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「キョンキョン」のCM、覚えてますか? 意外としっかり者だった2.5BOX軽「オートザム・レビュー」

人の気持ちに馴染む愛らしく表情豊かなクルマに仕上げられていた

 直接関係者から聞いた話だったのか、あるいは目にしたどこかの媒体の記事で読んだのか、記憶が定かではない。だが、オートザム・レビューの登場時にCMに起用されたキョンキョン(小泉今日子さん)について、ご本人があまりにも“小顔”だったために、コンパクトが売りであるはずのレビューが実際にはちっともコンパクトに見えなかった……そんなエピソードが実際にあったらしい。発売は1990年9月28日。

 手元にはこのクルマのプレスキット一式があるので、発表会または報道試乗会のどちらかに参加したはずだが、意外なことに記憶があまりない。が、おそらく発表前後に取材はしたからだろう、「丘を越えて」というタイトルのキョンキョンが唄う曲がCMでも使われていた記憶は蘇ってきた。もしかするとプレスキットと共にこの曲のシングルCDをいただいたのでは? と探すも(確かあったはずだ)、小沢健二の「カローラIIにのって」はあったのだが、こちらは見当たらず。仕方なく某動画サイトで確かめてみると、♪ズンチャ、ズンチャと何とも長閑なテンポと歌詞の楽曲だった。

個性を打ち出しとした販売チャンネルだった

 オートザムは当時のマツダが5チャンネルを展開していた販売網のひとつで、軽自動車のスクラム、キャロルのほか、イタリアのランチア(テーマやデルタ・インテグラーレも!)も取り扱っていた、個性を打ち出しとした販売チャンネルだった。そこに加えられたオートザム(マツダ)のオリジナルモデルが、このレビューだった。

 当時のニュースリリースには……「レビュー」の発売によってオートザムの商品ラインアップは大幅に強化されることになる。オートザムでは、「レビュー」を月間3000台販売する計画でいる。……と、文末の“計画でいる”の部分がなかなかユニークな言い回しだが、ともかく期待された戦略車種だったことは確かだ。

 ちなみに欧州市場では、マツダ121の名で展開された。当初、現地の関係者からは、実用的な5ドアハッチバックではなかったために難色を示されたものの、いざ導入してみると、シンプルさが「現代の2CVのようだ」と好評を得たという。 

 見てのとおり、丸っこく特徴のあるスタイルだったが、コンセプトは“ハイコンパクト2.5ボックス”だった。ほかに1.5ボックスや1.3ボックスを謳うクルマもあったが、レビューは独立したトランクを持ちつつもコンパクトで、3ボックスセダンと2ボックスの中間のクルマ、そういう意味合いがあったのだろう。

 ボディは3サイズのうち全高の高さ(1470mm、キャンバストップで1495mm)が傑出していたほか、3800mmのコンパクトな全長と2390mmのロングホイールベース、前後のショートオーバーハングも特徴。キョンキョンのファンの方なら当時の彼女の身長をご存知のはずだが、確かにコンパクトカーながら当時としては背の高いクルマだったから、彼女が横に立った場合、クルマがあまり小さく見えない可能性はあった。

フロントシートにはキングサイズシートを採用

 一見するとスタイル重視にも思えたが、その実、合理的なパッケージングで十分な室内スペースとトランク容量(SAEで280L)が確保されていた。フロントシートは、広報資料によれば“キングサイズシート”を採用。後席左右にはELR3点式シートベルトを装備していた。

 トランクリッドは、B3のアウディ80などでも採用していたダブルリンクヒンジ式を採用。トランク内にステーを張り出させることなくリッドの開閉を可能にした、凝った構造を取り入れていた。

 凝ったといえば、世界初を謳った3way電動スライド式キャンバストップの採用も、このクルマの自慢のひとつだった。カタログのそのページを撮っておくことにするが、オープン時のソフトトップの畳まれ方を、後ろ寄せ/前寄せ/中間の任意寄せと自由に使えるところが、このキャンバストップ式サンルーフの売りだった。

 そういえばこのレビューの先輩にあたるマツダ製のコンパクトカー、フォード・フェスティバ(1986年)にも、ルーフが大きく開くキャンバストップが用意され、セールスポイントのひとつになっていたから、そうした繋がりはあったのだろう。

 そのほか本革シートが標準のK1キュイルなども設定。コンパクトカーながら、スタイルや上質感にこだわるユーザーをも満足させる仕様も用意されていた。

 搭載エンジンは、1.3Lまたは1.5L。すべてのグレードに5速MTまたは4速ATが設定されていた。エンジンは新開発でいずれも16バルブを採用。カタログにはそエンジンのカットモデルのイラストも載っているが、動力性能を誇示するスポーティモデルではなかったものの(モモのステアリングを装着した特別仕様車のK1-βなどあったが)、1.5LのATには、アクセルを踏み込むスピードと量でパワーモードとノーマルモードを自動選択するという“オートパワー”と呼ぶ機能が組み込まれていた。

 なおレビューよりひと足先、1989年に登場した軽自動車のオートザム・キャロルとは、丸みを帯びたルーフラインなどデザインテーマに共通性があるようにも見えたが、とくにそのことが意識された訳ではなかったようだ。丸いカタチは人を優しくするものだが、レビューもただの合理的なだけのコンパクトカーではなく、人の気持ちに馴染む愛らしく表情豊かなクルマに仕上げられていた。

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