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ランエボXのベースだった「ギャランフォルティス」! 車名が「ギャランエボ」にならなかった「複雑な事情」とは

ギャランフォルティスの謎

「ランエボ」こと「ランサーエボリューション」のベース車両といえば、コンパクトセダンのランサーが定番だ。しかしじつは、ランエボのなかでも“ひと世代”だけは、ベースがランサーではなかったことにお気づきだろうか。“ランサーのエボ”ではないのに「ランサーエボリューション」を名乗っていたのである。その世代とは、ランエボにとって最後の世代となる「ランサーエボリューションX」。そのベースはランサーではなく「ギャランフォルティス」だった。

 ただ、ちょっと歯切れが悪いのは、このクルマが純粋な「ギャラン」の後継モデルかと言えばそうでもないからだ。日本向けの“本流ギャラン”は、8代目だった2005年で販売を終了(北米向けなどは日本には登場しなかった9代目モデルが存在する)。その後2007年に登場したのがギャランフォルティスだが、名前こそは「ギャラン」と付くものの実際にはランサーの新型という認識が正しい。

 やや大型化したランサーであり、日本向け販売を終了した純血ギャランのユーザーが新車へ買い替える際の受け皿としても成立するように、ギャランという名前を付けたと理解するのが正解だ。また、日本以外では引き続き「ランサー」という名前で販売されたことからも、実質的には7代目のランサーである。長い前置きとなったが、今回はそんなギャランフォルティスを振り返ってみよう。

ハッチバックがイカしていたギャランフォルティス

 このモデルをランサーの後継車として考えた場合、ひさしぶりの登場となったのが5ドアハッチバックだ。デビューは2008年12月だから、1988年6月から1991年10月まで販売されていた3代目以来、約17年ぶりの5ドアハッチバックとなる。全長はセダンより15mm長く、スポーティなスタイルと実用性の両立が図られたモデル、ギャランフォルティススポーツバックだった。

 もうひとつ、このギャランフォルティスを語る上で欠かせないのがスポーツグレードの「ラリーアート」の存在だ。ラリーアートと言えば三菱のモータースポーツを支える組織であり、またメーカー直系チューニングパーツのブランドである。そんなブランドが手掛けたグレードが存在したのだ。昨今でいえば、スバルが「レヴォーグ」などのカタログモデルとして用意している「STI Sport」のような感覚といえる。

セダン派にもってこいのボリュームだったラリーアート仕様も

 走りのエボXがあるのに、ラリーアートまで用意するとはどういうことか? ラリーアートはややおとなしめのスポーツモデルなのだ。たとえばエンジンはどちらも同じ排気量2.0Lで4気筒ターボの4B11だが、最高出力280~313psのエボに対し、ラリーアートは240psと控えめ。ドライブトレインは4WDだが、S-AWCは非搭載とするなどランエボほど凝ってはいない。

 ただ、トランスミッションは当時まだ珍しかったデュアルクラッチ(MT設定はなし)でエボXの2ペダルモデルと同様。とはいえ、こちらもギヤ比は巡行重視で制御もエボXほどまで尖らせないなど、差別化が図られている。

 走りのラリーアートまで用意したギャランフォルティスとはどんなクルマだったか? 今にして思えば、時代に翻弄されたセダンそのものである。ランエボのベースとなることを前提として設計されたボディだけに剛性は高く、素性の良さが感じられた。車体サイズもCセグメントの直球で、大きすぎることなく後席居住性も良好。そのバランスは、日本で使うにも最適だった。

 しかし、当時はすでにセダン離れのムードが漂っていて、セダンにスポットライトが当たる機会が激減。渾身の出来栄えだったが、その実力が正当に評価されなかったことが悔やまれる。

 ちなみに、台湾ではこのモデルをベースに独自の進化を果たした「ランサー」が今なお販売されている。フロントデザインはまさかのダイナミックシールドだ。

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