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ル・マン24時間レース参戦チームオーナーが愛用する最新医療用車イス「Genny」とは?

フレデリック・ソーセ氏が愛用する医療用車イス「Genny」

セグウェイの技術を転用した最新の医療用車イス「Genny」とは?

 2016年のル・マン24時間レースの特別出走枠で、自身がドライバーとしてエントリー。そして2021年にはチームオーナーとしてイノベーティブカー・クラスからル・マン24時間レースに参戦したフレデリック・ソーセ氏は、人喰いバクテリアによって四肢切断という障がいを負った人物である。

 そして2021年大会では、同じく下半身にハンディキャップを抱える日本のレーシングドライバー青木拓磨選手も、このソーセ代表率いるSRT41のドライバーとしてル・マン24時間レースに出走した。 そのソーセ氏がサーキットでつねに愛用しているのが、世界初の自立式医療用車イスであるGenny(ジェニー)だ。電動の車イスともいえるが、メインの車輪ふたつでバランスを取って自立しているのが特徴だ。操作はハンドルバーが備えられているが、バーを使用しなくても自立と走行を可能にしている。

 というのも、じつはこのデバイスにはなんとSegway(セグウェイ)のセルフバランシングが搭載されているのだ。つまり、セグウェイの車いす版といった感じだ。だからハンドルバーを使用しなくても体幹があれば操作することができる。

セグウェイとは違いスタンドの装備で自立することができる

 残念ながらセグウェイは日本国内での普及という点では成功を見なかったといえるため、実際に目にしたことはあっても、体験乗車した人は少ないことだろう。でもそんなセグウェイに乗った人ならわかると思うが、一番最初に身体を預けるのがなかなか怖い。そのため最初は、多くの人がセグウェイの上でガクガクしながら乗車。もちろん慣れればこれもなくなるのだが……。

 そこでこのジェニーがセグウェイと異なるのは、乗降の際は伸縮式のスタンドが出ており、完全に固定された椅子に座るような状態で着座し、そこから走行準備に入ることができるので違和感なく移動できるのだ。

ハンドルバー操作のほか重心移動でコントロールが可能

 操作方法は、両足の間から伸びるハンドルバーによってスピードと方向をコントロールできるが、そのコントロールは直感的で扱いやすい。また、操作パネルやバッテリー残量計などが表示できるインフォキーはひじ掛けの下に小さく取り付けられている。

 ちなみに、ハンドルバーは簡単に取り外しができて、乗降の際はこのバーを取り外して乗降することとなる。このセグウェイ譲りのセルフバランシングシステムは微妙な制御を乗員に要求するため、脊椎損傷者の体幹の無意識の回復のトレーニングにもつながるという。

 また、このジェニーでは、車いすのように前輪の挟み込みに気を付けたり、雨の日に傘を持つことも、ソフトクリームを舐めながら移動が可能だと語る。

 また、緊急時にはひじ掛けを外側に倒すことで、スタンドが出てきて車両を止めながら安定させることが可能となる。

 すでに欧州で販売しているモデルであるが、現在日本国内での販売は検討中だという。一充電で25kmほどの走行が可能。ハンドルバーとバックレストを折り畳むとその全長×全幅×全高は各67cm程度になる。ちなみに最低地上高は9cm、最大登坂能力は18%、バッテリーの充電時間は6.5時間(欧州)というスペックだ。ライトのオプションも用意され、極太タイヤや大型フェンダーを装備するオフロード用のX-ROADキットもラインアップ。

 カラーバリエーションは、この写真にある白・黒以外に赤、グレーの4色展開をしているが、もちろんカラーオーダーも可能。欧州では販売価格は1万8000ユーロというから、約250万円弱といったところだろうか。

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