよう。

「カートは体重が軽い方が速い」は本当か?

 まずは免許がない人でも気軽に楽しめるカートの話から。軽ければ軽いほど加速やブレーキが有利になる、カートでも普通のクルマでも疑う余地はない。

 ただし軽量化やパワーアップの手段が多いクルマに対し、カートはほぼイコールコンディションに近い状態なうえ、元々の重量がクルマとは比べモノにならないほど軽い。そのためドライバーの体重が速さに与える影響も非常に大きく、とあるカート場では「体重が10kg違うとタイム差は0.5秒」なんて言われている。

 当然ながらコースの長さやレイアウトにもよるし、運転の技術を体重差だけで凌駕できるはずもない。とはいえ同じドライバーにウエイトを取り付け、まったく同じ走りをすれば間違いなく重いほうが遅いはずだし、タイム差は一般の乗用車よりも大きいと思われる。0.5秒だとしてもカートコースは500~1000mがほとんどで、対して本格的なサーキットは3000mオーバーなので、距離で換算するとまったく勝負にならないレベルの差だ。

 カートでよく聞く「どうしても小学生に勝てない」という話は、コース慣れやテクニック以上に体重差のせいといえるだろう。

「エアコンを入れたままサーキットを走れると壊れる」は本当か?

 次は「エアコンを使ったまま走ると壊れる」という話。エンジンをレブリミットまで回すサーキットは、各部の負荷も一般道と比較にならないほど大きい。確かに昔のクルマはエアコンを動かすコンプレッサーに大きな負担がかかり、何かしらのトラブルに繋がるため全開走行はエアコンをオフにするのが常識だった。しかし最近のクルマは電動コンプレッサーの採用などで負担が小さくなったり、オートエアコンは温度調節のため自動でエアコンをオン&オフするので、昔の都市伝説は必ずしも通用しなくなったといっていい。

 もっともコンプレッサーを動かすときの負荷によって、エンジンが多少なりともパワーロスするのは今も昔も一緒なので、全開でアタックするときにエアコンを切ったほうが有利なのは変わらず。暑さで朦朧として走るのはほかのクルマを事故に巻き込む可能性があり、状況に応じてエアコンを使いながら走るのがベストだ。

「サーキットでAT車は遅いしつまらない」は本当か?

 最後は「ATは遅いし壊れるし面白くない」という話を。走るなら絶対にMTと拒絶反応を示す人も少なくないが、今や乗用車は販売台数の90%以上がATで、AT限定免許の取得者も増えるいっぽうだ。GT-RやGRスープラをはじめ2ペダルのみのスポーツカーは数多くあり、その流れはミドルクラスやエントリークラスにも波及するはず。

 現時点では単純な速さだけならMTに一日の長があれど、ATでのスポーツ走行はまだ黎明期といっていい。今後チューニングやテクニックが熟成されるにつれ、その差は徐々に小さくなっていくに違いない。

 もうひとつの「壊れやすい」に関しても必要に応じて熱対策するのはMTと変わらず、独特なアイテムといえばATFやCVTオイルのクーラー程度だろう。さらに「面白くない」はハッキリいって食わず嫌いでしかない。N-ONEのワンメイクレースはCVT限定だが多くの参加者で賑わっているし、今年から始まったヤリスカップもCVTだけのクラスがある。

 今後はレースに限らず草の根イベントでも、ATやCVTがどんどん増えていくと予想される。MTにはMTの楽しさや魅力があるのと同じで、先入観だけでATを否定するのはナンセンスだ。この都市伝説はもはや『過去の遺物』と断言していいだろう。 

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