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「鉄馬」に乗ればわかるさ!「ハーレーダビッドソン」が輸入バイクのトップを独走し続けているワケ

国産大排気量バイクで依然として日本市場の雄「ハーレーダビッドソン」

 外国製バイクで一番売れているハーレーダビッドソン。二輪業界紙である二輪車新聞の調べによると、国産車を含めた2020年度401cc以上の販売台数では空冷スポーツスターシリーズが2281台で第2位、ソフテイルシリーズが1724台で第3位。今年上半期の売上では空冷スポーツスターシリーズが934台で第4位、ソフテイルシリーズが903台で第5位となっています。

 これにはコロナ禍などによる品不足が大きく影響。それでも相変わらず輸入車ではトップの人気を維持しています。最近ではハーレーダビッドソンも次世代型の新設計マシン導入を勧めています。

 ですが、まだまだ世間の多くの認識としては、ハーレー=オールドテイストのアメリカンクルーザーではないでしょうか。では、何故ハーレーが売れているのか、その魅力はどこにあるのか私なりに考えてみました。

とにかくエンジンが気持ちいい

 ハーレーダビッドソンの魅力の一番は、やはりなんと言ってもそのエンジンの鼓動感ではないでしょうか。

 そもそも何故ハーレーのエンジンは気持ちいいと思えるのでしょうか。それは主流となる空冷OHVのV型2気筒という基本構造にあるからなんです。まずこの「2気筒」から見ていきましょう。

 一般的に同じ排気量なら気筒数が少ない方が、シリンダーひとつのあたりの爆発力は上。しかも883cc〜1923ccの大排気量。4気筒と比べると一発一発のパンチ力に勝る図太い爆発を見せてくれるのです。

 次に「V型」というエンジン構造。一般的な並列4気筒だと1〜2〜3〜4番シリンダーの各点火間隔は180度。爆発は一定のリズムで起こっています。一方、ふたつのシリンダーを前後45度の角度で配置したハーレーのエンジンでは、前〜後シリンダー間の点火間隔が315度、後〜前が405度という不等間隔。これがあの“ドッドコドッドコ”という独特のアイドリングリズムを生み出す元となっているのです。

 ただ、この不等間隔爆発、エンジン回転が低いとリズムを感じやすいのですが、回転数が上がっていくと次第に人間の感覚では捉えにくくなってしまうんですね。そこで「OHV=オーバーヘッドバルブ」という燃焼室内に混合気を出し入れするバルブの開閉方法が、うまいこと合致してくるのです。

 よく聞くOHC(SOHC)=オーバーヘッドカムシャフトやDOHC=ダブルオーバーヘッドカムシャフトはOHVより新しい技術で、それはもっとエンジンを高回転で回すために生まれたもの。ハーレーではそんなにエンジンを回しませんのでOHVで十分です。スポーツスター1200を例に挙げると、レッドゾーンは6000rpmから。クルージングで一番気持ちよく感じるのは2000〜3000rpmあたりの低回転。1万rpm以上回る高性能エンジンとは、まったく別世界のキャラクターなんです。

 最近のバイクでは並列2気筒や4気筒でも、位相クランクという技術を使って不等間隔爆発を意図的に作り出すのが流行っていますが、ハーレーのエンジンは基本設計に古さはあるものの、こと鼓動感を楽しむために低回転に徹するには極めてシンプルで合理性にかなったものと言えるでしょう。基本的に冷却方式が「空冷」であることも含めて、ユーザーとしてはそんなエンジンの素の部分で勝負しているところが背景となって惹かれていくのかもしれません。スピードを出すよりも、のんびり優雅なクルージングを楽しむには、ハーレーのエンジンは一番だと思います。

スタイリングや質感、足着きの良さが魅力

 次にハーレーダビッドソンが選ばれる大きな理由としては「低重心と足の着きやすさ」でしょうか。

 ロードスポーツモデルより圧倒的に両足が地面に着きやすいクルーザーモデルは、ハーレー以外でもホンダのレブルシリーズなどが大人気です。ハーレーのクルーザーモデルは車重がロードスポーツよりもどっしりと重くて押し引きは大変ですが、ロー&ロングな車体構成により重心位置も低く、足の着きやすさに加えて跨った状態でのバランスは、軽くてもつま先立ちのロードスポーツより取りやすくなっています。ハーレーの立ちごけの不安の少なさは、初心者や女性には大きな味方となるはずです。

 それにハーレーはひと目でわかるそのスタイリングも魅力。いかにもバイクらしいクラシカルな雰囲気に加え、ほとんどのモデルではサイドカバーや前後フェンダーも樹脂製ではなくスチール製となっており、その質感たるやこれぞ「鉄の馬」。

 塗装もビビッドなものからシックなものまで豊富にラインアップされており、選ぶのに困るほどです。さらにハーレーと言えばカスタムというくらい改造パーツが豊富。自分好みに仕上げていけるのも大きな楽しみとなっています。

 ハーレーの世界はバイクだけに終わりません。ファッションやライフスタイルも含めてアメリカの文化をトータルコーディネイトで楽しめるというのも、好きな人にはたまらない魅力となっています。

やっぱり決め手はエンジン

 じつは私自身、2007年型スポーツスターXL1200Rに13年間乗っています。それまでずっと国産の400〜900cc直4スポーツバイクでカッ飛び気味な走りをしていた私としては、そろそろまったく違ったバイクも試してみたくなっていたのです。

 どうせクルーザーに乗るなら本場アメリカンの「ハーレーダビッドソン」にでも、というブランド力も魅力はありました。しかし、最後の決め手となったのは、やっぱり試乗して大好きになったそのエンジンフィーリングだったのです。

 たしかに私の愛車は乗り続けていくと、サスペンションやハンドリング性能などに不満を感じないわけではありません。その点はいかに国産車が優れているかということを痛感しました。それでも乗り続けているのは、やっぱりエンジンの鼓動が気持ちいいから。

 900cc直4では、エンジンのおいしい高回転域まで回せ回せとマシンの方から急かしてくる感じでした。でもそこでマシンからの誘惑に負けてしまうと、スピード的に公道ではよろしくない。乗っていてエンジンのおいしいところを味わえないことに対し、次第に不満を感じていたんでしょうね。

 それがスポーツスターだと最初から回さないことが前提のエンジンですから、そうした不満は皆無。法定速度内で満足できるので免許の心配をする必要もなく、むしろ鼓動感をもっと楽しむために意図的に回転数を落とす=さらにスピードも落ちるような走り方に変わっていったのです。

 あれから13年、当時よりも「走り方」に対する世間の目は大変厳しくなりました。もしも貴方が飛ばさないと楽しくない、追い抜かないと楽しくないと感じていたとしたら、ハーレーに乗ってみると世界が変わって見えるかもしれませんよ。

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