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軽量化のため「ラゲッジの床」すらなかった!「インプレッサWRX STI スペックC」は「地上を走るゼロ戦」だった

4ドアセダンの皮を被ったラリーウエポン

  新型WRX S4が発表となり、発売が開始されれば初代インプレッサWRXから数えて5代目のWRXが登場することとなる。このWRXシリーズ、走りに関しては今なお一級品のスポーツモデルだが、現代ではCVTやアイサイトなどの充実装備で、誰もが扱いやすいスポーツセダンとして圧倒的なスペックを手中に収められるというのが人気のポイントのひとつだ。 しかし、初代、2代目まではガチの競技モデルがつねに設定されるなど、かなりマニア向けのストイックなモデルであった。とくに初代GC系ではエアコンやパワーウインドウなどを排し、徹底した軽量化とクロスレシオの専用トランスミッションなどで武装した「タイプRA」が設定されていた。

 ラリーフィールドなどでは人気を博していたグレードだが、ライバルの三菱ランサーエボリューションとのスペック戦争が激化した2代目では自主規制という制約に阻まれ、最大トルクこそ登場の度に向上させてきたものの、最高出力はアゲどまり状態となっていた。そこで、衝突安全性のために重くなったボディを徹底的にシェイプアップして誕生したのが、2代目インプレッサWRX STiタイプRA スペックCだ。

外せるものは徹底的に撤去したストイックぶり

 これまでのタイプRAでもかなりの軽量化を実施してきたが、2代目インプレッサの前期モデル(いわゆる丸目)で登場したスペックCは軽くするためにできることはすべてやったといえるほどの軽量化を実施。17インチ仕様と16インチ仕様が設定されたが、ヘッドライトは廉価グレードの2灯式ハロゲンタイプを装備。

 フォグランプ部はカバーすら装備されず、リヤスポイラーも装備されない。ファニーなライトにむき出しのフォグランプ開口部、それでいて17インチ仕様車はブレンボを装備という謎の走り屋さんのような見た目。ちなみに16インチ仕様車はホイールもスチールで、こちらは営業車のような佇まいであった。

 見えない部分では軽量バンパービームにサブフレームやアンダーコートまでレス化。軽量ガラスを全面に採用し、ステアリングサポートビームやエアインテーク導風板のアルミ化、小型ウォッシャータンク、燃料タンク小型化、トランクリッドやルーフトリムの薄板化といった、ストイックに軽量化された専用装備も数多く採用されていた。

エアコンレスは当たり前! アシストグリップの取付用のボルト穴すらオミット

 インテリアではエアコン、パワーウインドウレスは当たり前、エアバッグレスに始まり、助手席サンバイザー、トランクオープナー、トランクボード、アシストグリップなどをレス化。

 アシストグリップについては、なんと取付用のボルト穴まで排除したことで、後付けすらできないという硬派な仕様になっていた。

 こうした並々ならぬ努力により、車重は17インチ仕様で1310kgとベースのWRX STiと比べて-80kg、16インチ仕様ではなんと1290kgと140kgもの軽量化を果たした。これにより戦闘力は大幅に向上し、ライバルを寄せ付けない速さを見せつけた。 とはいえ、完全に競技用と割り切った仕様のため、オープナーすらないトランクにはボードがなく、そのまま荷物が乗らない。

 友人を乗せようにもエアコンがないという日常的に使うにはあまりにも不便すぎる仕様だが、その速さが欲しいために普段使いをするツワモノユーザーもいた。

まとめ:ここまでストイックな仕様は二度と出てこない

 さすがに現代では競技向けとはいえ、ナンバー取得可能な公道走行可能車として、安全性をないがしろにしてまでの軽量化は難しく、ここまでストイックなモデルは今後登場することはないだろう。しかし、VAB型WRX STIに設定されたタイプRA-Rのように、その軽量化技術はいまでも活かされているのだ。

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