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ホンダ=スポーティを印象づけた1台! 当時最先端の技術を満載した初代ホンダ・プレリュードの足跡

初代プレリュードのスタイリングイメージ

プレリュードがなければNSXも誕生しなかった!?

 1972年にシビック、76年にアコードを発売して四輪メーカーとしての地位を完全に確立したホンダは、1978年にスポーティタイプ小型乗用車「プレリュード」を発売する。一定の年代の方には懐かしいに違いない緑色看板「ベルノ店」のデビュー・モデルだ。のちにCR-Xやインテグラ、初代NSXなどが続き「ホンダ=スポーティ」をイメージづけたベルノ店始まりのモデル。そしてライバルたちの多チャンネル展開があるなかで、後発メーカーのホンダが、狼煙を上げる機運となった一台である。

当時のフラッグシップクーペとして生まれる

 当時の紹介では「前席を重視した4人乗りの室内、国産車で初めての電動式サンルーフを装備。見やすく配慮した世界でも稀な集中ターゲットメーターなど、数多くの新しい技術を採用。パーソナルライフを楽しむための2ドアフィックスト・クーペである」と記される。

 スタイリングは、当時のホンダの流れを汲むもの。左右角型ヘッドライトの内側のボンネットのセンター部分が低く見える造形が特徴で、このスタイルは2代目以降にも受け継がれることとなる。リヤも同様に左右テールランプの中央側が低く仕立てられており、前後のバランスが保たれている。視界にもこだわっており細目のピラーを採用。Bピラーをブラックとしたことで、非常にスムースな洗練されたスタリングとなっていた。

 Aピラーよりもドアの開口部がずいぶん前にあることもあって、開口部に広さという実用性の確保とロングノーズ感も演出されており、メイン市場の北米を意識していたことも想像できる。

 ボディはサイドパネル一体型のモノコックで、エンジンルームのサブフレームをモノコックと一体化させたこともあり、軽量化と剛性強化を果たしている。サンルーフを持つためかサイドルーフレールの二重箱構造、ルーフパネルの構造強化も図られて、安全性を高めている。防錆性のために亜鉛鋼板も使うなど、当時、ホンダのフラッグシップとなるモデルだけに、微に入り細を穿つ開発が行われたことが解る。

高機能インテリアが広告塔になる

 それはインテリアも同様で、スイッチ操作ひとつで開閉できる電動式サンルーフを装備(E仕様を除く)。インストルメント・パネルはデフロスターやベンチレーターの吹き出し口を一体成型し(オプションのエアコンはビルトインタイプのため足もとなどに張り出さないのも魅力)、ラジオの操作がメーター脇のロータリー式オートラジオを装備した。視線移動少なくラジオの選局ができるようになっている。

 特徴的なメーターは、運転中に頻繁に確認したい速度計は大型化して、タコメーターを視点移動の少ない同軸上に配置。速度計は黒字の文字盤にオレンジの指針、タコメーターは灰色の文字盤にグリーンの指針として、半ドアやトランク閉め忘れ警告灯などの各種インジケーターも集中して表示させる。ホンダはこれを世界でも類を見ない新開発の「集中ターゲットメーター」としたが、すぐにデジタルメーターの時代が来てしまい(現在よりも簡素な表示のタイプ)、短命に終わってしまった。

 しかしながらこうした先進性を見るためにベルノ店を訪れて、バラードなどを購入するユーザーも多く、フラッグシップとしてユーザーの来店のきっかけづくりには大きく貢献したといわれている。これはのちのインテグラなども同じだろう。話題のプレリュードを見に来て、実際には実用的な4ドアのバラードを、プレリュードを見に来てインテグラを買う。フラッグシップとしての役割は、十分に果たしていたといえる。

 インストルメントパネルに戻ると、いち早く蛍光表示管式デジタルクォーツ時計を装備。時刻表示輝度はライトスイッチと連動して明るさが変わる上に、エンジンオフでも時刻表示ボタンを押せば時刻が確認できるようになっていて、先進性をアピールした。

 シートはソフトレッド、ソフトブラック、ソフトアイボリーの三色が用意されたほか、シート表皮はファブリック3つ、ソフトウィーブ、トウィルウィーブ、トリコットを用意。上級仕様には外国製の評価が高い本革シートも設定されていた。ほか、メーターの明るさが調整でき、室内から開けられるトランクオープナー、照明付きグローブボックスが備わるなど、当時としては便利な機能を満載。フラッグシップにふさわしい装備を誇っていた。

FF黎明期の高性能モデルとして最新技術を投入

 サスペンションは当時このクラスではまだ少ないFF方式ながら、四輪ストラット式サスペンションを採用していた。弾性の高いゴムブッシュの採用で、衝撃をソフトに吸収。スタビライザーも前後ともに備わる。車速応動型のラック&ピニオン式ステアリング(XE、E仕様のみ)は、ステアリングへのキックバックが抑えられる構造だった。

 エンジンは定評あるEK型、昭和53年排ガス適合のCVCCエンジンを搭載。自動戻しオートチョークとオイルクーラー付きで、1750ccの直4は最高出力90ps/5300rpm、最大トルク13.5kg-m/5300rpmを発揮(5速MT)する。車両重量が1トンを大幅に下まわるボディを機敏に走らせるには、十分な性能を誇った。

 1980年1月には、国産初電動式サンルーフをブラウンのスモークドガラス式(手動サンシェード式付き)とした。さらに、同年4月にはアコードと同時に新開発されたCVCC-IIエンジン(型式は同じEK型)を搭載。排気量は変わらないまま、95ps/14.3kg-mへと進化した。

 高性能タイヤの採用も特筆で、XR仕様にはブリヂストン製ポテンザRE47、175/70HR13をオプション設定(フットレストも標準化)する。余談ながらアコードは165SR13のミシュランXZXを装着した。ブリヂストンとミシュランの違いはあるが、プレリュードは一段とスポーティ志向に移行した。

 こうしてホンダ念願の多チャンネル販売店実施、フラッグシップとなるクーペ、ホンダらしい先進性あるスポーツモデルであるという、願いを叶えたプレリュードが始まった。そしてそれは、二代目プレリュードで確立されるのである。

付録:当時の東京地区標準現金価格116.0~140.0万円

■ホンダ・プレリュードXE
全長×全幅×全高:4090×1635×1290mm
ホイールベース:2320mm
トレッド(前/後):1400mm/1410mm
車両重量:915kg
乗車定員:4名
最小回転半径:4.6m
室内寸法:長×幅×高=1690×1350×1035mm
エンジン:CVCC直4SOHC
総排気量:1750cc
最高出力:90ps/5300rpm(5速MT車:ホンダマルチマチックは85ps)
最大トルク:13.5kg-m/3000rpm
タイヤサイズ:155SR13(前/後)
ブレーキ:前/後 ディスク/LTドラム
サスペンション:ストラット式(前/後)

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